こんばんは!まずは皆さん、乾杯っ!![]()
今回は埼玉県幸手市の地酒、「豊明(ほうめい)純米大吟醸」をご紹介します。先日さいたまスーパーアリーナで開催された「彩SAKEフェス2026 ~呑んで埼玉~」で日本酒試飲会に行った際の続きとなります。
この試飲会、前回の記事にも書いた通り、前半は酒を飲まずにひたすら名刺交換に没頭し、全蔵の方とご挨拶が済んでからようやく一杯目。そこからは、気になった蔵のブースを順番に回っていく時間です。会場にはずらりと埼玉の蔵が並んでいて、どこから手を付けるか迷うほど。チケットは限られているので、一杯一杯を大事に選ばないといけません。
一杯目は小山本家の金紋朝日 大吟醸50をいただいたのですが、次に選んだのは飲んだことの無い蔵の酒にしようと思い、幸手市にある石井酒造の「豊明 純米大吟醸」を飲んでみることにしました。
石井酒造は、名前こそ聞いたことがあったものの、飲むのは今回が初めて。ブースには「お酒は、いい奴。」という大きなポップが掲げられていて、「お酒は、どんな時でも、寄りそってくれるいい奴」「楽しいときは喜びが増え、落ち込んだときは静かにそっと寄り添い」と続きます。酒蔵のメッセージとしてはかなり柔らかい言葉選びで、これだけで蔵の雰囲気が伝わってくるようでした。
知らない蔵の純米大吟醸を買うのは結構勇気が必要なので、こういう機会に飲めることは飲み手としてはとても貴重です♪ 720mlで3,000円を超える純米大吟醸を、味も知らずにレジに持っていくのは、下戸にはなかなかハードルが高いんですよね。試飲会は、そのハードルをチケット数枚で飛び越えさせてくれる場所。だからこそ「知っている蔵」より「知らない蔵」を選ぶのが、自分なりの試飲会の楽しみ方です。家の冷蔵庫にはすでに何本も控えているので、ここで飲んだ中から「瓶で買う一本」を決める、という意味合いもあります。
ちなみに、埼玉の蔵の記事は帝松や直実など少しずつ増えてきましたが、幸手の蔵は今回が初登場。まずはこの蔵のことから見ていきましょう![]()
豊明 純米大吟醸とは?
「豊明」を醸すのは、埼玉県幸手市南の石井酒造株式会社。創業は天保11年(1840年)で、初代は石井欣兵衛。幸手は日光街道と日光御成道が合流する宿場町として栄えた土地で、蔵は東武日光線の幸手駅から歩いて15分ほどの場所にあります。春には権現堂堤の桜と菜の花が有名な、あの幸手です。江戸から日光へ向かう旅人が行き交った町で、今も街道沿いに宿場の面影が残っています。
この蔵を語るうえで欠かせないのが、8代目の石井誠さん。お父様の体調不良をきっかけに、26歳という若さで社長に就任しました。大学時代に全国の酒蔵を巡り、卒業後は会社員を経験してから蔵へ。「私の代から酒は甘口に変えた」と語っているそうで、蔵の酒質の方向転換を自ら引っ張ってきた人です。2014年には、蔵人全員が20代というチームで純米大吟醸を造る「二才の醸(にさいのかもし)」をクラウドファンディングで実現し、目標金額を10日で達成。酒蔵自らのクラウドファンディングは当時初めてだったと紹介されています。翌年には同じ埼玉の寒梅酒造と同条件で酒を造って飲み比べる「埼玉SAKEダービー」も仕掛けるなど、とにかく動きが面白い蔵です![]()
蔵の理念は「一酔来福(いっすいらいふく)」。「一酔万笑」と「笑門来福」を合わせた造語で、飲む人のシーンや感情から酒質を逆算して設計するのが石井酒造の考え方だそうです。全盛期には約5,000石を造っていた蔵ですが、2000年に蔵を改築し、現在は500石に満たない小さな規模で、全工程を手作業で醸しています。ブースの「お酒は、いい奴。」のポップも、この理念から生まれた言葉なのでしょう。飲む人の気持ちから酒を設計する、という発想は、小さな蔵だからこそできる贅沢な造り方だと思います。
そして今回の「豊明 純米大吟醸」。名前の由来は、裏ラベルにそのまま書かれています。「このお酒を呑んだ方が『豊かで明るく』なるよう心を込めて醸したお酒です」。ラベルには「HO-MEI bounty & crystal」の英字と、菱形を組み合わせた蔵の紋。裏ラベルによると精米歩合は40%、アルコール分は15度で、原材料は米(国産)と米麹(国産米)。原料米の品種や酵母は公表されていません。価格帯の割にスペックを語らないあたりも、「数字より飲んだ時の気持ち」を大事にする蔵らしいところです。
蔵の説明では「軽やかな吟香。米の旨味を綺麗に乗せたコクのある味わいを意識して醸しております」とのこと。公式サイトでも「華やかな香りと、とろけるような優しい口当たり」と紹介されています。面白いのは裏ラベルの注意書きで、「ろ過に使用する炭の量を制限し、日本酒本来の色、風味を提供しています。そのためオリが沈殿する事があります」とあります。色を抜きすぎない、ということですね。石井酒造としては令和6年の全国新酒鑑評会で金賞、上位銘柄の「豊明 純米大吟醸 斗瓶雫取り」はKura Master 2026の純米大吟醸部門で金賞を獲得しているそうです。
豊明 純米大吟醸をチェック!
