これから出発となった時にIは「オヤジ!悪い。行く前に会社に忘れ物をしたからにちょっと寄っていっていいかな?」と話しかけてきた。
「おお。いいぜ!どうせおまえの会社は行く所の途中にあるからな。」とオヤジは心よく返事をした。10数分後にIの会社に到着し、会社に入ったIを待つオヤジ。
5分ぐらいIを待つ。(やけに遅いけど、あいつ緊張して会社でう●こでもしにいったのか?)とオヤジは余裕をかましていると・・・
「ごめん。待たせたな。」とIが出てきた。
「・・・・・・・・・」出てきたIを見て言葉が出ないオヤジ。
Iはなんと会社に革のツナギを置いていて、会社で着替えたのであった。(このシーン。まるでキリンに出てくる奥さんに隠れてバイクを乗る社長の話そっくりである。)しかもそのツナギは、平レプリカそのものであった。(く・くそ!!あいつのほうがかなりイケてるぜ。このままではオヤジが霞んでしまう・・・・)と心で歯ぎしりをし、(いや。ま・まだだ。ヤマハのツナギにスズキのバイクとは・・・)と心を落ち着かせオヤジは目的地に向かった。
Iは過激な服装に反して公道では模範的な走りであった。と・思っていたら、目的地のふもとに到着するや否や、バイクを小刻みに動かし蛇行し始めたのだ。
Iの意味不明な行動に「?????」とあっけにとられるオヤジ。
1時間ほどそれぞれ、早朝の人気のいない峠を思い思いに攻め楽しんだオヤジはIと合流したときに、先ほどの意味不明な行動について聞いてみた。
「ああ。あれか?だって、タイヤを温めておかないと、いきなり峠を攻めたらやばいだろ!」と答えるI。 (くーーーっ。かっこいいぜ!!この野郎!オヤジはお前の一生の友達だぜ!)
その後、Iと一緒に走ったのは結局2回走ったのみで終わった。
その年、オヤジはキリンに憧れ、大型自動2輪の免許を取りに行き、半年で自分の才能の無さに気が付き免許取得を挫折した。そして風の噂でIが大型自動2輪の免許を取りに行ったことを聞いた。
夏も終わりかけたある日、久しぶりにIから連絡がきた。
「久しぶりだな。オヤジ。これから遊びに行っていいか?」
「ああIか?本当に久しぶりだな。来いよ。どうせ今日は暇だしな。」
十分後、オヤジの家にやってきたIを見ると、Iはあの派手な平レプリカのツナギを着て、ヤマハRZV500Rに跨っていた。
「 ! RZV500Rって・・・おまえ大型を取ったんだ!!」と驚くオヤジは自分がタコだという事を初めて知ったのだ!!
そして月日が流れ・・・・・・
ある日、Iからの携帯がオヤジにかかってきた。 「オヤジ!明日、アタックするよ。こいつ(RZV500R)でスピードという名の神の領域に近づくよ!!」とIはそう告げた。
「ああ。おまえならやれるよ。何も手助け出来ないけど、気をつけろよI」とオヤジはIの決意に神妙に答える。そして、それがIとの最後の連絡となった。
20年以上経った今でもオヤジが瞼を閉じると、由一無二の親友Iのあの鮮烈な走りがオヤジの目に蘇る・・・・・・・・・・・・・・
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「おーーーーい!オヤジ!!勝手な創作なんかするな!!大体、俺はRZV500Rは乗ったけど、最高速なんかしてないし。ていうか、勝手に俺を殺すな!!」と横でIが喚き散らす。
ゴメン!I。お前はオヤジにとって友達なんかじゃないよ。お前はオヤジにとって憧れの存在さ。