バトル・スーツ フル装備。 | クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

TYPE Rの称号を与えられなかったもう一つの悲運の車


オヤジが齢50にもなってリターンを行った理由はたった一つ!!

そればバトルスーツを着たいからであった。


 カドヤのバトル・スーツ。それはオヤジにとっては特別な存在であった。

オヤジが20代頭、一人の漢(おとこ)が、ドイツのアウトバーンでSUZUKIのGSX750改を駆って、公道300km/hを実現した。

 当時、日本車はようやく200km/hオーバーが精一杯という性能のときであった。


その漢(おとこ)の恰好は、革ジャンと革のパンツに全身プロテクターだらけの、厳ついカッコであった。


 そして、その後、コミック・キリンのが連載された。それが、オヤジとバトルスーツとの出会いであった。


 人が若い頃に知った物は特別なものとなる。

 オヤジにとってはそのバトルスーツは、バイクを乗る為の必須なアイテムとなった。しかも、バトルスーツを着て乗るバイクは大型バイク以外考えられなかった。


  オヤジにとってバトルスーツを着て400ccのバイクに乗ることは、どうしてもできなかったのだ。

(もし、これが出来たら、すぐに400cc新車のバイクと、オーダーメイドのバトルスーツ、を着て、今頃、また違ったキリンに憧れての話になっていたとは思うが・・・・)


 という事で、2年前に発動したオヤジのキリン化計画は、大型自動2輪免許の取得、大型バイク=漢(おとこ)のバイク=漢カワサキ。という、まったくアホな方式によって、当時最速であったZX-14Rの購入、バトルスーツの取得。という事で始まったわけであった。

 たった一つの誤算を除いて・・・・・・・

それは、ZX-14Rをオヤジが乗ることが出来なかった事であった。


夢破れた男は、あがきにあがいた。

自分が乗れるバイク。そして、バトルスーツが着れるバイク。色々と苦悩して(ほんとかよ??)ようやくたどり着いたのがこのレディ9であった。


18日、PM2:30


 肌寒い日中、ようやく俗世界の用事を終えた漢(おとこ)はレディ9の前に立った。

これからたった2時間であるが、誰にも邪魔されない漢(おとこ)とレディ9だけの時間である。


 今日の装備はおなじみのバトルスーツ。しかも、バトルグローブと、今まで外していたプロテクター付である。
真・キリンに憧れて!!                   最狂伝説!!

真・キリンに憧れて!!                   最狂伝説!!

真・キリンに憧れて!!                   最狂伝説!!


「ふーつ。」

肌寒い気温であるが、やはりシンプソンのヘルメットをかぶるとシールドが曇る。

少し緊張しているのかもしれない。

両足のプロテクターを付け、両腕のプロテクターを付けながら、オヤジは20代初頭、初めてこのバトルスーツを知った時を思い出していた。


 これはオヤジなりのバイクに乗る儀式であった。

必ず生きて戻ってくる。オヤジがバトルスーツを着るのはそういう意味合いがあった。


 今日はやけにこのバトルスーツが軽い。


ふと、そう思った。



  前回、バトルスーツを着た後、左肩にしこりが出来ていて、よーく考えると、このジャケットを着たためのコブであった。また、

 あまりの重さに、乗った後は食事以外何もできないでソファーで寝込んでいた。

そんな話を友人にしたら、そんな重いジャケットなんかもう着ないほうがいいぞ。とも忠告された。


しかし、オヤジがオヤジでいるための物。そしてバイクに乗る唯一の意味。

それがバトルスーツを着ることであった。

(しかし、いい歳こいたオヤジが・・・単なるコスプレ野郎と変わらないとは思うが・・・・)


そして、OYAZIは走り始めた。


まずはお世話になっているS車輌さんへ、届け物をするために行く。


「今日はフル装備だねぇーー。」


従業員が今までのオヤジのカッコとは違う姿に気が付いた。


「ええ。本気の時はいつもこのカッコですから。」 (まあ、言葉のアヤね。だれもオヤジが本気で飛ばすなんて思ってもいないし・・・・・・)



 そして、OYAZIの走りが始まった。

行先は隣町に行ってからなじみのガソリン・スタンドに行き帰ってくる。

たったこれだけでも、今のオヤジの体力はウルトラマンのカラータイマーが鳴るがごとく、限界がきてしまうのだ。

 しかし、すこしでも走り慣れないと、今年、こちらにツーリング予定の主(あるじ)さんと一緒に走れないので申し訳が立たない。


いつもよりもペースを落とし、60km/hぐらいで走り続ける。アッ。というまに隣町まで来て、すぐ引き返す。その間30分弱。そして、高速に乗ってから最終目標地点のガソリンスタンドへ向かう。


 高速合流地点。頼みの右側のミラーは振動がひどく全然後ろが見えない。アクセルを緩め後続車がいないことを確認して、一気に加速。

 スピードメーターが一気に上飛び跳ねる。たちまちOYAZIの空間が狭くなっていく。

120km/h近くに達しても前回のようなひどいブレは無い。これは高速道路の路面の状態のせいであろうか??

