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司法試験情報局(LAW-WAVE)

司法試験・予備試験・ロースクール入試の情報サイトです。司法試験関係の情報がメインですが、広く勉強方法(方法論)一般についても書いています。※ブログは完全に終了しました。コメントなどは受け付けておりません。ご了承ください。

先日、現代文とロー入試小論文が苦手という方からご質問をいただきました。

 

最初、コメントに返信するつもりで書いていたのですが、無暗に長くなってきてしまったので(汗)、別途エントリーを立てることにしました。

 



【現代文対策】
 

まず、ロー入試小論文は、半分以上現代文の問題といえます。

論述云々以前に、問題文を読む段階で勝負の大半がついてしまう、日本語の読解試験です。

 

したがって、もし基礎的なレベルから対策をしようと思えば、大学受験の現代文の参考書や日本語の論理そのものを鍛えることを目的とした教材で勉強するのがいいと思います。

 

現代文の参考書としては、大学受験でいえば、板野博行氏のような読解のルールを詳細に法則化している本が一番のおすすめです。

 

 

 

 

3冊目の本は絶版ですが、これで(一冊にまとめられているもので)十分だと思います。

 

板野565(ゴロゴ)シリーズの解法の数が多すぎると感じる人には、Z会から出ている『現代文の解法』をおすすめしておきます。

 

 

 

あと、中・高入試の国語講師として有名な福嶋隆史氏の参考書もおすすめです。

 

 

福嶋式の方法論は、鶏鳴学園という国語専門塾で用いられている国語の読解・記述両面に通じる3つの法則を、より易しく噛み砕いたものです。

 

鶏鳴学園の代表の中井浩一氏には、『日本語論理トレーニング』という一般書があります。

受験本ではないので福嶋氏のものより実践的ではないですが、この本でも概要は掴めます。

 


 

日本語の論理については、野矢茂樹 『論理トレーニング』 『論理トレーニング101題』 が定番です。
 

 

 

試験対策として読むのであれば、圧倒的に『101題』がおすすめです(前者を読んでいなくても特に問題はありません)。ざっと一通り解けば、日本語の論理に対する感覚が一段鋭敏になると思います。

 

 

こういった現代文の教材で、文章の論理構造を読み解く能力を根本から鍛える方法がまずはあります。

 



【小論文対策】

 

以上は前振りでした。

 

やはり、ロー入試対策をするなら、ロー入試小論文の問題集を可能な限り検討するのが、最も合理的で真っ当な方法です。これを脇に置いて試験対策はあり得ませんから。

 

まず、現代文であれ小論文であれ司法試験の論文試験であれ、行われていることは皆同じです。

 

それは、問いを答えに言い換えること です。

 

全ての試験で行われているのは、実は↑これだけです。

この「言い換え」が適切に行われているかどうかが、あらゆる試験における評価のポイントです。

 

ここに意識を集中して、設問に照らして問題文が解答にどのように言い換えられているか、その変換の論理を、納得いくまでなぞっていってください。

 

この言い換え(変換)にはパターンがあります。

 

いくつか例を挙げると、

 

①具体的な問題文を、より少ない文字で要約・抽象化する抽象化パターン

②①とは逆に、抽象的な問題文を具体化する具体化パターン

③問題文の中から、設問の要求する核心部分を取り出す抽出パターン

④問題文のいくつかの要素を、設問の要求にしたがって作りかえる組み換えパターン

 

等々・・・いくつかの類型(パターン)が考えられるはずです。

 

ちなみに、上記の分類は、私がいま即興で考えだしたもので、少しも完成されたものではありません。

いずれにせよ、パターンには限りがありますから、このようなパターンを、問題集を検討しながら自分なりに創造していってください。

 

この「自分なりに」というのが大事です。

他人(予備校)が作った解法を学ぶのはOKですし、必要なことでもありますが、最終的には「この方法(解法)はもはや自分のものだ」と言えるくらいに消化・吸収しなければなりません。

 

 

いちおう小論文の教材も紹介しておきますが、小論文には現代文ほど良い教材がありません。

それを前提に、まず小論文の板野的な教材(解法集的な教材)として、鈴木鋭智『小論文のオキテ55』をおすすめしておきます。

 

 

 

ロースクール入試小論文は、与えられた資料・データを論理的に分析する力をみる「※資料分析型」や、何らかの争点に基づいて自らの主張・結論を説得的に提示できる力をみる「※問題解決型」(※これらの用語は私がいま適当に作ったものです)のような、いわば小論文の王道的な出題をしてきます。

 

王道的でない出題の典型は、高校入試などによくみられる「あなたの中学時代の一番の思い出は?」みたいなアホみたいな出題です。こういうのは小論文ではなく「作文」だ、といわれればその通りなのですが、両者の境界は意外に曖昧です。

