第一選択の抗癌剤からカンプト(トポテシン・イリノテカン)に変えたと記載したが、むしろ腫瘍マーカーであるAFPは2700まで上昇してしまった。それだけでなく、腸閉塞のような症状と脱毛が起こってしまった。

 

特に生きていく上では髪の毛はいらないわけだけど、自分にとって脱毛は相当ショックだった。加えて、シスプラチンを使っていくうちに、爪に段ができて、かつ薄くなってしまい、よく割れるようになってしまった。また、耳鳴りがひどくなり(内耳障害)、音、特に高音が聞こえにくくなってしまった。自分にとって、唯一自慢のできる部分が頭髪と手と耳(昔音楽をやってました)だったので、自分の取柄をすべて失ってしまったような気分になった。

私はよく覚えていないのだが、妻が言うには、この頃私はだいぶ落ち込んでいて、「自分の大切なもの全てを、癌と抗癌剤が奪ってしまった」と言っていたらしい。失った(と思っていた)ものの最も大きなものは、自分の未来と将来やりたかったこと(放射線科の友人のような仕事の充実)だったが。。。

 

それ以外にも副作用は、投与中の悪心・嘔吐、5FUによる口内炎(とても疼痛が強く、食事ができませんでした)、骨髄抑制による易感染性、貧血、出血傾向など、数え上げればきりがないほど、たくさんのものを経験した。が、最も大きな副作用は、病と闘う心が折れてしまうことではないか、と思っている。例え身体的な副作用が強くても、効果があれば闘えるが、酷い副作用を我慢しても効果がなければ、くじけちゃうのは当たり前である。

 

今でも耳鳴りはするし、爪はだいぶ回復したが薄くなっており、よく割れてしまう。陽子線照射した肝臓のあたりの肋骨は溶けたままなので、体をひねったりすると痛くなったり、酷いと血胸(肺と胸膜の間に血がたまること)が起こってしまったりするが、それでも今は特に問題なく普通に仕事をし、生きることができている。本当にありがたいことである。

あの頃、心が折れてくじけてしまっていれば、今はない筈である。

 

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現在闘病中の方、難しいとは思いますが、辛いとき、頑張らなくてよいですから、どうか諦めないで下さい。皆様の病状が好転することを、また状況がよい方は完治して、再発したりしないことを、心から願い、祈ります。