この記事のポイント;
  • カリスマ性は、人に好かれ、影響力を行使して物事を実現させる、ビジネスにおいては大事なスキル
  • 外資系では、より個人に裁量権があるので、日本型企業よりも「根回し」が重要だ
  • 欧米の企業社会では、影響力=カリスマ性の獲得には、歴史あるコンサルも複数あり、練習とトレーニングによってビジネスマンが獲得すべき重要なスキルと捉えられている

周囲とくらべて、説得力のある人、存在感のある人にあったことはありますか?

会議中に、基本的にはそれほど発言はしないのに、その人が喋りだすと、部屋が静かになってみんながつい傾聴してしまう人。
一回会っただけで、妙に印象的で、忘れられない人。
欠点はたくさんあるけれども、何だか周りがついていってしまうリーダー。

そういう人には「カリスマ性」があるとされています。
経営学・リーダーシップ論では、この「カリスマ性」があらゆる階層のリーダーが、有効にチームを率いるために、とても重要であるされています。

私が現職のヘッドハンティングを受けた時も、会社が求めている「Profile」=人物像として「カリスマ性」を重視していると言われました。
「カリスマ性」という言葉を自分の人事に関わることで聞いたのはこれが初めてのことでした。具体的には何をもって「カリスマ性」とするのか?そしてそれが「人物像」ならば、なぜ私に声がかかったのか?と聞きました。
すると、前職で私が、複数部門の協力が必要不可欠な厄介なプロジェクトを推進させた事例が伝わっていたというのです。では、そのことと「カリスマ性」はどう関係するのか?

複数の部門が関わるプロジェクトは、通常の「レポーティング・ライン」=指揮系統ライン、管理監督ラインを超えて、頼み事が発生します。たとえば「社長の肝煎りプロジェクト」として、プロジェクトマネジャーに全権が委譲されていたとしても、普段部下・上司、あるいは同じ上司傘下の同じチームにいなければ仕事は頼みづらいし、簡単には聞いてもらえなかったりします。その様な仕事でも、ぐいぐいと物事を進められる力のことを英語では

Drive, power to drive

と言います。まさに、エンジンでぐんぐんと前に進めるようなイメージ。日本語では
推進力
ですね。
しかし、力技だけで進めようとしたって、人はついてきません。重要なのは、普段から構築してきた人間関係であり、人間力なのです。
それはつまるところ、

「人に好かれているかどうか」=
「影響力を持っているかどうか」

というソフトパワーです。

日本の企業社会では、「根回し」や「ネゴ」などが、物事を動かすためには重要です。

では、欧米の企業社会では必要ないかと言えば、実は日本企業よりも重要だとおもいます。

なぜなら、社員数も、稟議で通さないといけない関係各所の数も、日本型企業のほうが欧米より多いからです。意思決定権者が多ければ、ある程度官僚的に意思決定が行われる「システム」が作られます。日本企業型意思決定システムでは、いったんシステムのレールに乗せてしまえば、あとは比較的スムーズに物事が進むと言ってよい。

一方、より社員の数が少ない「Lean」=筋肉質な組織構造で、生産性と効率性を高め、一人ひとりの「稼ぐ力」を高めることで営業利益率を上げることが至上命題である「株主目線」の欧米企業では、一人ひとりの裁量権が大きい。
このため、複数部門の協力が必要なプロジェクトの推進には、担当者の上司との合意が必要であることもさることながら、担当者レベルで普段から信頼関係を構築し、いざというときには動いてもらえる人間関係を持っていないと、誰か一人が動いてくれないことがボトルネックになって行き詰ってしまうことが多いのです。

そんな行き詰った時に、会議などでよく使われる表現があります;

Let’s take it offline.

オフラインで話そう、と訳せますが、これはオフラインで行われる対面会議でも使われるので、オンライン・オフラインであるかは実はあまり関係がありません。どういうことかというと、

「その点に関しては合意形成ができていないので、別に機会を設けて一対一で(あるいは人数をしぼって)決着をつけよう」

ということです。
なので、サシで、タイマンで話そうぜ、みたいな物騒な向きもある表現です。こういわれたら、
「相手は何か納得できていない」から、もうちょっと根回しをしないとダメだ、という警告だと捉えます。

そんな表現があるくらいですから、欧米企業では「オフライン」=裏で根回しをしておくことが実はとっても重要。そして、通常の指揮系統を超えた「個人」の影響力が決定打になります。

だからこそ、いかにして「影響力」を持つかがビジネスマンのスキルとして重要視されており、専門にあつかうコンサルタントも複数存在します。一番の大手に、デール・カーネギーという、「影響力」をほぼ専門に扱うトレーニングに特化したコンサルがあります。
創業者のデール・カーネギー氏が1936年に発刊した本、
「人を動かす」
は、欧米企業ではバイブルのように読み継がれている本です。
カーネギー氏は、もともと「経営学」が専門だったのですが、経営におけるトラブルは常に「人間関係」によって起きると実感し、いかにして組織の中で良好な人間関係を築くか、に集中してコーチングメソッドを作り上げました。この本の原題、実はもっと長いのです;

How to Win Friends and Influence People
どのように友達を増やし、人に影響力を与えるか
ということですね。つまり、目的としてはもちろん「人を動かす」ことなのですが、人はどうやって動いてくれるのかといえば、
「友達」であり、かつ「影響力」を及ぼされているからこそ動いてくれるのです。

ところで私たち日本社会では、影響力どころか、人とうまく関われないことで辛い思いをしている人がたくさんいます。どうしてなんでしょう?次回はそこを掘り下げます。

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