実走!!   はじまりの時!! | クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

TYPE Rの称号を与えられなかったもう一つの悲運の車






 
 2012年、9月。一人のオヤジ・ライダーがこの世界から去って行った。

2013年、5月。そして、再び、この世界に舞い戻っきた。XB9Sという新しい最狂の相棒を引き連れて

5月9日。当日は残雪が残る肌寒い朝であった。

ハァハァ!!白い息をかじかんだ手に吹きかけ、オヤジは愛機、XB9Sをガレージから出す。

 昨日までの雪で、ガレージ周りの土は泥だらけとなり、車重175kgの軽い車体のタイヤを容赦なく土に埋め込ませていく。

「ハッ!!」オヤジは気合を入れ、XB9Sを思いっきりバックさせた。

「ふーーっ。」数分後、ようやくXB9Sは乾いたアスファルトの上に乗り上げた。

$真・キリンに憧れて!!                   最狂伝説!!

これから、新しい愛機、XB9Sのガソリンを入れ、お世話になっている、S車輌に保険の切り替えを行にいくのである。

キュルキュルキュル!!

バゴーーッ!!

 ダンダダダダダーン!!ダンダダダダーン!!


XB9Sは腐っても、ハーレーのエンジン。
HD特有の有機的なエンジン音を当たりに響かせていた。
あまりの振動で、アイドリング時にバイクが・・・・・う・動かなかった。
ちっ!!思ったより振動は少ないのか??いかにネットに書いてあることが大げさな事か。(というか、一番大げさに書いている、オヤジに言われたくないものだ。)


ほぼ、8か月ぶりのシンプソンのヘッド・ギァーを取り出す。
今日の装備は、14Rを封印した時に着ていて、旭川の裏・ミッション編でホテルに置き忘れ、冷たい雨の中をさまよった、呪われた赤い南海のライダージャケットと、クラブ、20代の頃に履いていたブーツ。といういでたちである。


 十分に暖気されたXB9Sは早くも走り出したくて、うずうずしているような感じだ。
「ふーーっ。」
相変わらず、ヘッドギャーのシールトは周りの寒さに曇る。
(14Rの初乗りの時は、このせいで危険な目にあったな。)とOYAZIはシールドを全開にして曇りを逃がす。

 XB9Sにさっそく跨いでみた。しっかりと左足はチェンジペダルにとどき、不安感は全然ない。
 サイドスタンドを左足で上げて・・・・・・
チッ!!バックステップが邪魔になって、サイドスタンドが上げることが出来ない。

OYAZIは再び、XB9Sから降りて、サイドスタンドを掻き揚げからバイクに跨った。

カチャッ!!ギァーを1速に入れる。慣れてないせいか、シフトが入りずらい。

バタバタバタバタバタ!!XB9Sは周りに騒音をまきちらせて走り出した。

 今時のバイクは静かだ。本当にアクセル一ひねりで加速する。特に、超弩級、ZX-14Rの時はそれが顕著に表れた。

 走り始めたXB9Sの振動はすごい。

バタバタバタバタバタ。多分、知らない人が聞いたら壊れたバイクだと思うだろう。
しかもHD特有のビックツインのせいで、低速が非常に扱いずらい。
急にエンジンが止まるか、急にどこかに飛び出すかのような危やゆい感がある。

「いやなら、乗るのをやめたっていいんだぜ!!」と、まるで、バイクが語ってくるようだ。
(いいか、OYAZI!!このバイクは乗り手に挑戦するバイクなんだ!!はんぱな乗り方をしたら振り落とされるぞ!)昨日読んだバリ伝の島崎チューナーのセリフが蘇る。

 ギァーポジションランプさえない。
いま、何速かさえ分からない状態だ。
 郊外に出てOYAZIはアクセルを吹かした。
大排気量特有のトルク感がOYAZIを襲う!!目がついいて行かない。
「確かにハンパな乗り方なら、振り落とされるな。」

いきなりのハイスピードから90度レフト・ターンが待ち構えていた。 フルブレーキングと共に荷重を左側にかける。
 XB9Sは他のどのマシンよりもキャスター角が浅い。そのため、倒しやすく、峠では格上のバイクをさすことが出来るSSイーター(スーパー・スポーツ喰い)と呼ばれるコーナリング・マシンだ。(というか、今、オヤジが名付けただけなんだけど。)

 「さあ。おまえの実力を見せて見ろ!!」と、言い、OYAZIは左にバイクを傾けかけた。
「ゲゲッ!ねない!!」
XB9SはOYAZIの予想に反して、ねないバイクであった。
「うぉりゃーーーっ!!」掛け声とともに、更にブレーキングを行い、超弩級低速走法で90度ターンをクリァーしていった。
 心臓がバクバクなっている。
ゼイゼイゼイ!!ああっ!!びびった。
教訓その一。慣れないバイクで、むやみに飛ばさない事。


 十分後、OYAZIは無事にガソリン・スタンドにたどり着いた。
なじみのスタンド・マンがびっくりした様子で、オヤジを出迎える。
「あれっ?オヤジさんでないですか?あの14Rはどうしたんですか?」
「ああっ。あれ?デカすぎたから、これに乗り換えた。」


バイクから降りたオヤジはまだ肌寒い5月の空を仰ぎ見た。

そして、ふと思った。

19の時もそして50になった今でも俺は再びこの世界に戻ってこれた。
 昔の仲間には成功して、でかい会社の重役になった奴もいる。この世界から去って行った奴もいる。

家はつぶしたし。(実家だけどね。)家族は去っていった。(いゃ!!まだいるしーーー。)

でも、俺が一番幸せだッ!!



$真・キリンに憧れて!!                   最狂伝説!!

$真・キリンに憧れて!!                   最狂伝説!!