以前に、東大・京大・早慶生の就職先として、コンサル会社が圧倒的な人気を博している、という記事を書いたことがあります。
我々の頃に人気があったのは、
- 大手都銀
- 政府系金融
- 商社
- マスコミ
- インフラ系(NTT, JR, 東京電力etc)
ですが、商社以外は就職ランキング上位からほとんど消えてしまっています。
- 大規模や金融再編
- インターネット普及による、テレビ・新聞等の大手マスコミの求心力低下
- クラウド普及による国内大手IT企業の衰退
- 生産拠点海外シフトに伴う日本の製造業全体の衰退
が背景にあると思われます。
もし、日本の若い世代にとって、魅力ある業種・職種がコンサル以外に存在しなくなっているのであれば、これは、彼らだけでなく、日本の産業育成という面で大きな問題を抱えているように思います。
「今の学生は消去法でコンサルを志望しているのではないか」 つまり 「とりあえず『コンサル志望』の学生が相当数いるのではないか」というのが気になるところです。
とりあえず稼げるし、格好よさそうだし。
でも、仕事はとてつもなくハードで、コンサル会社に就職出来たとしても、その中で生き残れるのはごく一握りです。
私も大手コンサル会社の方と何回か一緒に仕事したことありますが、かなりの無理難題をお願いしました。
自分でできる仕事をわざわざ高い金を払ってやらせようとする人はいません。自分ではできない仕事を頼むわけですから、コンサルには無理難題ばかりをお願いすることになるわけです。
それをやっていただくことに感謝はしているものの、厳しいダメ出しはせざるを得ませんし、リプレースも多い仕事です。
相手からのインプットを的確に理解し、相手が期待するアウトプットを提案書として的確にまとめあげ、質疑応答にも柔軟に対応する能力。
彼らを見ていると、素直にすごいなあ、って思います。
そして、自分にはコンサルタントなんて絶対に無理、だとも思います。
私のことなんてどうでもいいのですが、そもそも、今の日本の教育が、コンサル的な人材を育てるのには全く適していない、というのも気になるところです。
子どもの中学受験サポートを通して強く感じたのは、日本の教育は親世代の時と本質的には変わっておらず、「与えられたことをいかに早く的確にこなすか」に主眼が置かれている、ということです。
親世代に比べると覚えるべきことは確実に増えているし、それを覚えるためのテクニックは「進化」しているけど、それは「物量大作戦」という旧態依然たる勉強に拍車がかかっているだけであり、 子ども世代が新しい世界に順応するための教育にはなっていません。
これからの時代に求められるのは不確実性の高いもの(いわゆるVUCA)への適応力なのに、受験勉強で求められるのは、決まりきったこと、確実性の高いものへの対応力です。
それを理解せずに、受験勝者たちが、自らの適性を顧みることなしにコンサルタントの世界に飛び込むと、痛い目に遭う、つまりは「努力をすれば何だってできる」と思っていた彼らが初めて挫折を味わうことになります。
全てを投げ打って受験勉強をしてきた、あるいはさせられてきた彼らが突きつけられる現実がこれ。ここでのレジリエンスが低いと、ずっと挫折感を引きずったままの人生を送ることになります。
そもそもコンサルタントには向き不向きがありますし、受験勝者が高偏差値の学校を選ぶような感覚で就職先にコンサル会社を選ぶのは極めて危険です。
コンサルに限った話ではないのでしょうけど、学生時代に育むべきは、
「彼を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず」
・まずは自分自身(己)を知ること
・そういう自分は何がやりたくて、 何をすれば世の中(彼)に貢献できるのか
という感覚なのではないでしょうか。
だからこそ、子どもたちには、学生時代に受験勉強以外のこともたくさん経験し、こうした感覚を養ってほしい、と思うわけです。
社会に出るまでに、自分がどういう人間で、どういうことで社会に貢献できるのかがある程度見極められるようになれば、就職のミスマッチは減らせるように思います。