その昔、現役で大学不合格になった直後に読んだ本が、これです。
その数年前からこの本は話題になっていましたが、ここに書かれていることに引きずられると却って悪影響だと思い、高校生の時にはあえて買わないようにしていたのです。
浪人が決定した直後、おそらくは大学合格発表の翌日くらいだったかと思いますが、本屋にこの本を買いに行ったのを覚えています。
大学に不合格になった時、不思議と悲しいという気持ちは起こりませんでした。
ただただ腹立たしい気持ちになりました。
今になって思えば単なる勉強不足だったのですが、当時の私は、周囲に邪魔をされて不合格になったという気持ちがとても強かったからです。
その一方で、浪人が決まった以上、もう学校からはあれこれ言われることはない、今度こそ本当に勝負できる、なんて気持ちもありました。
じゃ、自分にとってベストな方法を試してみよう、と思った瞬間に真っ先に思い浮かんだのが、この本でした。
多くの参考書は基本問題→練習問題→応用問題になっていますが、これに関し、この本には
- 分かりきっている基本問題を延々とやる必要はない
- かといって分からない難問を考えるのは時間のムダ
- なので、数学の問題は難問から読み始め、その解法を丸暗記すべし
このブログでも再三書いていますが、私は、管理教育の中高一貫校でひたすら算数の解法パターン暗記を実践し、高1で潰れてしまった経験があるからです。
その後は、これもブログに書いております通り、学校の勉強も人間関係も一切徹底ガン無視し、ひたすら通信添削の勉強のみをやる日々(←人には絶対にこんなことは勧めませんけど)を送りました。
その結果、高2までは成績が急上昇しました。
その意味において、算数のパターン暗記が有効だというのはウソです。
が、高3になって再び成績は下降しました。
今になってみれば、というか浪人時には既に気づいていましたが、その原因は演習不足です。
受験直前期になって演習を怠り、一問一問を時間をかけてウンウン唸って考えながら問題を解いていたのでは、得点に結びつかなくても当然だからです。
その意味においては、算数のパターン暗記というのは有効だということになります。
なので、私は、この本に書かれていること全てに納得したわけでも実践したわけでもありませんが、この本が私に力を与えてくれたのも事実です。この本を読んで、一年後には必ず合格できるという全く根拠のない自信を抱くことができたからです。
和田氏は、今でも色々な本を書いているようですが、どうやら他人の自己肯定感を高める文章を書くのが上手い方のようですね。書かれていること自体には6割くらいしか同意できないとしても、何だか読んでいると前向きな気持ちになれる不思議な文章を書く方だなあ、なんて思います。
大学受験ならともかく、小学生の子どもに「数学は解かずに解答を暗記せよ」をやらせるのは危険な気がします。
特に、低学年でこれをやらせてしまうと、中学受験の結果のみならず、その後の学習、ひいてはその後の人生にまで深刻な悪影響を及ぼすような気すらいたします。
でも、受験においては、「解答の暗記」的な要素がないと入試で得点できない、というのも否めません。その意味において、「解答の暗記」的な要素は、入試直前期になれば必要になのかもしれませんが、あくまでも、考えたり調べたりの勉強の土台がないと身につかないと思います。
中学受験も大学受験も、人生そのものと同様、「要領」は必要なのでしょうが、「要領」だけでは乗り越えられません。
人生には、その辺りをどう折り合いをつけていくのかが何回か試される機会があり、中学受験は、子どもにとってはその最初の機会かもしれない、なんて思いました。