陽子線照射をあと3日と残すクリスマスイブに、脱水の症状が強くなってしまった。照射した下部食道のあたりの疼痛が強く、水どころか唾液すらも飲み込むことができなくなってしまったからである。内視鏡で確認したらわかったことだが、腫瘍があったところが、ごっそりと剥げ落ちてくれていて、その部分が裸になってしまっていたからである。ありがたいことなのだが、肉体的には結構辛い症状だった。ただ、その部位は時間が経てば上皮化するのは分かっていたし、治療も点滴で補液(水分を中心に栄養を入れること)すればよい、というのは分かっていたので、精神的には楽であった。
年末は家族と過ごしたかったので数日入院したが、無理を言って、自宅で点滴をすることにして、退院した。点滴と薬剤を処方してもらって、自分・もしくは家内(家内も医師です)で自宅で点滴をキープした。医師だとこういう融通はききやすいので、そこは小さいがメリットだな、と思った。あとは、当たり前といえば当たり前だが、面倒なインフォームド・コンセントはかなりの部分省略できることもメリットだと思う。これは説明する方のメリットと言ってもいいかもしれない。今回の副作用(合併症)も一般の方にとっては、症状からするとかなり心配になってしまう内容かもしれないが、上述のように精神的には楽であった。こういう場合、医師は通常のんきな顔をして、「ちょっと我慢すれば治りますよ」と言うと思う。この場合は、本当にそうなので、気楽に乗り切っていけると良いと思う。プロフィールのところで、医師が癌になった場合のデメリットを書いたけれども、ささやかながらこういうメリットもあったんだな、とブログを書いて改めて自覚した。
肉体的な辛さは希望があればいくらでも耐えられると思いますが、精神的な辛さ、特に不安・絶望は耐え難いと思います。主治医のいうことを不必要に疑うことなく、気持ちを正しく保ち、不安が軽くなれば、と願います。