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今日は東武鉄道で走る車両をピックアップしてみます。
なお、以下に示す車両は現行形式のみで、すでに引退した車両及び他社乗り入れ車両は記載しない事を頭に入れておいて下さい。
※2024年4月16日更新
特急型
【100系:スペーシア】
昭和時代に活躍した「DRC」に代わるフラッグシップ特急として登場した。当形式は東武で初めてアルミ車体とVVVF制御を導入するなど新機軸が多く用いられた。しかも全M車なので高速走行時にも乗り心地が悪くならない。先頭デザインは流線型でスピード感を感じさせ、側面も3種のデザインを3編成ずつ採用するなどして飽きさせないように工夫されている。内装は豪華さを求めたもので、東武ホテルのデザインを手掛けた人によって仕上げられた。
現在はJRにも乗り入れて、登場から30年が経過した現在でも第一線の特急列車として活躍している。2011年にリニューアルが施されており、人気も非常に高いのでしばらくは現役で走るはず。ただ、後継車となるN100系が登場し、2022年から104編成を皮切りに廃車が始まった。
【200系】
昭和時代に活躍した「DRC」を車体載せ替えの上でリニューアルしたのがこの形式。「りょうもう」運用は当初1800系を継続使用する予定だったそうだが、将来の特急格上げを考慮して当形式の製造に変更された(その後2006年に急行⇒特急に格上げされた)。デザインはスペーシアとは異なり赤を基調としたシャープなものとなり、アルミ車体ではなく普通鋼製となっている。元々の機器が高速性能を持ったものなので乗り心地は悪くないようだ。
ただ、いかんせん下回りが古く、201編成を皮切りに廃車が始まっている。以下、細かい内容を記述する。
(200型)
本数:6両編成6本⇒合計36両
「DRC」を改造したのがこの番台。書類上でも「DRC」の更新とされている。ただし制御装置は新品で、205系でも見られる界磁添加励磁制御が用いられた。ちなみに、下回りが最も古いのは205編成(旧1701F)で、1956年竣工から何と60年以上も経過している。
(250型)
1998年に登場。車体・内装は200型と変わらないが、下回りは完全なる新造で30000系に準拠したものとなった。VVVF制御となった事もありMT比が3M3Tとなったほか、ギア比が95:18=5.28と異なっている。
ただし、1編成しかなかったのがネックになったようで、2022年になって他の200型より先に廃車となった。
【500系:リバティ】
東武としては26年ぶりに導入された完全なる新型特急。3両×2本の連結運用が中心で、長距離運用からライナーまで様々な用途に対応する。モータは特急車では珍しくPMSMが採用されており、SIVはハイブリッドSiCを用いたハイテクな仕様となった。スペーシアほどの豪華さはないものの全体的に未来的な雰囲気が漂い、一度は乗ってみたくなる事間違いなし。
今後も増備が予定されており、200型を置き換えるものと思われる。当形式の導入で東武アーバンパークラインに初めて特急列車が設定される事となった。
【N100系:スペーシアX】
(画像:東武鉄道株式会社)
「スペーシア」の進化型として導入された新型フラッグシップ特急。今後の「脱炭素社会」へ向け、CO2排出量を実質ゼロにする電力に置き換えるという。デザインは外観・室内を含めて日光・鬼怒川への観光を全体的に意識し、車体は日光東照宮に塗られた「胡粉」をイメージした白色に塗装されている。
ただ、本数は4本に留まる予定で、どうやら「スペーシア」の全面的な置き換えを目的に導入する訳ではない模様である。また、先頭非貫通なので半蔵門線への直通は考慮されていないが、湘南新宿ラインに入線する可能性はある。
通勤型
【6050系】
快速用の6000系を車体載せ替えの上で登場した車両。野岩鉄道開通の際、当初は6000系をそのまま使う予定だったそうだが、非冷房車であった事から車体更新という形を取ったという。長距離運用に対応するため、通勤車両では唯一トイレが設置されている。東武の中でも人気が高い車両であり、2017年までは浅草~会津田島を「無料で」走破する車両であるなどもあり重宝された。
現在はリバティ導入により快速が廃止され、臨時電車を除けば鬼怒川温泉以北でしか見られなくなった(ただし、東武車は定期運用なし)。この事もあって、余剰となった車両に廃車が発生している。以下、細かい内容を記述する。
(6050型)
本数:2両編成3本⇒合計6両
6000系の更新車。下回りはほぼそのままだが、制御装置は新しく作ったものである。ただし、6173F以降は完全新造車である。これとは別に野岩鉄道用に3本、会津鉄道用に1本がそれぞれ作られたが、番号がそれぞれ100番台・200番台と区別されている。
