この頃の僕の憧れのバイクは、ZZ-R1100からZZ-R1400に替わっていった。
よくあるでしょ。嫌いだと思っていた女の子がいつの間にか好きになっていた事が。
(おまえにとってバイクは女かっ!!)
ZZ-R1400のあの、ナウシカの王蟲のような6眼で奇妙なボディも見慣れて来ると、だんだん世界最速に相応しい漢(おとこ)のバイクに僕の目には映った。
練習も大詰めを向かえ、最後にバイクシュミレーターを行うことになった。
大型のTVゲームのような画面を見てバイクを操作して、実走行での事故例を分析、解説していくアレである。
当然、僕はこのシュミレーターはありえないところから人や車が飛び出すので、想定しながら走ると、予想どおりに事故を起こす要素がいっぱい出てきて1件だけタクシーにぶつかったのだが無事に走り終えた。
最後に教官が見本を見せたときに、先行車が右折のウインカーを出した後に、すぐに左折のウインカーにし直して左折を行いバイクの巻き込み事故の例を話してくれた。
「僕ならあの場合は発車しません。あの先行車はウインカーを左折し直していたから、きっと、左折すると思ってました。」
「よく気が付いたね。君なら路上はあんまり無茶な走りをしないだろう。」
と満足げに教官は答え、いきなり自分のバイクライフの話をしだした。
そして「君はハヤブサってバイクを知っている?」と僕に尋ねた。
「ハヤブサはスズキのバイクで、時速100キロに達するのに2秒ぐらいで加速する世界最速のバイクです。」と答える僕。
「あんなのはバイクは初心者には殆ど反則だよな。」と話しかけた教官は僕に尋ねた。
「僕もそう思います。」と僕。
「で、君はどんなバイクに乗りたい?」と尋ねる教官。
「じ・実は・・・・・僕はFXの時からカワサキ党なので、ハヤブサの宿敵のZZ-R1400なんです。」と僕はバツが悪そうに答えた。そして、あわててフォローを行い「別に1400に乗って300キロを出したいとかではなく、僕にとって、大型自動2輪は憧れで見栄の象徴なんです。だから、バイクに乗るよりも見栄のはれるバイクを持っていることが重要なんです。」
そして、「多分、体力的に1400を乗り回すのはこれが最後なので、もし、5年ぐらい乗ってもまだバイクを止められなかったら、ハーレーやビューエルなんか乗りたいと思っています。」と答える僕に教官は苦笑していた。
いやーーーあ。あの時は本当にバツが悪い思いをしたなーーー。