使命
キキキーッ! ガシャァーーン ガンガラガッター!!
事故である。
数年前の話。
季節は丁度今頃。
その日は仕事が長引き、帰宅したのは深夜2:00を回っていた。
いつもならその時間からは何も食さないのであるが、その日は小腹がすき
近所のコンビニへ何か食い物を仕入れに向かった。
コンビニへは徒歩で5分ほど。
いつもなら仕事帰りに車で寄るのだが、歩いていくことにした。
昼間は暑かったのに、この時間は肌寒い。
確実に、そしてゆっくりではあるが冬がやってきている。
道の反対側にはちょっとしたビルがあり、そこには スナック 居酒屋 などの店舗が
5~6店ほど入っている。
それら店も店じまいの時間のようで、3人のきれいな身なりをしたお姉さんたちが
店の前でタクシーを止めようと立っていた。スナックの従業員たちだろう。
職種は違えど、私もついさっきまで仕事をしていたので
「ご苦労様ですー!」
と心の中で挨拶をし、コンビニへと急いだ。
それから1~2分後に、冒頭の音がしたのである。
おっ! と思い振り向くと、タクシーとバイクが衝突したらしく、バイクは道路に横たわっている。
その傍らにも、2人の人影が転がっていた。
私は急いで駆け寄った。
先ほどの3人のお姉さんたちはすでに到着している。
私が到着するころには、道に倒れていた2人のうち1人は起き上がっていた。
どうやら軽傷のようだ。
タクシーの運転手は、119番に電話を掛けていた。
「おい、藤沢(仮名)!大丈夫か!!」
先に起き上がった兄ちゃんが、道に倒れている兄ちゃんに声をかける。
「うん、大丈夫だ。お前はどうだ?五十嵐(偽名)。」
藤沢(仮名)が答える。
「俺も大丈夫だ。」
五十嵐(偽名)が答えた。バイクに乗っていた2人だ。
「いっ、今、救急車が来ますから!」
タクシーの運転手が、ちょっと裏返った声で叫ぶ。
「たっ、タマをうってる可能性があるので、うっ、動かさないでっ!!」
運転手さん、相当ご乱心であらせられる。
タマ ではなく 頭 だろうに・・・。
道路に横たわっている藤沢君に声をかける。
「頭打った?。」
「はい、コツンと。でも大丈夫ですよ。なんともないです。」
「他に痛いところは?」
「ちょっと足を打ったみたいで・・・。」
私の問いかけに、はきはきと答える。
恐怖からなのか、寒さからなのか分からないが、藤沢君、小刻みに震えている。
「寒いの?」
「ちょっと寒いですね。」
大量出血している人が寒さを訴えたのなら一大事だ。
藤沢君にはそれらは見当たらないので、単に寒いだけなのだろう。
安心した。
意識はしっかりしているし、頭のほうは大丈夫だろう。
しかし念のため、救急車が来るまでは動かさないほうがいい。
幸い、藤沢君の倒れている場所は車道の歩道側だ。外灯の真下でもある。
後続の車からも十分に確認できるし、轢かれることはないだろう。
ヘルメットもはずさないことにした。
藤沢君には悪いが、もう少し我慢してくれ。
足のほうもたいしたことはなさそうだ。折れてはいない。打ち身のようだ。
よかった。
ふと周りを見ると、藤沢君と私の周りを数名の人が取り囲んでいる。
あのお姉さん3人組も、心配そうな顔をしてその中にいた。
私と藤沢君の会話をずっと聞いていたようだ。
その中の一人と目が合った。なんか恥ずかしくなった。
「お疲れ様でーす。」
などと挨拶をした自分が恥ずかしかったのかもしれない。
そっと、その場から離れた。
はて、どうしたものか。
ちょっと考えた。
このまま立ち去っていいものなのだろうか。
事故の目撃者でもなければ、通報者でもない。
警察が来たとしても、ただの野次馬と思われるだけだ。
それは私の本意ではない。
しかし、万が一、藤沢くんの症状が急変してしまうかもしれない。
その場合に対処できるのは私だけだ!。
医療従事者としての責任がある、私には。
取りあえず、救急車が来るのを待つことにした。
