14日(木)の夕方。
「ごめん!!オヤジ!!やっぱりその日は一緒にいけないわ。」
「そうか、残念だが仕方がないな。俺も、その日にあるのを知ったのが、今日なんだ。」
「すまんな。また、何かの機会があったら、誘ってくれ。」
「ああ。わかった。」
「ところで、一体その日に、旭川で何があるんだ?」
「えっ?お前、何があるか知らないで、休みをとろうとしたの?」
「ああ。まあ、そんなところだ。」と、友人Iは恥ずかしそうに答えた。
「その日に旭川で新型のバイクの展示会があるんだ。」
「そうか、残念だけど、また今度な。」
「ああ。」
事の始まりは、オヤジが通勤途中でラジオを聞いていると、旭川で2月の16日の土曜日、17日日曜日の2日間、新型のバイクの展示会があるのを聞き、早速、15日、16日が休みであるオヤジは友人Iに一緒に旭川に展示会を見に行かないかと誘ったのだが、残念ながら急きょの誘いの為、Iは休みが取れなかったのだ。
しかし、何があるのか知らないで一緒に行くIも、ミーハーな奴よのうーーー。
仕方がない、Iが一緒に行けないなら決行は明日か?
その夜、「16日の休みに朝から旭川に行ってくるわ。」とかみさんに告げた途端、日帰りの旭川は大変だよ。15日に行って1泊して帰ってくれば。という優しい言葉を頂いた。
旭川まで片道200km。夏なら日帰りは楽勝であるが、冬道でしかもアイスバーンでの日帰りは誰もが嫌がる道である。
「うーーん。そうだな。明日、行くか?」とオヤジは心の中で思った。
オヤジが生まれてこのかた51年。心に決めている事が一つあった。車の運転は夏は日帰り800キロなんて走るが、冬場はどんなに遠くても、せいせい片道40キロほどの北見までしか行かない事を決めている。
理由はたった一つ!!
何かあって車が路肩に落ちても、汽車かバスで自分の家まで帰れるからだ。
それほどまでに、長距離の運転慣れしているオヤジでさえ、冬場の運転は怖いのだ。
しかし、その厳しい掟を破ってまでも、旭川バイク・フェスタは見に行きたい欲求があった。
翌、15日金曜日、家の用事を終わらせ、簡単な下着の替えだけを詰めた小さなバック一つを車に放り込み、昼すぎにオヤジは旭川に向けて、愛人1号と呼ばれるキャンカーを走らせた。
今回の冬道は絶対に事故は起こせない。軽のミライースは燃費は良いがここ一番のアイスバーンではスリップに不安が残る。
やはり、旅慣れたキャンカーが一番安心できる足である。
そういえば、今年初めての旅になるな。と考えると、オヤジは久しぶりに気分が高揚してくるのを覚えた。
早速、なじみのガソリンスタンドで燃料を満タンにする。27L、3,600円ほどのお金が早くも飛ぶ。
旭川への距離は片道、約200キロ。時間にして約3時間30分弱であるが、今は真冬の真っ盛り。アイスバーンの道のりの為、何時ごろつくかも検討が付かない。
「まあ、いいさ。今日中につけばいいからこれから気楽な一人旅さ。」
普通、旭川へ行くには、遠軽方面から高速道路を使い北見峠から朝川に抜けるのが、楽だし早いのだが、今回は久しぶりに石北峠を抜けて、旭川に向かう事にする。
PM 3:00頃 おんね湯にて
さいしょの目的地、おんね湯の山の水族館へ入る。
ここには、日本初の滝壺の水槽。世界初の冬に凍る川の水槽。日本最大、1m級のイトウ(サケ科)の魚がいる場所である。
夏場、行ったときは、まあまあ。しかし、リーピートしてまで行くような場所ではなかったが、今回は世界初の冬に凍る川の水槽を見るために、寄ったのであった。
まあ、しかし、オヤジって度々かいてあるが、どうも●●一って、うたい文句に非常に弱い人間である。
おかげで、日帰りで800キロも走る羽目になるのだが・・・・
まあ、世界初の風景を見られたのでよしとしよう。
そして、冬は何十年かぶりの石北峠に車を向ける。
道は思ったよりも雪は無く、路肩は完全な舗装状態であった。
「しめしめ。これなら楽勝で旭川だ。」
と、安心したのは束の間であった。
峠の入ると路面は一転して、アイスバーンと化していた。
オヤジはスリップをしないように、ゆっくりと40km/hのスピードで車を走らす。
時折、長距離、大型トラックが信じられないようなスピードで、オヤジの車を追い抜いて行く。
一歩間違えば、スリップを引き起こし大惨事になるのに、やはり走り慣れている人の感覚はすごいものである。
PM 4:30頃。石北峠、層雲峡にて。
ここでは、層雲峡の温泉がある場所で、冬場、人工的にホースで水を流し凍られて、氷の滝みたいな場所を作っている「氷瀑祭り」なるものがある。
今まで、一度来ようと思っていたのだが、なかなか来れなかったので、車を停めて見に行くことにした。
38年も行っている伝統的な祭りである。
歩いてものの5分・・・・・・・
あまりの寒さに、行くのを止めて帰ってきたヘタレなオヤジであった。
(ふん!!北海道人でも寒いのは。寒いんだよ。しかもパンツにズボン。シャツにジャンバーの軽装だから、体中寒さで痛いよーーー!!)
