First Blood!! =どちらが先にしかけたか= | クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

TYPE Rの称号を与えられなかったもう一つの悲運の車



 6/2 AM:10:45 

 それは、いつもと同じ事であった。いつもと同じように左斜めに走る車がオヤジの運転している車を確認しないで、オヤジの前に急に割り込んできただけの事であった。
 いつものオヤジは「チッ!!」と軽く舌うちをして割り込んできた車を入れるだけであったのだが、今日のオヤジは違ったいた。

 先ほどからかみさんと軽く口論になったオヤジは、黙りこくっていた。いつものオヤジは温和な性格であるが、怒って切れたときのオヤジは違うと知っている子ども達は、周りの空気を読んで寝たふりを決めていた。

 気まずい雰囲気が車内をつつむ。

そんな時に、それは起こったのだ。


パパパパパパ!! 

 怒りのクラクションを浴びせるOYAZI.

クラクションを浴びせられた車は左に逃げ車を加速させた。

怒りでアドレナリンが体中吹き出し、背中が痛い!!

 バックミラーで子供たちのシートベルトを確認したのち、車を加速させ逃げた車の後を追っていった。

割り込んできた車は軽自動車。OYAZIの乗る車もミラ・イースの為、運動性能は大差なかった。

まわりにKサツ関係者の有無を確認して、スピードを上げていく。

  赤信号になり左車線に停まった軽自動車の右側に車を停めたOYAZIはそのドライバーを見つめた。

年齢はOYAZIと同じぐらい。典型的な自己中心的なドライバーである。

相手側のドライバーもOYAZIの存在を確認して何か喚いてきた。

その時、信号が青になりOYAZIは猛然とミラ・イースを加速させた。

 街中のバトルは前走車の先読みが必要だ。それが時として格上の排気量の車が相手だとしても、先読みさえできれば相手にはならない。

 この道を2年前まで毎日走り、交通弱者のキリン(バイク乗り)となったOYAZIにとってはそれは今は苦にならない。

 前走車の予想を行いすり抜けながら前に行くミラ・イース。
勝負を挑んできた車ははるか後ろとなっていた。

「まったく、愚かな行為だ!!」

OYAZIは自分の行なった行為に腹を立てていた。

「俺は前に割り込まれたから腹を立てた訳でなかった。」
「かみさんとの口論になった自分の怒りを車にぶつけていただけだ。」


 荒い運転をする車は、普通に走る車よりもはるかに寿命を縮める。
OYAZIは自分の行為がミラ・イースを痛める事に気が付いた。

と、怒りが収まりいつものOYAZIになった途端、左車線の後ろから先ほどの車が猛然とスピードを上げて、OYAZIの車を追い越し、両車線共に前走車が無いのに、またOYAZIの車に前にかぶさってきた。

 「マズイ!!」 

とっさに左に逃げて加速する。

 この手の輩のドライバーはたちが悪い。平気で急ブレーキを踏んで事故を起こさせる奴らもいる。
過去、峠の下りで意識的に急ブレーキを4輪に踏まれ、転倒して病院送りにされたライダーを知っている。


しばらくスピードを上げて走ると、街の中に入って車の流れは緩やかになった。

 落ち着きを取り戻し、ゆっくりと走るOYAZIの右側を先ほどの軽のオヤジが
 「ザマーミロ!!」 と罵声を浴びせて去って行った。


 まったく「大人げない行為だ!!」と自虐的に呟やいたOYAZIであった。
唯一の救いは家族が全員が寝ていて、OYAZIの愚かな行為を見られなったのが救いであった。

「もう着いたの?」
眠りからさめたかみさんに、 「ああ。もうすぐで着くぞ!!」

と、答えたオヤジはいつもの優しいオヤジに戻っていた。










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