レディ(ZX-14R)を手放す少し前。
我がクラブ・ミッド・ナイト、ファーストナンバーSさんと、夜間電話での事。
「そうか。やっぱり手放すんだ。」
まあね。所詮、俺はあのモンスターを乗る資格はなかったのさ。」
「ど、これからどうする?」
「そうだなー・俺は総長引退!!2代目総長はSさん?どうだ?」
「冗談をいっちゃ困る。俺は確かにミッドナイトの広告塔をやるのは引き受けたけど、オヤジ、あんたのブログで純粋な前途ある若者を2人も、このクラブに引き込んだだぜ。最後まで責任とれよな。」
「ふふふふ。やはり、あんたにはそういわれると思ったよ。」
「で、今後のマシーンは?」
「原付だ!!」
「原付??というと、やはり原付2種のDTか?」
「うーーん。原付と言っても、排気量1,000ccの原付かな?」
「排気量1,000ccの原付?」その途端、Sさんの目がキラリと光ったような気がした。
「ああ。原付は原付でも排気量は1,000ccもある原付さ。」
「なんだそれ?意味わからないよ。」
「このマグナーという50ccの原付はホイルベース長(フロントタイヤとリアタイヤの距離)が132.0cmある。」
「うーーん。妥当な長さだな。」
「で、今度の、バイクもホイルベース長がその原付バイクと同じ長さなんだ。しかも、排気量は1,000ccだ。」
「なんだか、バランス悪くないか?」
「ああ。そうだなあ。こいつは開発会議の際、社長が、会議が行き詰まった時にいきなりヤマハのレース用バイク「TZ250」の寸法図を出してきて「これにリッタークラスのエンジンを載っけたらすごいぞ!」と、冗談みたいに開発された。といういわくつきのマシーンだ。」
「なあ、オヤジ。公道のハイスピードで走るマシーンの鉄則は、いかにバランスが取れているかなんだ。オヤジだって、最新式の14Rに乗って、バランスの大切さは解るだろうが。」
「まあね。確かにこいつはバイク界の正常進化からかけ離れ、わずか2年しか制作されなかった、異端児だ。」
「しかし、正しく進化されたのと、それを自分が選ぶ。というのは違う事だろう?」
「だからこそSさん。あんたも、GTRの中であえて悪評高いあの33Rを選んだんだろう?自分の命を乗せれるマシーンとして・・・・」
「ああ。そうだったな。確かにオヤジ。あんたの言うとおりだ。」
「自分の命を乗せるマシーンだからこそ、正しく進化されたものとは、自分が選ぶとは違う事だな。」Sさんは苦笑した。
「で、マシーンの心当たりはあるのか?」
「実はな。昨年の12月ごろから心当たりのあるマシーンが1台あるんだ。」
「もし、そいつが本当に俺と縁があれば、再び出会えるはずだよ。」
「そうか。資金の調達は問題ないのか?」
「ああ。レディが売れたお金で家の補修工事を終わらしても少し余る。そのお金を使うよ。」
「そうか。資金の問題もクリァなんだ。後は本当にあんたにそのマシーンが縁があるかだな。」
「そうだな。Sさん。あんたは信じるかな?バイクでも車でも一目見たときに、こいつは自分の手元に来る。という予感がすることを。」
「ああ。俺は信じるよ。」
「そうか。これからだな。ゼロナンバーとそのマシーンの新たな伝説は・・・」
「まさしく、正常進化から外れた異端児のマシーンと、クラブ・ミッド・ナイトのゼロ・ナンバー。その組み合わせは最狂伝説だな。」
「そうだな。まあ、これからどうなるかわからないが、俺のあいつの物語はこれから始まるのさ。」
真・キリンに憧れて!! 最狂伝説!!の始まりだ!!