よく、バイクや車のマンガや映画で常人離れした運転をする主人公ががいる。
オヤジの友人のIもそんな奴の一人だった。Iとの出会いはオヤジが20代で400FXを乗っていた時であった。
オヤジの店の前に一台の新型のGSX-R 400が止まっていた。丸目2灯の当時のレプリカモデル、今でいうSSタイプのバイクであった。
ぼんやりとそのバイクを見ていたオヤジに一人の男が声をかけてきた。そいつがIであった。
「あれっ?君はもしかしてI君?クラスは違っていたけど同じ高校の?あのGSXってひょっとして君の?」と尋ねるオヤジにI「うん。オレのバイク。2年前に免許を取ったんだ。」と答えるIにオヤジはシメタ!と思った。
オヤジは4年前に免許を取ってたので、彼より免許歴が長い。→トーゼン運転もうまい・・・・はず。
「実はさあ、オレも4年前からFXに乗ってんだけど、オレって結構速いんだ。今度一度暇なときに一緒に走ろうよ。」と、あくまでもバイク仲間の社交辞令としてIに話しかけた。
そして・・・オヤジは、Iとの約束を忘れかけた頃だった。
「なあ。オヤジ。今度の休みはいつ?」とある日突然、Iがやってきた。
「うーーん。今週の●日が休みだけど・・・・」
「わかった。その日に一緒に●●峠に一緒に競走しにいこうぜ。」
「おう。わかった。約束だ!!」
その日、早朝5時、オヤジの家にIがやってきた。彼の服装はスイングトップにGパン、そしてスニーカーだった。しかもヘルメットはヤマハの平レプリカ(平忠彦: ヤマハの500ccGPチャンプ、汚れた英雄の北野晶夫のスタントをやった人)であった。
(オイオイ。スズキのバイクにヤマハのヘルメットはないでしょ。ヤマハは。)とオヤジは心の中で思った。(見栄講座:バイク乗りはメーカーの違うバイクと服装はタブーである。)
そして、オヤジのカッコは、このときとばかりに買った中古の黒い革のツナギと黒いヘルメット、ブーツにグローブと全身黒づくめで、FXも黒だったのでまさしくカワサキフアッションであった。(ふっふっふっ。これで勝ったな!!)と心の中でオヤジは思った。