こういった、悪い意味での出題形式の多様さが、小論文のマニュアル化(方法論化)が進まない最大の要因と思われます。

 

出題の仕方が王道的で、かつ小論文入試の経験・蓄積が豊富な大学といえば、やっぱり慶應でしょう。

タイトルに「慶應」が入っていますが、柳生好之『慶應の小論文』は、全ての小論文入試対策の基本教材として一番のおすすめです。

 

 

 

こうして、小論文入試の解法パターンを自分なりに創造する、あるいは書籍・講座から学び→消化することで、どんな問題がきてもとりあえず最低限の対応はできるようになるはずです。

 

そこから更に重要なのは、問題文の構造や解答を導き出す論理が手に取るように見えてくるくらいに、ひたすら問題と解答に習熟することです。

 

そして、何かに習熟するために必要なのは、繰り返すこと です。

 

大学受験の世界では、現代文や小論文の問題を繰り返し解くのは無駄で、常に新しい問題で訓練しなければならないという「繰り返し無駄説」を唱える人が多いです。

 

しかし、私はその説に100%反対です。

 

たとえば、現代文が苦手な人が、1回問題を解いて1回復習したら、それで問題文の論理構造を十全に把握できるレベルに達するかというと、普通に考えてそんなことはないでしょう。

 

はじめて読む問題文を1回読んで、はじめて読む解説を1回読む・・・それだけで文章を十全に把握できるのだとしたら、その人は文章の読み解きが苦手ではなく、得意だということです

 

現代文が苦手な人は、与えられた文章を1回では十分に読み解くことができないからこそ、現代文が苦手だったはずなのです。1回で読み解けないということは、実は2回でも怪しいということです。

このような事実を素直に認めることがまず何よりも大事です。

 

実際には、2回、3回、4回・・・と、何度も何度も問題文の論理を追いながら、そのたびに一段一段読解レベルを上げていかなければ、現代文を苦手とする人が、現代文を得意にする人と同じレベルでその文章を読み解くことはできません。

 

逆にいえば、どれだけ文章の読み解きが苦手な人でも、たとえば10回きちんと検討すれば、どんな現代文の天才の1回目の読解よりも、はるかにレベルの高い読み解きができるようになるでしょう。

 

このように、何かの苦手分野がある人は、

①手を広げずに、対象を繰り返し徹底的に検討し切ること

 

そうやって、

②その分野を得意とする受験生の思考を丸ごと追体験すること

 

これ以外に、本当の意味で苦手分野を得意にする方法はないと私は思います。

 

10のうち3のレベルで問題を解き散らかしていたら、いつまでも3のレベルに留まったままです。

3のレベルでしか解くことができないなら、その問題を繰り返し検討することで、4→5→6→7→8とレベルを上げていき、最終的に、8のレベルで解ける人の思考プロセスを丸ごと体得するしかありません。

 

そうやって問題と解答を自分のものにしていくというやり方が、一見迂遠にみえて、最も確実な方法なのではないかと私は考えます。

 

 

 

【補足】

 

ここから先は少し個人的な話になります。

私が現代文が得意になったのは、高校生のとき、ある一つの「法則」に気づいたからです。

 

その法則とは、書いてある通りに読む ←これだけでした。

 

現代文は、書いてあることを、書いてある通りに読む。それだけを要求している。

 

高校2年生でそのことに気づいて以来、私の国語の偏差値は70台(時には80台)に固定されるようになりました。碌に方法や解き方のパターンを意識していない高校生たちの中では、この「法則」だけで十分に上位に行くことができました。

 

もう少し具体的にいうと、「書いてある通りに読む」とは、1つ1つの文章(さらには1コ1コの文字)に自覚的になることです。あるいは、1つ1つの文章、1コ1コの文字を、額面通りそのまま受け取ること、と言ってもいいです。

 

たとえば、A子がB男の態度に「戸惑っていた」と書かれていたとしたら、A子はあくまでも「戸惑っていた」のであって、怒っていたわけでも悲しんでいたわけでもない。こういう問題文に書かれている明々白々な事実に自覚的になるだけで、(高校生のレベルとしては)国語に全く苦労しなくなりました。

 

 ウイスキーのコピーに、「なにも足さない、なにも引かない」というのがありますが、これは文章読解のスローガンとしても相応しいものです。

 

正しく文章が読める人(議論ができる人)というのは、常にこういう仕方で目の前の文章(相手の主張)を捉えようとします。一方で、文章の読み解きが苦手な人(ちゃんとした議論ができない人)というのは、文章に書かれていないことを勝手に読み込んだり、逆にはっきり書かれていることを読み飛ばしたり、相手が主張してもいないことに勝手に反論したりするのです。 