せっかくなので、入口から見えるところで、写真だけ撮って帰ってくることにした。
体が心から冷え、何か温かい飲み物が欲しくなったオヤジは近くのコンビニに寄ることにする。
下り坂・・ブレーキを入れて、コンビニに行こうとハンドルを切ろうとすると・・・
愛人1号はズズズ・・・・と音を立てて滑り出した。
幸いなことに、対向車、後続車がいなかったので、斜めに滑り落ちただけで、無事に愛人1号はコンビニにたどりついた。
中に入ると、温泉ホテルに泊りにきた客でごった返しで、欲しい飲み物や食べ物が無く、肩を落としてひき帰るオヤジであった。
ここからの道中はすべて、アイスバーンであり、よそ者のオヤジはひたすら時速40km/hで走り続けていった。
途中、上川に入り高速道路なら雪も融けて走りやすいかも?と思い、オヤジは上川から高速に乗ったのだが、高速道路もまたアイスバーンの為、非常に滑りやす道路となっていた。
しかも、速度制限は50km/h。
今までよりも速い速度を出さないといけなくなった。
冬の夕方はすぐに暗くなる。辺りは次第に暗くなり、道路の状況も次第に見えずらくなっていった。後続車が次々とくる。
これ以上、頑張って走り続けると危険な状態だ。と判断をして、オヤジは次の分岐から高速道路を下りることにした。
この頃から完全に周りは暗闇と化して、愛人1号のライトも頼りない明りをともしていた。
ひたすら滑る道を淡々と走り続ける。今までの旅で一番疲れる運転であった。
旭川に着いた時は、オヤジの疲労は最大となり空腹も覚えてきた。
夕食は一人の為、旭川ではよく行く、1皿100円の回転スシ屋に向かった。家族で食べる食事は美味しい。みんなでワイワイ言いながら食べるのが、格段の調味料となるのだが、一人ぼっちの食事は味気ない。
心なしか、うどんの汁やみそ汁もぬるく不味い気がした。
ここでの食事代は11皿で1,155円也。
あとは、ホテルに宿泊するだけなのだが、愛人1号はキャンカーである。
大きさは小型トラック、高さも普通の車の倍は優にある。
その為、一般的な街の中の狭い駐車場のビジネスホテルは入れないので、オヤジは昨年、裏・ミッション編で泊まったシティ・ホテル(俗にラ●・ホね。)に泊まる事にする。
まあ、いつでも入れるので、この際、旭川の夜の街を見に行くことにする。
旭川の街は広い。見に行きたい店に向かうと片道30分はすぐにかかる。そんなこんなで、目的地のホテル街にたどり着いたのは、PM 10:00頃になっていた。
早速、前回入ったホテルに入る。
部屋を選んで・・・・・
「ノゥオーーーーーッ!!一泊8,000円だと!!」
オヤジは週末にはシティ・ホテルは宿泊料金が高くなる事を知らなかったのだ。
「よ・予算、5,000円代が・・・・・・シクシクシク」
と泣く泣くあきらめ、違うホテルを探す。
「ここ、5,400円で泊まれますか?」と、各安の料金を探したオヤジは、フロントに聞くと、
「11時からの宿泊になります。今からなら延長が1,400円かかります。」と答えられた。
「・・・・・・・わかりました。11時すぎに来ます。」
と、オヤジは肩を落としてトボトボと、もときた道を引き返した。
11時まで残り時間約1時間。オヤジは近くの本屋で時間を潰していた。
外は次第に吹雪が激しくなり、泊まる場所の決まっていないオヤジの心を目入りさせた。
PM 11:00過ぎ。ようやく目当てのホテルに泊まり、暖かいお風呂に入り一息ついたころは夜の2時を過ぎていた。
「ああっ。疲れたな。やっぱりかみさんの言うとおり、今日来てよかった。明日、日帰りで旭川に来るのは地獄だった。」
と、意識を失いながらオヤジは深い眠りに落ちるのであった。
旭川バイク・フェスタ 2に続く。