初中級クラスの最後の曲は、ハービー・ハンコックの「Maiden Voyage」だ。参考とするレコーディングは、1965年発表の同名のアルバムである。これまでの3曲と違うのは、ii-V7-Iがなく、そのために調性が漂うように変化することである。こうした調性を「モード」と呼ぶ。モードのアルバムとしてはマイルス・デイビスの「Kind of Blue」が有名だ。ハービー・ハンコックはそれをさらに洗練させて、ジャズ史に残る名作を残した。アルバムの批評(「Maiden Voyage (Herbie Hancock) - 1965」)も書いているので、興味があれば読んでいただきたい。

 

 ソロはテナー・サックス(ジョージ・コールマン)、トランペット(フレディ・ハバート)、ピアノ/ドラムス(ハンコック、トニー・ウィリアムズ)の順番で行われる。コールマンのソロはコンパクトにまとまっていて一番手に相応しい。ハバートは後半に速いスケールの上下運動を繰り出して、クライマックスを作っている。一番の見せ場はピアノ・ソロにおけるピアノとドラムスの掛け合いだろう。ハンコックはドラムスのために十分なスペースを開けて、トニー・ウィリアムズが自由に演奏できるスペースを作っている。

 

 コード転回がシンプルな分、ミュージシャンが何を考えて演奏しているかが伝わってくるので、ゆったりとした気分で聞いて堪能してほしい。