 

ちなみに、私がこのブログで、「論理」(三段論法etc)に過剰に拘泥する姿勢に対して基本的に冷淡であり続けている理由は、「できない受験生」の原因は、論理それ自体ではなく、論理以前の部分にあることがほとんどだからです。

 

(狭義の)論理とは、A→B、B→C、したがってA→Cのような、A→B→C→D→E…と連なる言葉の連鎖の整合性のことです。

「できない受験生」は、このA→Bという文章(主張)に、たとえば「P」という存在しない意味を勝手に付加して「A→BP」と読んだり(そこからP→Q→Rと脱線していったり)、X→Y→Zという文章から「Y」という必要な意味を勝手に省略したりします。

 

多くの「できない受験生」は、このような論理以前の部分で躓いていることがほとんどで、そこから先に進めている人は、それだけで既に十分に優秀だというのが実際のところだと思います。

 

 

ここで重要なのは、自分で気づくことです。

 

他人の助けを借りるのはいいですし、必要なことでもありますが、あくまでも「この自分」が問題に対する対処の仕方(処理パターン)を、腹の底から納得して完全に消化・吸収する(自分の身体の一部とする)のでなければなりません。

 

そのために、繰り返し→自分のものにする(=潰すというプロセスが必要なのです。

 

どこかの講師が言っていた話だとしても、まるで自分が思いついたことであるかのように、その処理パターンが最初から自分のものであったと錯覚するくらいに、自分のものにすることが必要です。

 

他人に教えてもらった10の道具より、自分で作り上げた3の道具のほうが、現場でははるかに役に立ちます。

 

 

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あと、小論文が得意になった経緯についてもご質問を受けたのですが、この点については、方法論としてあまり一般化することができません。

 

ロー入試小論文について、私自身は、ほとんど試験対策というものをしていないからです。

そのため、普通の受験生に向かって、「私はこうした」と言えるものがありません。

 

別に、私に小論文の地頭(=先天的能力)があったということではありません。

 

その逆です。

 

私の場合は、そんだけやれば、そりゃ誰だってできるようになるでしょ…という単細胞な方法で、結果として(試験対策とは全く関係がないところで)小論文が得意な人間になっただけだからです。

 

したがって、この点については、残念ながら、個人的な経験から言えることはほとんどありません。

 

言ってもいいのですが、私が結果としてやってしまったことを、ロー入試小論文対策として受験予定者に要求するのは不可能なので意味がありません。

 

もちろん、私個人の経験から方法を抽出できないからといって、何の方法もないわけではありません。

その人個人の経験と、客観的な方法論は、切り離すことができるからです。

 

むしろ、積極的に切り離されなければならない、とここでは言わなければなりません。

個人の経験と切り離すことができてはじめて、方法は方法たり得るからです。

 

したがって、たとえ小論文が苦手でも、正しい対策を行えば、苦手を得意に変えることは可能です。

 

その方法は上に述べた通りです。

この方法で、可能な限り上位へ食い込むよう努力してください。

 

 

 

講義刑法学・総論/有斐閣
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刑法テキストは行為無価値だけで十分、みたいな発言をしておきながら行為無価値のテキストをあんまり紹介していないのには理由があります。

 

一点目は、総論は講義案 が決定版だからです。基本書としてこれ以上良いものはありません。

記述の分かりやすさもさることながら、基本体系や個々の論点で受験界通説と概ね一致するメジャーテキストは、講義案くらいしかないのが現状です(あとは先日紹介したたのしい刑法でもOKです)。

 

二点目は、一点目と同じですが、大塚・大谷など行為無価値系で人気のある数々の学者本も、結果無価値よりは受験界通説に似ているだけで、実際には基本体系や個々の論点で異なる部分が多々あるからです。その微妙な違いが刑法の事案処理に大きく影響する場合もあります。

 

たとえば大谷先生の基本書などは、故意の位置づけなど極端な立場を採られている部分が意外に多く、あのテキスト通りに刑法の事案処理をするのは、実際にはかなり困難を伴うはずです。そこで結局は、大谷をメインテキストにしている人も、答案を書くときは大谷説ではなく、通常の受験界通説で処理することになります。でも、こういう場合にわざわざメインテキストを大谷にする理由って何なのでしょうか。

 

私は、刑法では無理に学者本の中からメインテキストを選定する必要はないと思います。

どの学者本も、細かくみれば全て受験界通説から外れているからです。

 

メインテキストは、受験界通説で書かれた講義案や予備校本シケタイなど)を選べば十分です。

学者本はあくまでも辞書という位置づけでいいと思います。

 

本書の著者・井田先生は、行為無価値系のエース、というより今や大御所というべき先生です。

 

