番外編  初代レディのその後・・・・・・・・ | クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

TYPE Rの称号を与えられなかったもう一つの悲運の車

「オヤジ!!久しぶり!!」

「あれっ?E君でない?久しぶり!!」

 

 今日、会社で久しぶりにE君と出会った。彼とは初代レディZX-14Rを引き渡した以来の再開である。4月の後半からであるので、実に2か月ぶりである。


 彼の話によると、今日初めて初代レディZX-14Rに乗って、ツーリングに行ってきたということであった。


「で、どうだい?重たくて乗りずらくはなかったかい?」オヤジは心配でE君に聞いてみた。

「全然!!むしろ高速の領域は前のバイクよりは運転しやすいね。」と、言いっつE君は片手を広げてみせた。

「?」

「5秒さ。アクセルを振り絞って五っ数えれば、200km/hオーバーだよ。」

「そうか、5秒か。」

「ああっ。すごい性能のバイクだな。」

「ハイパワーの200馬力にしてるの?」

「ああっ。しかし、残念なことが一つある。」

「何?」

「直線でアクセルをおもいっきり開けたんだが、フロントが浮かないんだよね。」

「やっぱり、DVDや雑誌に書いてあることは、ウソが多いんだね。」と、E君は残念そうに言った。

「トラコン(トラクション・コントロール)のレベルはいくらにしてるの?」

「レベル1だよ。」

「じゃ、トラコンを解除して0にしてみたら?それで、本当のレディの正体がわかるよ。」

「14Rのトラコンのレベル3は砂利道でも、空転しないように発進できるぐらいの機能だから、レベル1でも多分、ウイリー防止機能は入っていると思うよ。」

「そうか、今度解除してみるよ。楽しみだな。」と、E君の目は輝いた。


「そうそう。そういうオヤジのほうはどうなんだ?俺のXJR1200は乗ったかい?」とE君はオヤジに聞いてきた。

「ごめん。せっかく譲っもらったんだけど、実はあのXJR1200は売ったんだ。」

「そうか、やっぱり降りたのか?残念だよ。」とE君は少し残念そうに答えた。

その言葉を聞いたオヤジはニカッ!!として、

「そして、あのバイクとレディを売ったお金で、ビューエルを買ったんだよ。」

「ハーレーダビットソンのエンジンに250ccの車体。これが実に面白いんだ。」

「そうか、ようやくオヤジも自分に合うバイクを手に入れたんだな。」

「ああ。」


そして、E君は別れ間際にオヤジにこういった。


「オヤジ。ありがとうな。俺に14Rを売ってくれて。俺は一生あんなすごいバイクに乗ることはできないと思っていた。これからもずっと大切にするよ。」

「ああ。事故に気を付けて楽しんでくれ。」


 良かったな。レディ。お前の事を愛してくれる乗り手と出会えて。


別れゆくE君の後姿を見ながら、オヤジはそっとつぶやいた。


その時、クォーーーーン。という初代レディZX-14Rの甲高い排気音がオヤジには聞こえたような気がした。










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