現在は野岩鉄道所有車の2本しか定期運用に就いていない。そのうちの1本はクラウドファンディングによる資金で更新を実施するという。
(634型)
本数:2両編成2本⇒合計4両
2012年に登場した「スカイツリートレイン」。完全新造車である6177・78Fを改造した車両で下回りはそのままとされたが、それ以外は一新されてほぼ新車のような感じとなった。全体的に明るい雰囲気になっているのが特徴的。
ただし、現在は定期運用がなく、団体専用あるいは繁忙期の臨時特急として使われている。
【8000系】
最盛期には712両もの本数が走った「私鉄の103系」。何度も塗装を変えながらも東武の標準車両として定着していった。首都圏から地方までのどんな運用に耐えるため、全ての編成においてMT比が1:1となるように工夫されている。昭和30年代の設計としては完成度が高く、その汎用性の高さから20年もの間作られ続けた。当形式は1986年から順次リニューアル工事が施工されたが、前述の6050系のような車体載せ替えによる更新が主だった当時としては画期的であった。これは後にJRグループや営団、さらには小田急や京急など大手私鉄の更新・延命工事の手本になったとされている。
かつては全線(押上~曳舟の半蔵門線連絡線を除く)で見られた形式で、野岩鉄道にも乗り入れた時期があった。しかし、2004年に廃車が始まって現在は4分の1程度まで数を減らしており、引退が近づいている。以下、細かい内容を記述する。
(8000型)
本数:6両編成17本・4両編成11本・2両編成9本⇒合計164両
純然たるオリジナルの「8000系」。ただし、先頭の顔は大半がリニューアルによって6050系と同じ印象を持ったものとなっている。2両から8両まで存在し、東上線では連結して10両編成で運転する事もあった。しかし、あまりに車両を作り過ぎた結果、番号が「8x99」まで行ってしまい、苦肉の策として「8x100」というインフレナンバーが設けられた(最終的には81120Fまで製造される)。
(800型・850型)
本数:3両編成10本⇒合計30両
2005年に登場。8両編成からサハ8900形を抜いた上で3両×2本に分割され、その際に一部のモハが先頭車化改造された。これにより形式が変更され、機器配置によって800型・850型と分けられている。
- 800型⇒Mc-M-Tc
- 850型⇒Tc-M-Mc
このグループは3両編成のためMT比が2:1となった。現在は主に館林以北のワンマン区間で走っている。
【9000系】
有楽町線直通用として作られたのがこの形式。東武では初めてステンレス車体が導入され、チョッパ制御が使われるなど大幅に近代化した。帯は8000系とは異なり細いマルーン色が使われ、これは30000系まで続く事になる。なお、当初は9101Fのみが作られ、有楽町線直通が始まった1987年から量産が始まった。
2023年からは相鉄線直通が開始されたが、当形式は相鉄対応をせず近いうちに地下鉄乗り入れから撤退する可能性が高い。以下、細かい内容を記述する。
(9000型)
本数:10両編成7本⇒合計70両
純然たるオリジナルの「9000系」。9102F以降は副都心線直通前に室内更新とフルカラーLED化が施された。ちなみに、9108Fはコルゲートではなくビードプレス加工が施されているため見た目が異なる。制御装置がチョッパのままであり、地下鉄直通の車両では最後の直流モータ車として残っている。
試作車の9101Fは細かな部分で仕様が異なっており、最後まで未更新のまま廃車となった。
(9050型)
本数:10両編成2本⇒合計20両
1994年に登場。前面と側面の幕がLEDとなり、制御装置がVVVFとなった。副都心線直通の車両では唯一目立った更新が施されていない(フルカラーLEDになった程度)。
【10000系】
前述の9000系をベースにして、8000系に代わる新たな標準車両として導入されたのがこの形式。9000系との違いは制御装置で、界磁チョッパ制御を採用したため東急8000系のような音を発するものとなっている。2007年からリニューアルが始まり、室内更新やフルカラーLED化などが施された。ただし、全製造数486両という膨大な本数であるため未更新車も多く残っている。先頭デザインは京王7000系に見えなくもない。
一時は半蔵門線直通に充当する話もあったそうだが、車体幅の関係で見送りとなり30000系の製造で対応している。以下、細かい内容を記述する。
(10000型)
本数:10両編成3本・8両編成2本・6両編成7本・2両編成4本⇒合計96両
