組織の中で多くの人が関わるプロジェクトに携わる経験を積んでいくと、なぜか物事を進められる人と、そうでない人がいます。その境界線がどこにあるのかと言うと、それはその人に「聞く力」があるかどうかに尽きます。そして、相手のために全身全霊で、その場にいることが、人を動かす、本当の意味で「人の話を聞くこと」です。
アメリカのコーチングの大家、デール・カーネギーは「人を動かす力」=「影響力を持つ人になる」ための原則を伝えています。下記は、その原則に私個人の経験を加えてアレンジしたものです;

1.be vulnerable 欠点と弱さを見せること.
2.be engaged and attentive その場、その人、その瞬間に全力で「関わり」、関心を持つこと、注意を払うこと
3.物語を持つこと
4.話すより聞くこと
5.良い質問をすること ask good quesitions
6.感謝の念をなるべく多く伝えること
ー批判、不平不満を言わないこと
7.Go above and beyond - やりすぎたとしても、過剰であったとしても、常に一生懸命であること

上記各点に関して説明します;

1.be vulnerable 欠点と弱さを見せること.
完璧な人って、いないです。「ギャップ萌え」、なんていう表現があるくらいですから、完璧に見える人が少しずっこけたことをしたりすると、親近感を持ってしまったりしますよね。欠点は、魅力的です。完璧さは、退屈でもあったりします。

人は完璧な存在になろうと頑張ります。しかし、どんなに完璧に見える人でも、寂しさを抱えていたり、コンプレックスに苛まれていたりします。

そんな弱さを共有できる人こそ、正直で、本当の強さを持っています。自分の弱さを見せられるということは、自分で自分の弱さと向き合い、自覚しているからこそできること。ですから、弱さを見せられる人は、逆説的ですが、強い人だとも言えます。

弱さを見せられる人は、自分のありのままの姿を周囲に見せることに不都合を感じない人です。自分のありのままの姿を受け入れられている人です。そういう人は、自分をよく見せようとしてたり、取り繕ったりしません。そういう「本当の自分」でいられる人をこそ、人は信頼します。
だからこそ、弱さを見せられる人であることは、人を動かすために、とても重要です。そういう人は、authentic = 本モノだ、と人は感じるからです。

2.be engaged and attentive その場、その人、その瞬間に全力で「関わり」、「関心を持ち」、注意を払うこと。

最近、従業員「エンゲージメント」が話題です。欧米では、社員エンゲージメントの高い企業を投資家が高く評価し、株価に影響を与えます。だからこそ、社員エンゲージメントを数値化して計るコーンフェリー社のPulseなどの指標を多くの企業が取り入れるようになりました。でも、カタカナで「エンゲージメント」などと言われても、ピンときませんよね。

日本は世界で最もこの社員の「エンゲージメント」が低い国です。私の会社でも、日本の数値だけ毎回他の国よりもかなり低いのですが、「日本人はそもそも、エンゲージメントが低いからしょうがない」と例外扱いです。どこの企業でも同じ傾向です。一言で言えば、無気力かつ冷めていて「どうせ会社なんて」とdisengage =エンゲージしていない社員が多いのです。

そのため、多くの日本企業が、さまざまな施策や、福利厚生を手厚くするなどの対策に必死です。しかし、そういった施策以前に、エンゲージメントはもっと単純なものなのです。

engagingとは、日本語で言えば、「人が人らしく互いに関わり合いを持つこと」です。「人らしく」が鍵です。それはどういうことかというと、いくつかのポイントがあります;
  • 一緒にいる人に対して真摯に関心を持つこと
  • ここに挙げている他の原則を実施すること
より具体的には;
  • その人の名前を言霊を込めて使うこと
  • その人の目をしっかりと見つめて、全身で相手のためにその時間を使うこと、その人のためにその場にいること
  • その人に注意を払うこと
誰かに関心を持って、注意を払ってあげることは、人が人にしてあげられる最大の贈り物の一つです。そうされることで、人は自分に価値があると感じられます。部下、上司の関係性で言えば、自分にきちんと関心を持って、注意を払い、その瞬間ごとに、全身全霊で自分に向き合ってくれる上司であれば、信頼関係は強固なものになり、この部下はその上司のために動くでしょう。

ある種の、愛の形とも言えるかもしれません。愛を持って人に向き合えば、その人に真摯な関心を持ち、全身全霊でその人のためにいてあげることができます。ただ、偽物の愛ではいけません。本当にそう思っていなければ、作り物の愛は見抜かれてしまうからです。だからこそ、人を動かすためには、自分自身に愛が溢れていなければなりません。
本当に愛に溢れた人は、自分自身を愛せる人です。日本では、あまり自分を愛することの大事さは語られません。しかし、人と真摯に向き合うためには、まず自分の課題と向き合い、自分の欠点を認め、良いところも悪いところもひっくるめて自分を知り、受容できている必要があります。それは、実は生半可なことではありません。
本当に人と向き合うには、表層的なテクニックだけでは足りません。辛い、自分と向き合う作業を地道にやっている本当の意味で人間らしい人こそが、人を動かせる力を手に入れることができるのです。

残りの原則はつづきの投稿で説明します。




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