●月▲日、オヤジは上司から密命を受けた。
「オヤジ君。実は12月5日なんだが、我が社の支店があるK市から、ある商品を運んでもらいたい。」
「それは特送(スペシャル)ですか?」
「ああ。特送だ。」
その瞬間、オヤジはトランスポーターの主人公、フランク・マーティンのようにするどい顔つきになった。
実はオヤジは普段は人畜無害、単なる昼行灯の男であるが、陰では会社のヤバイ商品を運ぶトランスポーター・・・・・では、当然あるわけがない。
ここからK市まで、約150km。今は誰もが嫌がる雪道。しかし、オヤジは三度のメシよりも車の運転が好き。しかも、会社の車と時間を使って、長距離ドライブができる。
ということで、何も考えないオヤジは、誰も名乗り出ないトランスポーター役を名乗り出たのである。
前日の4日、ここ北海道は12月にも関わらずに、珍しく雨。というか嵐になっていた。
次の日は、当然、道路はアイスバーンと化する予定である。
トランスポーター、当日の5日朝。
玄関前は、前日の嵐のせいで電話線が外れて家の前に垂れ下がっていた。
ふ・不吉な・・・・予感のオヤジ。ただでさえデカいキャンカーを、器用に電話線をよけながら出社するOYAZIであった。
昨日は雨であった。今日は必ず1台ぐらいは・・・・と予想していると、案の定。1台の車が横転している。
気のせいか、昔はこんな事故のシーンはあまり見なかったのだが、最近、ブログ用のカメラを身に着けていると、必ず現れるシーンである。
と、いうか、昔の車は限界が低かったので、滑ったら、そのまま雪道にぶっかったのだが、今の車は限界スピードが異常に高いので、いくときは一気にいくような気がする。
ますます。不吉な!!
今日はK市まで商品をもらいに行くのに、朝からなんて不吉な!!
((((;゚Д゚)))))))ガクブル
朝からビクビクのOYAZIである。
今回のOYAZIの愛車はフランク・マーティンのように、BMWやアウディではない。
午前、9時15分。
十分に暖気をしたOYAZIはゆっくりと、1.5トンの巨体を走らせる。
そして、90度ターン(直角カーブ)に近づくと、やや、オーバースピード気味に車を曲げていく。
当然、大きな車体のケツは振りはじめるが、4WDの足回りとOYAZIのカウンターにより、最小限の振りで収まり、トラックは何ともないように走り出す。
「うん。これなら、何とかK市まで走れるな。」と、OYAZIは一人うなずき、どんどんと1.5トンの鉄の塊を加速させていく。
こいつはトラックのくせにトルコンだ。(オートマチック) しかも、オヤジの愛人1号と呼ばれるキャンカーよりも新しいタイプである。
「ふん。トラックまで、トルコン装備だなんて、世も末だね。車はやはりマニュアルだよ。」と、自分の車がトルコンにもかかわらず、勝手に走り屋風を気取るOYAZIである。
現在、気温プラス1℃。昨日の嵐にも関わらずに、道路の雪は解けだしている。
長距離ドライブにはもってこい。の路面状態である。
AM:10:30
ある意味、この時期の長距離は飛ばしやすい。
まず最初に冬場はネズミ取りがいない。
そして、昨日の嵐で事故を起こした車の処理に、警察は大忙しの為に、パトカーでの取り締まりは皆無である。
OYAZIは高速道路並みのスピードでトラックを走らせ、一路、K市にある支店に向かうのであった。
AM:11:16
K市の近隣にある、シラルトロ湖。
AM:11:55 145.5km
無事にOYAZIはK市の支店に到着。
PM:01:55
K市の支店から荷物を受け取り、すぐにトンボ帰りで帰路に着く。
K市の支店からの帰り道。OYAZIは飛ばしに飛ばしまくった。何故か?
ここ、北海道の冬場は午後3時までが勝負である。
3時以降、日が落ちてくると急速に路面は冷え、アイスバーンと化するのである。
昼間はあれほど明るく輝いていた太陽であるが、今は静かに沈もうとしている
。西日が時より、OYAZIの目を刺激する。
PM:14:10
登り坂の急な右コーナーにたどり着く。やや、オーバースピード気味に突っ込むOYAZI。
そのコーナーは思ったよりもタイトである。
「くそっ!!前もここで、ブレーキを入れたっけな。」全然、学習能力の無いOYAZIである。
思いっきりブレーキを入れ、ハンドルをさらに深く右に切る。コーナーはやや、ブラインドかかっている。
と、その時!西日がOYAZIの目を直撃した。
「くそっ!!まぶしい!!」
その瞬間!!OYAZIは長年、長距離を走ったものだけが解る、ヤバイ感覚にとらわれた。
「まずい!!」
とっさに対向車のいないことを確認したOYAZIは、さらにトラックのハンドルを深く切り、反対車線に逃げる。
トラックは急なハンドル操作で、後ろを小刻みに震わせながら、反対車線にレーンチェンジを行う。
横を向くとOYAZIの走っていた車線で、作業車が滑り止めを撒いていたのである。
「バカヤロウ!!ブラインドで店を広げるんじゃねぇ!!」と、OYAZIは思いっきし、作業車を罵倒して走り去った。
普段は温和なオヤジではあるが、どうもハンドルを握ると、人が変わるようである。
PM:3:00
弟子屈に到着。
太陽はだんだん勢いを無くしていく。
PM:3:15
完全に日は落ちている。これから最後の難所。弟子屈と小清水の間の野上峠に入る。
「いよいよヤバイ領域に入るぜ!!」OYAZIは完全にバリ伝のグンになりきったつもりで、トラックを走らせていた。
アクセルは親指のつま先だけの感覚で調整していく。
「まだまだいける。」路面はまだ濡れていて、アイスバーンにはなってはいない。
小清水に到着。ここでかなり薄暗くなったので、車のライトを点灯させる。
後は最後のストレートを抜ければ、無事店に返れる。
V・MAX発動!!
そして、OYAZIは光となった・・・・・・・
あれっ?レイズナーのネタ落ちだ。
PM:16:21
無事、店に到着!!
全走行距離:293.1km
会社の車でドライブとは・・・・なんてオヤジは悪い奴!!