昨日の「お出かけ修行編」には、
たくさんの共感をいただきありがとうございました。
外に連れ出すのが大変なら、
お家でコレクションとして大切に
愛でていればいい……。
そう思っていた時期も、私にはありました。
けれど、白いバーキン、
しかも「ナタ」という完璧な色を
維持することは、
家の中にいてもなお、ひとつの戦いでした。
なぜなら、日本の気候は
エルメスのバッグ管理にとって、
非常にハードルが高いからです。
大きな問題は、
「湿度」と「温度」の管理。
梅雨の時期、クローゼットの中は、
油断すれば湿気が溜まります。
定期的にクローゼットから出しては風を通し、
除湿剤の配置を確認することも欠かせません。
特に真っ白なバッグは、
わずかな環境の変化が色味や革の質感に
影響を与えることもある……。
クローゼットの中で大切に
眠らせているつもりでも、
歳月は残酷です。
気づかないうちに色が曇ったり、
質感が変わってしまったりすることもある。
たとえ見た目が変わらなくても、
エルメスの世界では「刻印(製造年)」
という形で、刻一刻と時が刻まれていきます。
使わずにただ置いておくだけで、
刻印だけが古くなっていく。
バッグも年を取るのです。
これが、エルメスを愛する方なら避けて通れない「刻印」という名のタイムリミットです。
そう考えると、
クローゼットに眠らせている一日一日が、
この子の「命」を削っているような、
焦りに似た感覚を覚えるようになっていました。
それは、あの時私を感動させてくれた
「女神」に対して、あまりに失礼な気がしたのです。
クローゼットの中でひっそりと眠らせて、価値を減らしていくよりも、
誰かの腕で、太陽の光を浴びて輝き、
使い切ってもらう方が、
バッグにとっても幸せなはず。
それが、
この美しいバッグに対する、
私なりの最後の敬意だと思うのです。
一度きりの外出で、
その「美しさ」と「維持の難しさ」を同時に知ったからこそ。
私の中で、一つの決断が固まっていきました。
そう決意したとき、ふと、自分のこれからの人生についても一つの答えが見えてきました。
もし私に、この美しいナタを譲るべき家族がいたら、また違ったのかもしれません。
(次回は最終回。娘がいない私の、
「一生もの」への最終回答を書こうと思います。)
また明日、お会いできたら嬉しいです✨





