The wet moon
月の濡れる夜
歌声は彼方から私の胸の奥へ
やがて闇が覆い行く空
地平線は街に燈る無数の灯り
青ざめた君の横顔
今でも覚えている綺麗な刃
繊細な表情この手で撫ぜれば
きっとすぐに血が溢れる
触れようとは思わない
感情が冷めているなんて
よく言われる言葉
最小限の動力で世界を回す
何を想っても人は眠る
それが罪の下死せるとしても
それが禍の下死せるとしても
それが定の下死せるとしても
雨が降り地は沈む
音は消されて柔かな湿気
溺れるような暖かさ
地平線には明け行く空
一捻りで潰れる君
僕に足りない繊細さ
君に足りない忍耐力
世界は無言で今も駆ける
触れようとは思わない
僕の声に音は無い
他人に届ける夢も無い
最小限の動力で世界は進む
何を祈っても人は眠る
それが悔の下死せるとしても
それが志の下死せるとしても
それが愛の下死せるとしても
月が濡れる夜
砂漠の花
声は結ばれない 声は結ばれない
途切れる空気は私の声を通さない
月の中にできた影 君の居る鳥篭
声は結ばれない
深紅の海絡まる 深紅の海絡まる
水面には無数の星を映す
折れた君の羽は静かに沈む
深紅の海絡まる
飛べない君 私の胸へと降り立つ
スローモーション 砂は毀れない
差し出した手 触れていく指
その時心は初めて開かれた
声は結ばれて 声は結ばれて
朝という瞬間を知った
風を破り突き進む声
声は結ばれて
薄紅の海解ける 薄紅の海解ける
青く消えそうな月に鳥篭はもう無い
君は飛び立つ
薄紅の海解ける
今私は知った
ずっと昔から知っていたはずなのに
荒地でも花は咲くよ
心は再び開かれた
君へ繋がる扉
力無く見上げた空 降り注ぐ星に溶けた
零れた涙は張り詰めた水面を揺らして遠く波紋を広げる
君の居ない世界に太陽は二度と昇らないから
僕は一体どうすればいいの?
色を映さない目はただ涙を零し
明日を見据えようともしないんだ
戻らない君が此処へまた現れること
叶いもしない願いを祈る
夢はずっと夢のまま やがて四回目の夜が
夢はずっと夢のまま 月は満ち欠けしない
記憶はやがて霞む 降り注ぐ星に溶けた
皮肉だがこの現実は美しい 君は消えてしまったというのに
夜は終わらない 流れない季節 このちっぽけな手で
僕は一体何ができるというの?
声が枯れるまでこの歌を歌おう
たとえ世界が崩れるだけだとしても
君の代わりなんて居るはずもない
だけど僕は未来を祈る
夢はずっと夢だけど 死界への入り口
夢はずっと夢だけど 閉じていく音がする
君へ・・・繋がる・・・扉は・・・閉まる・・・
朝が来る・・・