純然たるオリジナルの「10000系」。9000系と同様のコルゲートとなっている。このグループには4両編成が存在しない。なお、東上線の10両編成は当初8両であり、1989年に2両増結して現在に至る。
しかし、このグループは昭和期の製造であり流石に車齢が高くなってきたようで、11004Fから廃車が始まり、現在はリニューアル車にも解体する車両が出て来ている。
(10030型)
本数:10両編成2本・6両編成30本・4両編成24本・2両編成18本⇒合計332両
1988年に登場。下回りはそのままだが車体構造が大幅に見直され、ビードプレス加工となったため見た目が全く異なっている。また、1992年以降に作られた編成は室内の仕様が若干変更され、番号も51から振り直されているため10050型と区別される事もある。さらに、リニューアル工事の際に一部でVVVF制御に改造された編成も存在する。
ただ、全編成をリニューアル対象にはしていないそうで、2022年から非リニューアル車の廃車が始まっている。
(10080型)
1988年に10030型と同時に登場。見た目は10030型と同じだが、落成当初からVVVF制御(日立GTO)とされていた。なお、VVVF装置は試作品であり徐々に不具合が出てきたようで、2005年には50000系と同じものに交換されている。
ただ、1編成しかなかったのがネックになったようで、2023年になってリニューアル車よりも先に廃車となった。
【20000系】
日比谷線直通用として作られたのがこの形式。ステンレス製であるが、デビュー時期もあってか9000系・10000系とは異なりコルゲート車がなく、初めからビードプレス加工が施されている。全体的に10000系と仕様が合わせられており、そのためか全体的に10000系の3ドア版のような雰囲気が漂う。
現在は日比谷線への乗り入れを終了し、全車両が南栗橋以北での運転となっている。この際にワンマン化改造が施され、帯の色が紺色に変更されている。以下、細かい内容を記述する。
(20000型)
純然たるオリジナルの「20000系」。主要機器は10000系と同一のチョッパ制御とされているが、6M2Tの強力編成にする事で起動加速度3.3km/m/sを確保した。これは20050型・20070型も同様となっている。
(20050型)
1992年に登場。両端の2両が5ドアとなり、制御装置もVVVFに進化した。側面の幕は3色LEDとなり、ドアチャイムが装備されるなど20000型と比べて変化が多く発生した。
(20070型)
1996年に登場。下回りは20050型と同じだが、全車両3ドアに戻されている。この番台では車内LEDが千鳥配置で設置された。
(20400型)
本数:4両編成22本⇒合計88両
2018年に登場。前述の20000型・20050型・20070型を改造したワンマン対応車。改造内容は外側が半自動ボタンの設置やフルカラーLED化、室内が化粧板の交換や「パッとビジョン」と呼ばれるLCDの設置などとなっている。種車によって次のように番号が区別されている。
なお、20000型の中間車は全て廃車となったため、全車両がVVVF制御とされている。ただし、機器更新は施されていない。このうち、30番台(3号車を除く)は5ドア→3ドアとする上で側面が埋められたためカオスな見た目となっている。
【30000系】
半蔵門線直通用として作られたのがこの形式。車体こそ従来型を踏襲したものの、システムが一新されて現代的な車両となった。東武では初めてVVVF装置にIGBT(音は京王1000系の更新前に近い)が導入され、最高速度も120km/hに向上した。この形式は何と言っても側面のLEDの長さが特徴的で、区間準急東武動物公園行きといったものも文字を潰さずに表示される。ドアが静かに閉まるようになっているのもポイントの1つ。
ただ、浅草駅が10両編成非対応のために6+4両編成で作った事で、東急田園都市線において最混雑車両に運転台が来るのがネックとなった。そのため、乗り入れから間もなく50050型への置き換えとなり、現在は全て東上線へ転属している。
【50000系】
通勤車で初めてアルミ車体を導入したのがこの形式。東武の伝統を何一つ受け継いでない全くの新車であり、登場時は「これは本当に東武の車両か!?」と思った人は少なくないはず。とにかく全体的にシンプルな構造となっており、209系の初期車ぐらいまで無駄を省いている印象。ただ、流石にこのサービスではマズいだろうと思ったのか、2009年以降の製造分ではドア周辺が視覚障害者に配慮したものとなり、ドア横に手すりが付いたり窓が2分割で開けやすくするなどの変更が施されている(椅子も若干固さが改善されているらしい)。先頭デザインは西武20000系に見えなくもない。