ちなみに、行為無価値といっても、本書は受験界通説とは少し(かなり?)違います。

青字で書いたように、井田先生の本だけでなく、基本的に学者本はすべて受験界通説とは違います)

 

それでも、刑法総論の“辞書”の決定版が欲しい方には、本書をおすすめしておきます。


受験生の中には、本書の理論的な深みや一貫性を評価する声が多くあります。

個人的にはその辺はどうでもいいです(そういうことに拘るのは、はっきり有害です)。

 

本書の良いところは、たとえば相当因果関係の「相当」って何のこと?・・・みたいな、通常の基本書ではあまりにも当たり前すぎて説明が飛ばされてしまうような基本が、誤魔化しなくきちんと解説されているところです。このように、応用部分だけではなく基本部分の解説も厚いところが本書の良いところです。


あまりにも分厚いテキストなので、基本書として用いるのは絶対におすすめできません。

 

刑法総論は、司法試験の全ての分野の中で、最も知識の不要な分野です。

 

あくまでも辞書として、本棚に常備しておくと何かと便利だと思います。

おすすめ度⇒B

 

 

 

基本講義 刑法総論 (ライブラリ法学基本講義)/新世社
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あまり使っている人は見かけませんが、なかなかの良書です。

 

タイトルに「基本講義」とありますが、初学者用のテキストではありません。

レベルは結構高いです。

 

横書き2色刷りで、刑法の基本書では珍しく条文が明示されているところがgoodです。

論文試験では重要かつ理解の難しい因果関係の部分など、原理論的な部分に遡って誤魔化しのない記述がなされており、辞書としての有用性が高いテキストだと思います。

 

基本書ではなく、辞書としておすすめしておきます。

おすすめ度⇒B

 

 

 

刑法総論の思考方法/早稲田経営出版
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刑法各論の思考方法/早稲田経営出版
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神戸大学の大塚先生が書かれた本ですが、予備校出版のテキストです。

予備校本だともいえますし、学者本だともいえます。

 

どうでもいい情報ですが、大塚先生はかつてWセミナーで講師をされていた経験があります。

友人からテープを借りて聴いたことがあるのですが、ハイレベルでよく分からなかった部分がたくさんあったものの、学者とは思えないくらい分かりやすく深い講義でとても感動しました。

このように、ローの教授だからといって、全員が全員2流の講義をしているわけではないのです。

大塚先生のように、予備校講師を凌ぐ説明能力を持った先生もごくごく稀にはいるようです。

 

本書は基本書ではなく、基本書の副読本的なテキストです。

刑法の重要論点について、行為無価値・結果無価値の原理的な部分まで遡って解説されています。

重要論点の対立構造を、通常のテキストよりも深い観点から理解するのに役立ちます。

レベル的には中級者以上の受験生が読むテキストです。

 

個人的には、刑法の理論構造が詳しく解説された最初のほうの部分が非常に役に立ちました。

この本を読んではじめて、違法有責類型とか故意の体系的な位置づけの問題が理解できました。

それ以降、刑法の処理手順に迷いがなくなった気がします。

もっとも、試験的にははっきり不要な部分が多いです。

 

記述も最終的には結果無価値が正当化された書き方になっていますし、試験対策として学説を理解する必要がほとんどない中で、本書のような学説解説が中心のテキストを熟読する必要性はほとんどないと思います。


最初のほうの内容は素晴らしいので、勉強の合間に眺める程度ならおすすめです。

 

おすすめ度⇒B

 

 

 

たのしい刑法I 総論/弘文堂
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たのしい刑法〈2〉各論/弘文堂
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学者執筆のテキスト(学者本)ですが、ほとんど予備校本のような装いです。

分かりやすさの点でも、予備校本に全く負けていません

 

タイトル通り、学者執筆のテキストとは思えないほど記述が分かりやすく読みやすいです。

内容的にみても、学者の独自見解が打ち出されている部分はほぼなく、概ね受験界通説に近いです。


どの基本書をみても独自説ばっかりの刑法テキストの中では、かなりのおすすめです。

「単なる入門書に過ぎない」「レベルが低い」といった評価もありますが、司法試験の刑法では、通常の基本書に書かれているような細かい知識や学説を学ぶ必要はほとんどありません。

 

メインテキスト(基本書)としてマスターしておくべき水準はこの程度で十分でしょう。

あとは辞書を片手にひたすら問題を解いていくのが真っ当な試験対策だと思います。

・学者によって書かれた実質的予備校本(←もちろん褒め言葉)
・司法試験刑法学習の最低ラインを画したテキスト

 

として、初学者レベルの受験生におすすめしておきます。

 

おすすめ度⇒A