つづく。
事故である。
数年前の話。
季節は丁度今頃。
その日は仕事が長引き、帰宅したのは深夜2:00を回っていた。
いつもならその時間からは何も食さないのであるが、その日は小腹がすき
近所のコンビニへ何か食い物を仕入れに向かった。
コンビニへは徒歩で5分ほど。
いつもなら仕事帰りに車で寄るのだが、歩いていくことにした。
昼間は暑かったのに、この時間は肌寒い。
確実に、そしてゆっくりではあるが冬がやってきている。
道の反対側にはちょっとしたビルがあり、そこには スナック 居酒屋 などの店舗が
5~6店ほど入っている。
それら店も店じまいの時間のようで、3人のきれいな身なりをしたお姉さんたちが
店の前でタクシーを止めようと立っていた。スナックの従業員たちだろう。
職種は違えど、私もついさっきまで仕事をしていたので
「ご苦労様ですー!」
と心の中で挨拶をし、コンビニへと急いだ。
それから1~2分後に、冒頭の音がしたのである。
おっ! と思い振り向くと、タクシーとバイクが衝突したらしく、バイクは道路に横たわっている。
その傍らにも、2人の人影が転がっていた。
私は急いで駆け寄った。
先ほどの3人のお姉さんたちはすでに到着している。
私が到着するころには、道に倒れていた2人のうち1人は起き上がっていた。
どうやら軽傷のようだ。
タクシーの運転手は、119番に電話を掛けていた。
「おい、藤沢(仮名)!大丈夫か!!」
先に起き上がった兄ちゃんが、道に倒れている兄ちゃんに声をかける。
「うん、大丈夫だ。お前はどうだ?五十嵐(偽名)。」
藤沢(仮名)が答える。
「俺も大丈夫だ。」
五十嵐(偽名)が答えた。バイクに乗っていた2人だ。
「いっ、今、救急車が来ますから!」
タクシーの運転手が、ちょっと裏返った声で叫ぶ。
「たっ、タマをうってる可能性があるので、うっ、動かさないでっ!!」
運転手さん、相当ご乱心であらせられる。
タマ ではなく 頭 だろうに・・・。
道路に横たわっている藤沢君に声をかける。
「頭打った?。」
「はい、コツンと。でも大丈夫ですよ。なんともないです。」
「他に痛いところは?」
「ちょっと足を打ったみたいで・・・。」
私の問いかけに、はきはきと答える。
恐怖からなのか、寒さからなのか分からないが、藤沢君、小刻みに震えている。
「寒いの?」
「ちょっと寒いですね。」
大量出血している人が寒さを訴えたのなら一大事だ。
藤沢君にはそれらは見当たらないので、単に寒いだけなのだろう。
安心した。
意識はしっかりしているし、頭のほうは大丈夫だろう。
しかし念のため、救急車が来るまでは動かさないほうがいい。
幸い、藤沢君の倒れている場所は車道の歩道側だ。外灯の真下でもある。
後続の車からも十分に確認できるし、轢かれることはないだろう。
ヘルメットもはずさないことにした。
藤沢君には悪いが、もう少し我慢してくれ。
足のほうもたいしたことはなさそうだ。折れてはいない。打ち身のようだ。
よかった。
ふと周りを見ると、藤沢君と私の周りを数名の人が取り囲んでいる。
あのお姉さん3人組も、心配そうな顔をしてその中にいた。
私と藤沢君の会話をずっと聞いていたようだ。
その中の一人と目が合った。なんか恥ずかしくなった。
「お疲れ様でーす。」
などと挨拶をした自分が恥ずかしかったのかもしれない。
そっと、その場から離れた。
はて、どうしたものか。
ちょっと考えた。
このまま立ち去っていいものなのだろうか。
事故の目撃者でもなければ、通報者でもない。
警察が来たとしても、ただの野次馬と思われるだけだ。
それは私の本意ではない。
しかし、万が一、藤沢くんの症状が急変してしまうかもしれない。
その場合に対処できるのは私だけだ!。
医療従事者としての責任がある、私には。
取りあえず、救急車が来るのを待つことにした。
つづく。