3. iii-VI7のフレーズ
ここからはフレーズを練習していく。「フレーズを暗記して自分のソロで使う」というは合理的に聞こえるが、実際にはなかなかそうならない。「フレーズを練習することでそのフレーズを構成する要素についての理解が進み、自分がフレーズを作る際に利用できるようになる」という説明の方が現実的だ。 その意味で、ジャッキー・マクリーンやアート・ペッパーのソロは学習にうってつけである。それぞれのフレーズの成り立ちが説明しやすいからである。これに対して、チャーリー・パーカーのソロは美しいけど、成り立ちを理解することが難しい。リー・コニッツは自身の伝記で「チャーリー・パーカーは、コードをあまり意識していなかったのではないかと思う」と言っており、これを読んだときには納得するものがあった。 最初に練習するのは、iii-VI7のフレーズだ。まずは「iii-VI7」とは何か説明する。「Cool Struttin’」のキーはDメジャーなので、このキーで使われるコードを書き出すと以下のようになる。 iii-VI7(F#m7-B7)というのは、ii-V7-I(Em7-A7-D maj7)のii(Em7)を一時的にトニック(主コード)と考え、そこに向かうii-V7である。こうして曲のキー以外のコードを仮のトニックに設定して、そこに向かうドミナントを「セカンダリー ドミナント」と呼ぶ。 iiiにはフリジアンを使用するのが一般的だ。これは調性内のスケールである。VI7は、マイナーのトニック(ii)に対するドミナントなので、フリジアン ドミナントを使用する。それぞれのスケールを書き出してみると以下のようになる。 これで実際のフレーズを練習する準備ができた。今回のフレーズは7~8小節目の以下のフレーズである。12小節のブルースでは、2段目の終わり(8小節目)がiii-VI7になる。 最後のD#以外は、F#m7のフレーズと考えるのがわかりやすい。それぞれの音のF#m7での度数を表すと「6-1-2-1-2-1-7」となり、最後にB7の3度に帰着する。拍の頭の音はそれぞれ「F#」である。このフレーズをii-V7で使う場合には、GをG#に変えればよい。これは、iiiにはフリジアンを使うが、iiにはドリアンを使うためである。