石井酒造のブース。
「お酒は、いい奴。」のポップの前に、結露した豊明 純米大吟醸。
白い蛇の目のお猪口に一杯。
色は薄黄色で、わずかに色が残っています。
裏ラベル。
精米歩合40%、アルコール分15度、製造者は幸手市南の石井酒造株式会社。
「豊かで明るく」の一文と、炭ろ過を控えている旨の注意書きがあります。
スペックは以下の通り。
| 銘柄 | 豊明(ほうめい)純米大吟醸 |
|---|---|
| 特定名称 | 純米大吟醸酒 |
| 蔵元 | 石井酒造株式会社(埼玉県幸手市南2-6-11・創業1840年) |
| 原材料 | 米(国産)、米麹(国産米) |
| 精米歩合 | 40% |
| アルコール分 | 15度 |
| 容量・製造年月 | 720ml(1800mlもあり)/2026年9月 |
| ろ過 | 炭の量を制限(オリが沈殿することあり) |
| 参考価格 | 720ml 3,300円/1800ml 6,600円(公式オンラインショップ・税込) |
| 飲んだ場所 | 彩SAKEフェス2026 ~呑んで埼玉~(さいたまスーパーアリーナ) |
豊明 純米大吟醸を飲んでみての評価
石井酒造のブースで、スタッフの方が結露した瓶から白いお猪口に注いでくれます。会場のざわめきの中、お猪口を目の高さに持ち上げると、薄黄色。炭ろ過を控えているという裏ラベルの言葉通り、ほんのり色が残っています。精米歩合40%の純米大吟醸で、度数は15度と控えめ。
「豊かで明るく」なれるかどうか、名刺交換の緊張がほぐれ始めたこの時間に、ちょうどいい一杯かもしれません。ポップの「お酒は、いい奴。」の文字を横目に、まずは香りから、ゆっくり確かめます。
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角のない甘さが、そっと寄り添ってくれる。「いい奴」の名に偽りなし。
まず外観と香り。薄黄色で、香りは穏やかなフルーティ。純米大吟醸というと、グラスから溢れるような派手な吟醸香を想像しがちですが、豊明はあくまで穏やか。リンゴや洋梨を思わせる果実の香りが、お猪口の縁から静かに立ち上がる程度です。蔵の言う「軽やかな吟香」という表現が、まさにぴったりでした。
口に含むと、舌先に甘みと程よい刺激。最初に感じるのはやさしい甘さで、その後ろから微かなピリッとした刺激が追いかけてきます。でもこの刺激がまったく尖っていない。角がなくまろやかなフルーティな果実感で、口の中で丸く転がるような感覚です。15度という度数の低さも、この丸さに効いているのだと思います![]()
中盤から後半にかけては膨らみがあり、含み香も気持ちいい。飲み込む直前に鼻へ抜ける香りが、口に入れたときの香りよりも一段華やかで、ここで初めて「あ、純米大吟醸だ」と実感します。米の旨味がじんわりと広がって、蔵の説明にある「米の旨味を綺麗に乗せたコクのある味わい」が腑に落ちました。
そして長い余韻が楽しめる。甘みと旨味が、舌の上にふわっと残ったまま、ゆっくりと消えていきます。キレで切るタイプではなく、余韻で魅せるタイプ。試飲会で何杯も飲むには少しもったいないくらい、一杯をじっくり味わいたくなる酒でした。度数が15度と控えめなので、余韻が長くてもアルコールの重さは感じません。
食事との相性を想像すると、この穏やかさなら白身魚の刺身、湯豆腐、鶏の塩焼きのような、素材の味を活かした料理が合いそうです。幸手はうなぎの店が多い町だそうですが、タレの濃いうなぎよりは、白焼きにわさびを添えて合わせたい。甘みがあるので、クリームチーズのような乳製品とも相性が良さそうです。
総合すると、「豊かで明るく」の言葉通りの、角のない優しい純米大吟醸でした。知らない蔵の純米大吟醸を飲む勇気を出して、本当に良かった。派手さはないけれど、飲んだ後に心がほぐれる感じがあって、ポップの「お酒は、いい奴。」というコピーが、飲み終わってから改めて効いてきます。評価は★★★。次は瓶で、家でゆっくり飲みたい一本です![]()
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今日は映画(邦画)でペアリング!
