プライド・ワン!! | クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

TYPE Rの称号を与えられなかったもう一つの悲運の車

  昨日の朝、オヤジのもとに近所に住む友人Kから電話がかかってきた。


「もしもし?おやじ?」

「kか? いったいどうした?」

「今日の晩は何時に帰ってくる?」

「ふつう通りの9時ごろだぞ。」

「そうか。悪いけど帰ってきたら、お前の家に行ってもいいか?」

「何か用か?」

「ビューエル。来たんだろ。見に行ってもかまわないか?」

「ああ。わかった。」


 というわけで、小雪の降り積もる、火の気のないガレージの中にて。


 ビューエルに跨った友人Kの最初の一言。


「おおっ。これがうわさのビューエルか?」

「確かにコンパクトだな。これなら俺にも乗れそうだ。」

「ところで、このビューエルについて調べたら、かなり過激な事をかいていたな。」

「ああ。こいつは、エクストリームのベースとなったバイクで、元祖ストリート・ファイター系のバイクさ。」

「エクストリーム?」

「まあ、簡単に話すとバイク・スタントに使われる車体さ。前輪を急ブレーキをかけて、後輪を高々と上げて止まるような、荒業をするバイクさ。」


「ところでおまえ、いままでバイクなんか興味なんか無かっただろう?いったいどうしたんだ?」

と、オヤジ友人Kに問い詰めると、友人Kは思いつめたような顔をしてオヤジにこう切り出した。


「実は、中型を取ろうかと迷っている。」

「いきなりどうしたんだ?」


 友人Kオヤジと会うごとに、「オヤジお前は良いなあ。好きな事が出来て。俺の人生はもう何も楽しみなんかないよ。家のローンや生活費を稼ぐのが精いっぱいで。」と、常に人生を絶望しきったセリフを吐いて別れるのが口癖であった。


 そんな彼が今、自動二輪の免許を取りたいと、真剣に悩んでいるのであった。

 今の彼の生活では、バイクを買うどころか免許を取りに行くのでさえ、ままならない状態なのは、オヤジも、もちろん彼自身が一番知っていることであった。


 彼は中学校時代、彼のオートバイ。彼女の島の映画でカワサキのW3を見て以来、W3のとりこになった一人であった。

 しかし、大人の事情でいままでバイクの免許はおろか、原付さえ乗ってはいなかった話は、昨年の裏・ミッション完結編の釧路編で書いたとおりである。


「バイクの免許ねぇ。正直、北海道でバイクに乗れるのなんて、正味3か月、いいとこ数回しかないぞ。」と、オヤジはいきなり彼の夢を壊す現実的な維持費などの話をした。

「しかし、俺は乗りたいんだ。」

彼の意志が変わらないのがわかったオヤジは。

「そうか、それなら、免許が取れたら欲しいバイクが買えるまで、オヤジのDTを乗るか??」

「いや。遠慮しておく。乗るなら400cc以上。できればすぐに大型を取りに行って、W3に乗りたい。」の顔は興奮して高揚していた。

その言葉を聞いたオヤジ


「400ccを甘く見るな。K。いや、バイクを甘く見るな!!」


「いいか。K。バイクはたとえ原付であろうとなんだろうと、何かあったら手足の一本どころか、命さえ持ってかれる乗り物なんだ。そんな、甘い考えでバイクなんか乗るんじゃない!!」オヤジの声はあくまでも冷たく、冷静にに話しかけていた。


 しばらく二人に気まずい沈黙が流れた。


「オヤジ。おれも気が付けばもう50を過ぎている。体力的にバイクに乗れるのは、もう残り少ないんだ。」の顔は悲しく歪みきっていた。

「俺も、もう何もないままの人生は嫌なんだよ。オヤジ。あんたのように誇りを取り戻したいんだ。」


そういったKにオヤジはハッ。と思った。


(そうか。こいつもちっぽけだけど、たった一つの自分の誇りを取り戻すために、戦っているのか。たった一つの自分の誇り・プライド・ワンの為に。)


 バイクは無機質で何も語らない。しかし、その存在は人によっては、無二の親友となり、自分の誇りを取り戻すための相棒となる。

 そう。かって、オヤジがプライド・ワンをかけて初代レディ,ZX-14Rを求めたように・・・・・


 悪かったK。オヤジは心の中でKに詫びた。


「まだ、今時期は寒いな。そろそろ帰るよ。オヤジ。」

「ああ。またな。」


 帰り際友人Kは振り返り、オヤジに向かって明るい笑顔を見せて、


「なあ。オヤジ。いつの日かまだ分からないけれど、俺はきっとバイクの免許を取って、自分の相棒を手に入れてみせる。」


「そうか。」


「その時は、オヤジ、あんたも一緒に俺と走ってくれるかい?」


「ああ。もちろん、ぶっちぎりさ。」


と、オヤジはニカッ!!と笑い、軽く親指を上に立てた。



2013年。4月30日。また小雪舞う北海道のガレージにて。




 さて、明後日、明々後日はオヤジは連休です。そのため、いつも好き勝手やらしてもらっているお礼として、キャンカーで家族をどこかに連れて行く予定です。その為、明日の晩からいなくなります。


 その間、皆さんへのペタやコメント返しも出来なくなるのでよろしくお願いいたします。m(_ _ )m ペコリ!!

 また、新しい旅のネタを仕入れてきます。


 しかし、今まで何日も雨や雪が降り続いているのですが、はたして本当に行けるのでしょうか???










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