 メーターを確認して、目を前に向けるとすぐ前に前走車が・・・

フル・ブレーキング!!

そして、前走車をあおらないように、離れながら交通の流れに乗る。


そして目的地のガソリンスタンドに近づくOYAZI.


 ウインンカーを付けて・・・・・・と思っていたら、OYAZI意思とは関係なく、右腕が勝手にアクセルを開けた。

レディ9はそのまま加速して、ガソリンスタンドを通り過ぎる。


「そうか。そうか。まだ走りたいのか。わかったよ。こうなったら、今日は体の続く限りおまえと付き合うよ。」


 その瞬間、レディ9の走りが変わった。今まで淡々とした走りであったが急に元気の良い走りと変わったのである。



 直角ターン。アクセル・オフ。バイクを倒しこむ。

ターンクリァ。

バイクが起き上がる。アクセル・オン!!

回転計が4000回転になる。


ウォーーン!!


音が一気に変わり、暴力的な加速がOYAZIを襲う。


「こいつの立ち上がり。おもしれーーっ。」 (まあ、4000回転ですから、本当のパワーを実感するのは、まだまだ先の話になりますなーー。)


それからは、減速。倒しこみ。立ち上がり。アクセル・オン。の連続であった。

こいつと走ると、単なる一般道が、スポーツ・ライドと化するのだ。


 OYAZIは車で運転するときは、2000回転で淡々と走るのが好きだ。そのほうが燃費も良いし、第一疲れないのだ。しかし、こいつは違っていた。直線が見えたらすぐに回転を4~5千回転まで回すと、心地より音と振動がOYAZIを襲う。


長いストレートからいきなり右周りの直角ターンが現われる。


対向車無し。


2速までシフト・ダウン。ブレーキング・イン。

軽く右側に倒しこむ。少し、センター側に寄りすぎている。


昔、同じシーンでハイスピードでFXで走っていた時、センターラインを踏んだ途端、左に飛んだことがあった。

その時はタイヤのグリップが戻り、そのまま走り続けたので大事に至らなかったが、今日は大丈夫か??

 オレンジ色のラインを踏み始めた。


 ミシェランのブットいタイヤは何事もなく走り続けた。

「ホッ!!良かった!!やはり良いタイヤだけあるねぇーー。」


 気が付いたら1時間ほど近間の裏街道を走り回っているOYAZIであった。

ようやく最終目的地のガソリン・スタンドに向かうOYAZIであった。


 なじみの店長が出てくる。

「あれっ?オヤジさんでないですか??前の14Rはどうしたんですか??」

驚く店長。

「ああ。あれ?デカすぎたから取り換えた。」


ふと、気が付くと

オヤジの同級生が近くで車を洗車していた。

そして、オヤジに気が付き、

「あれっ?オヤジ。オヤジはバイクに乗っているんだ。」


彼は一目見て、革の上下。全身プロテクターだらけのオヤジの異常な恰好に気が付いた。

(フフフフ。驚け!!驚け!!このバトルスーツのカッコ良さを・・・・・


しかし、彼はオヤジのカッコに気にも止めず、再び自分の車を磨き始めた。


・・・・・・・所詮、君はあちらがわの人間なんだ。

彼の興味は自分の車がどれだけきれいになることだけであった


スタンドの店長のほうが、オヤジのバイクが気になり、あちこちを見まわしていた。


「それじゃーまた。」


オヤジはスタンドの店長に挨拶をして、レディ9のセルボタンを押した。




キュルキュルキュル!!


バゴーーン!!ドッカーーン!!


ドカドカドカ!

軽く数回アクセルをあおる。

バイク乗りのカッコ良さは発進にある。発進を戸惑うと、途端にカッコ悪くなる。


そして、二人が見ている中、オヤジはゆっくりと走りはじめ、そして公道に入ると、二人が見ているのを意識しておもむろにアクセルを開ける。


バゴーーーーン!!


 レディ9は爆音をまき散らせながら消えた。



 夜、かみさんに同級生と出会ったこと。彼がオヤジのカッコを見ても何も感じなく、すぐに自分の車の洗車をし続けたことを話した。

「今のオヤジの年代なら、楽しみは車の洗車なんだろうねぇーー。」とオヤジがため息をつくと、すかさずかみさんは。



「それはあんたのカッコを見て、年寄のくせにバイクなんか乗って痛い人だと思ったんでない??だから、知り合いだと思われたくなくて、他人のふりをしたんでないの?」と、言い放った。


エエーーーツ!!オヤジって痛い人だったんですかーーーーーー?

_| ̄|○ ガックシ!!




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