この形式は全て10両固定編成で作られ、地下鉄直通やTJライナー運用まで様々な用途に対応している。ただ、基本的には統一仕様で、全体的にオレンジの塗装が入っているほか、E233系通勤型に近い音を発するVVVF装置や電気式のドアエンジンが例外なく採用されている。以下、細かな内容を記述する。
(50000型)
本数:10両編成9本⇒合計90両
純然たるオリジナルの「50000系」。ただ、50000型は同一番台でも編成ごとに仕様が異なる。51001Fは先頭非貫通だったのが、51002Fになると先頭車に左右非対称の貫通扉が設置され、51003F以降は車体幅が30mm狭くなっている。
(50050型)
本数:10両編成18本⇒合計180両
2006年に登場した半蔵門線直通用車両。半蔵門線へ乗り入れるために全編成において車体幅が30mm狭く作られている。ただ、ぶっちゃけ51003F以降の編成に限れば50000型とは全く違いがない。
(50070型)
本数:10両編成7本⇒合計70両
2007年に登場した副都心線直通用車両。側面がフルカラーLEDとなった。それ以外は50000型と変更はないが、先頭車の長さが少し長い。なお、51076F以降はドア上にLCDが設置され、それ以前の編成も徐々に1段LEDからの交換が進んでいる。
(50090型)
本数:10両編成6本⇒合計60両
2008年に登場した「TJライナー」。基本的には50070型に準拠しているが、この番台ではロングシートとクロスシートを自在に交換できる「L/Cカー」が関東で初めて導入された。さらに側面には青色の帯があるため、他の50000系とは異なる印象となっている。
【60000系】
野田線としては70年ぶりと言われる完全な新車として導入された。基本的に50000系をベースとしているが、車内照明がLED化され、モータが全密閉式となるなどの変更点がある。VVVF装置は50000系と同じ日立製であるが、E233系近郊型に近い音を発するものとなっている。ドアエンジンはラック式となり、これはE235系よりも導入が早く、相鉄12000系に近い動作である。色は青と黄緑のコントラストで、先頭デザインは小田急4000形に見えなくもない。
2019年には臨時列車として佐野線まで入線した。今後は野田線が2024年以降に順次5両化となる見込みで、その際には中間車1両が新形式に組み込まれる。
【70000系】
日比谷線直通用として作られた新型車両。従来の18m3ドア(8両)ではなく20m4ドア(7両)で作られている。この形式は東京メトロ13000系との共通設計となり、車体の色で判別する形となる(当形式は赤を採用)。側面LEDの表示がナンバリング対応のためかやたら広くなっているのが特徴的で、新製時よりLCD3画面となっているのが見どころ。モータは東武では珍しく全車両に搭載されているが、出力的には3.5M3.5T相当とされている。
2020年からはTHライナーに対応するべく座席をL/Cカー仕様とした70090型が新たに製造された。以下、細かい内容を記述する。
(70000型)
本数:7両編成18本⇒合計126両
純然たるオリジナルの「70000系」。メトロ13000系との違いはドアエンジンで、東京メトロでは従来と同じ空気式なのに対し、東武では電気式が使われており動作も50000系・60000系とは異なる。東京メトロとドアチャイムが合わせられたのでドア開閉がJR車っぽく感じられるかもしれない。
(70090型)
本数:7両編成6本⇒合計42両
2020年に登場した「THライナー」。座席が50090型と同様の「L/Cカー」となったほか、側面の塗装が変更されている。それ以外の部分は70000型と変更なし。
【80000系】
(画像:東武鉄道株式会社)
2025年春に導入する予定の野田線用新型車両。ただし、現行の6両⇒5両への減車となり、60000系とは別形式になる。省エネ・CO2削減により環境負荷を低減させるとともに、快適性・サービス向上を目指すという。これに対応するために新機軸を次々と導入し、走行機器は東武どころか民鉄でも初の「SynPM」という永久磁石不要の同期モータを採用する事で保守を簡略化する。
全部で25本が製造されるようで、そのうち7本は完全新製車で、18本は4両で製造した上で中間車1両を60000系から改造して組み込む模様。このため、4両編成の組成も可能と考えられ、将来的には伊勢崎線及び東上線のワンマン区間にも導入するかもしれない。
こんな感じでしょうか。なお、写真は徐々に投稿していく予定で、車両の本数は置き換え等によって変化する事があります。それにしても、東武グループは車体のカラーリングが統一されておらず、他の私鉄と比べるとまとまりに欠ける印象があります。
今日はここまでです。……しかし、東武はいつから野田線に力を入れるようになったんだ!?
つづく