今回のペアリング作品は、2012年公開の映画『のぼうの城』です。和田竜の同名小説を原作に、犬童一心と樋口真嗣の二人が監督を務め、主演は野村萬斎。舞台は埼玉県行田市の忍城(おしじょう)。1590年、豊臣秀吉の小田原攻めの一環として、石田三成率いる2万を超える大軍が忍城に攻め寄せます。映画では守る側はわずか500ほどという設定(史実では領民を含めて3千人ほどとされます)。城代の成田長親は、領民から「でくのぼう」をもじって「のぼう様」と呼ばれる、一見頼りない男。その長親が、三成の「水攻め」に対してどう立ち向かうのか、という物語です。
共鳴ポイントの一つ目は、「埼玉の城と埼玉の酒」。忍城のある行田と、石井酒造のある幸手は、どちらも埼玉の東部。利根川水系の平野に広がる、水と田んぼの土地です。彩SAKEフェスの会場で「埼玉の酒を飲む」という体験と、埼玉を舞台にした歴史映画は、素直に相性がいい組み合わせだと思います。
二つ目は、「侮られた若い当主」という構図。のぼう様こと成田長親は、武芸も学問も人並み以下で、周囲からは頼りないと思われています。でも領民には不思議と慕われていて、いざという時に人を動かす力を持っている。26歳で蔵を継いだ石井誠さんが、周囲からどう見られていたかは分かりません。ただ、20代だけのチームで純米大吟醸を造り、クラウドファンディングで応援を集めた話を読むと、「人に慕われて、人を動かす」という点で、のぼう様の姿とどこか重なります。
三つ目は「角のない強さ」。この映画の長親は、刀で戦う強さではなく、相手の意表を突く柔らかさで大軍と渡り合います。豊明も同じで、派手な香りやキレで勝負する酒ではなく、角のないまろやかな甘さで、じわじわと飲み手の心を解いていく。「お酒は、いい奴。」というポップの言葉と、のぼう様の「いい奴」ぶりは、ほぼ同じことを言っているように感じました。
読者の皆さんへの提案としては、『のぼうの城』の水攻めの場面、映画で長親が小舟の上で田楽踊りを舞うあの名シーンに合わせて、薄黄色の豊明を一杯。堤に囲まれて水に浮かぶ忍城と、幸手の田園で醸された酒。埼玉の歴史と地酒を、同時に味わってみてください。観終わる頃には、きっと「豊かで明るく」なっているはずです![]()
下戸の酒好き評価点
※下戸の酒好き評価は味の良し悪しを計るものではありません。
下戸で酒初心者の私があくまで個人的な感覚で評価したものになります。
★★★
★★★ … 下戸にも酒初心者にもオススメしたい
★★☆ … 下戸、酒初心者に丁度良く幅が広がる
★☆☆ … 下戸、酒初心者には少し理解が難しい
豊明 純米大吟醸の価格&どこで買える?
さて、この「豊明 純米大吟醸」のお値段です。石井酒造の公式オンラインショップでは720mlが3,300円、1800mlが6,600円(税込)。2025年11月に価格改定があったので、以前より少し上がっています。精米歩合40%の純米大吟醸としては標準的な価格帯で、全工程手作業の小さな蔵の酒だと考えると、むしろ頑張っている値付けだと思います。
買える場所は、蔵の直販と公式オンラインショップが基本。蔵は幸手市南にあり、10時から18時まで営業していて、蔵見学は要予約とのこと。幸手市のふるさと納税の返礼品にもなっていて、豊明のセットが用意されています。特約店の一覧は公式には公表されていないので、埼玉の地酒に強い酒屋で聞いてみるのが早いと思います。上尾の須田商店のような、県内の地酒を丁寧に揃えている店なら出会えるかもしれません。
ネットで探す場合は、楽天市場やAmazonで「豊明 純米大吟醸 石井酒造」と検索すると、公式ショップや取扱店が見つかります。贈り物にするなら、Kura Master 2026で金賞を獲った上位品の「斗瓶雫取り」も気になるところですが、まずはこの定番の純米大吟醸から試すのがおすすめです。
彩SAKEフェスで出会った埼玉の蔵は、まだまだ続きます。知らない蔵の酒を飲む勇気が、新しいお気に入りを連れてくる。そんな体験をさせてくれた豊明に感謝しつつ、次の一杯へ。日本酒の購入のコツは日本酒入門の記事もどうぞ。皆さんも「いい奴」に出会ったら、ぜひ教えてください![]()
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