[ 法律 x オカルト ] オカルト雑誌 「ムー」 45周年を支えるノンフィクションへのこだわり | 執爺の記憶帳

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元・(自称) 古株モンスターハンターの拙者が、毎日の出来事やネットの記事などで見つけた、ちょっとした情報 (アニメ・特撮・食玩 etc.) などを不定期に書いていくブログであります。

「UFOは毎日飛んでいないから!」
 オカルト雑誌『ムー』
 45周年を支える 「ノンフィクション」 へのこだわり
* 弁護士ドットコム (5月2日) より *


 UFOや超古代文明などのテーマで愛されるオカルト月刊誌『ムー』が2024年で45周年を迎える。
 創刊のきっかけは、学研が発行していた『中学1年コース』などの 「学年誌」 。
 世界の七不思議など、時期を問わない 「暇ネタ」 が好調で、専門に扱う媒体をつくることになったという。

 その『ムー』が、同じく1979年創刊の『地球の歩き方』とコラボした旅行ガイドブック『地球の歩き方ムーJAPAN:〜神秘の国の歩き方〜』がこのほど発売された。

 かたや不思議・超常現象、かたや正確な情報を売りにする 「バックパッカーのバイブル」 。
「水と油」 、 「混ぜるな危険」 といった言葉も浮かぶが、いったい読者をどこへ連れていくつもりなのか。
 ····本当に大丈夫?

 4月18日、都内で開かれた出版記念トークショーでは、『ムー』が長く愛される理由が随所に滲んだ。

● ムーが注意した法律問題

 本の制作にあたり、『ムー』編集長の三上丈晴さんは 「一線を引いた」 という。

「『ムー』っていろんなものを扱っているんですけど、今回の本では “ 心霊 “ は扱っていないんです。
 事故物件だとか廃墟だとか、幽霊が出るところは不動産価値が下がるとか、下手したら不法侵入になってしまうような場所もある。

 もちろん、 (『ムー』本誌では) そういう企画も扱うんだけど、今回は “ それはない “ っていうのがこだわり。
 やっぱりね、必ず行っちゃうんでね」 (三上さん)

 解説しよう。
 廃墟も基本的には “ 誰かの所有物 “ で、 「立ち入り禁止」 などの表示があることが多い。
 他人が管理する建造物に、管理権者の意思に反して (黙って・勝手に) 立ち入ると建造物侵入罪 (刑法130条) に問われる可能性がある。

 仮に、建造物侵入罪に該当しなかったとしても、軽犯罪法1条1号違反に問われる可能性がある。

 無理やり法律の話に “ こじつけた “ ように思うかもしれない。
 しかし、心霊系YouTuberが法律を逆手にとって、肝試しで廃墟ホテルを訪れた男女4人に対して 「不法侵入になる」 などと金を振り込ませたとして、脅迫や弁護士法違反の疑いで逮捕される事件が2023年に起きているのだ。


● 日本にもピラミッドがいっぱい

 法律の話を無事に消化したので、ここからは思う存分『ムー』の話である。

 実は『ムー』が『地球の歩き方』とコラボするのは今回が2回目となる。
 1回目は2022年で、『地球の歩き方』が事業譲渡で学研グループ入りしたことで実現。
『地球の歩き方 ムー:〜異世界の歩き方〜』と題して、世界各地のピラミッドなど、不思議スポットを紹介した。

 しかし、当時はコロナ禍。
 現地には行きづらいので、読んで楽しむという側面が強かった。
 一方、今度の第2弾はコロナ禍もひと段落したうえに日本が舞台。
『地球の歩き方』の新井邦弘社長は、 「今回は『行ける魔界』」 だとアピールする。

 紹介するのは、国内の (やっぱり) ピラミッドなど不思議スポット。
 ピラミッドのように、三角形は宗教的なものと結びつくことが多い。
 国土の多くを山が占める日本では、その役割を山が果たすことがあったとされる。

「日本にはピラミッドがいっぱいあるんですよ。
 単なる山じゃねーかよってツッコミもあるかとは思うんですけど。
 ここには、壮大なる超古代史と歴史とロマンの神秘があるわけです。
 ただの山じゃないんですよ、これが」 (三上さん)


●『ムー』は 「ノンフィクション誌」 だった

『地球の歩き方』的に 「超古代史」 や 「神秘」 は大丈夫なのだろうか。
 実は社長の新井さんは元『ムー』編集部員。 
 一見すると正反対のようにみえる両誌だが、意外にも 「同じ地平にある」 という。

「『地球の歩き方』は旅の人たちが間違えないよう、きちんとした情報を伝えないといけない。
 行ったことがないところから、きちんと安全に帰ってくるため、ファクトをきちんとチェックして、新しい情報になったら改訂版を出していく。

 じゃあ『ムー』はファクトを使ってないのかっていうと違う。
 まやかしじゃないんですよね。
 エビデンスをきちんと載せている。
 創作でいきなり出てくる “ 紛いもの “ のお話は、ほぼほぼ出てこないんですよ」 (新井さん) 

 新井さんが『ムー』編集部にいたとき、当時の編集長からは 「『ムー』はまず事実を扱うんだ」 と徹底的に叩き込まれたという。
 単に 「不思議」 なだけで、 「ロジック」 が破綻している原稿は 「読者が納得しない」 と突き返されたそうだ。

 新井さんは、2誌とも 「ノンフィクション誌なんです」 と熱弁をふるう。
 事実 (?) 、第1弾コラボは2023年に日本最古のSFアワード『星雲賞』のノンフィクション部門を受賞している。

 そんなこだわりへの伝統があるからか、『ムー』の三上さんは 「いつもネタに困っている」 と笑う。

「ひたむきにあやしく。
 人を見たら『ネタない?』。
 もう、とにかくネタがないんだよ。
 創刊当時からネタがない (笑) 。
 毎日UFO飛んでいないんだから!大変なんだよ!」 (三上さん) 

●『ムー』を支える 「オカルトリテラシー」 の高い読者たち

 今回の『地球の歩き方 ムーJAPAN』を活用して、自治体と連携したツアーの計画もあるという。

「たぶん、イベントに来る人たちは余裕を持って、こういうオカルトを楽しんでくれる。
『UFOを集めましょう』っていっても、『UFOが来なかった』って怒る人いないじゃないですか (笑) 。

『地球の歩き方』も、みなさんオーロラを見に行きますけど、見られないこともありますよね」 (新井さん) 

 オーロラというより、宇宙人がまるでイルカやクジラのような扱いだ。
 しかし、そうした部分も楽しんでくれる 「オカルトリテラシーの高い人たちが、『ムー』という媒体を読者として支えてくれている」 と新井さんは話す。

 学者にも 「隠れキリシタン」 ならに、 「隠れ『ムー民』は多いといい、東大の有名研究者に 「人類はどれだけサイボーグになれるか」 という企画を持ち込み、面白がられたこともあったそうだ。

 後輩の三上さんも、 「 (取材の電話をかけるときは) 最初『ムー』って言わないで、学習研究社、学研です。
 そういうと “ 門前払い “ はないからね」 と笑う。

 ちなみに三上さんによると、読者の約4割が女性。
 そのうちの多くは主婦層が占めるという。

「業界的にいうと、『ムー』の表紙を見ていただくとわかるんですが『赤文字系』(笑) 」 (三上さん)

 母を通じて子どもが熱中し、三代で愛読といった広がりもみせているそうである。


『 隠れムー民 』

 たしかに 「私の愛読書は『ムー』です」 と、おおっぴらには言えませんよね (^^;