アンセルメのドリーブ
曲目/
バレエ《コッペリア》(抜粋)
1.前奏曲 - マズルカ
2.アンダンテ - ワルツ
3.No.7 Czardas Dance Hongroise
4.No.14 Scene Et Valse De La Poupee (Act 2)
5.Scene (No.15) - Bolero (No.16) (Act 2)
6.No.17 Gigue (Act 2)
7.No.20a Valse Des Heures (Act 2)
8.No.20g Danse De Fete (Act 2)
9.No.20h Galop Final (Act 2)
バレエ《シルヴィア》(抜粋)*
10.No.1 Prelude - No.4 Les Chasseresses (Act 1)
11.No.5 Intermezzo - No.6 Valse Lente (Act 1)
12.Pizzicati
13.No.17 Cortege (Procession) De Bacchus (Act 3)
指揮/エルネスト・アンセルメ
演奏/スイス・ロマンド管弦楽団
録音/1987/01、1959/04* ヴィクトリア・ホール ジュネーヴ
英DECCA SPA314
レコード時代はアンセルメとストコフスキーを中心にレコードを集めていました。当時はステレオ派でモノラルは全く興味がありませんでした。その点デッカは初期からステレオ録音をリリースしていましたから集めるにはもってこいのレーベルでした。日本ではキングレコードがロンドンレーベルで発売していましたが、商標権の関係でデッカレーベルは日本では発売されませんでした。そんな時、個人輸入がブームになり小生もその流れに乗ったのは当然のことでした。ただ、この一枚は卒業旅行でイギリスのHMVの本店で購入した一枚になります。
このジャケットデザインはこのシリーズだけのデザインです。日本ではバレエといえばチャイコフスキーしか上演されないような風潮がありますが、ヨーロッパ、特にフランスやウィーンではオペラ座で定期的にバレエが上演されています。そのなかでも湯張フランスは頭抜けてバレエの人気があります。作曲者のドリーブは「フランス・バレエ音楽の父」と呼ばれるほどです。「白鳥の湖」に代表されるロシア・バレエと人気を二分するフランス・バレエの古典的名作《コッペリア》はE.T.A.ホフマンの原作に基づき、自動人形に恋をした若者が巻き起こす騒動を描いたストーリー。作曲者のドリーブはパリを中心に活躍し、親しみやすいオペレッタやバレエ音楽を作曲して人気を博しました。それをバレエ音楽を得意とした「バレエ音楽の神様」アンセルメの、舞台のツボを心得た演奏が見事です。
アンセルメのデッカによる「コッペリア」は全曲盤とハイライト盤の2種類が残されていますが、耳慣れた旋律をまとめて聴くことができる抜粋の方がバレエの面白さをよく感じることができるのではないでしょうか。時に驚くほどスッキリと美音が立ち上りハッとさせられる一瞬があります。また管の掛け合いが素晴らしく、弦の美音を後押しするような管の合いの手をこんなに楽しく感じる演奏も珍しいです。このバレエの新録音はほとんどありませんからアンセルメのこの録音はいまだにトップレベルの演奏として愛重されているのではないでしょうか。
バレエ「シルヴィア」はヨーロッパでは先の「コッペリア」よりも人気が高く、演奏もより多く行われています。ただ、録音は少ないようで、ミシェル・プラッソンですらこの2曲は録音を残していません。
作品の良さはどちらも素敵な曲が揃っているのですが、管弦楽法がより洗練され、前奏曲から一層強まった劇的な作風と1曲1曲の持つ変化に富んだ味わいが増したことで管弦楽曲としてもより充実した事が影響しているのでしょうか。12曲目の「ピチカート」なんてきっとどこかで耳にしているはずです。アンセルメのこのハイライト版は演奏もリズムも素晴らしく、特に「シルヴィア」は音に色香が漂うような名演奏だと思います。
という事で、私は全曲にこだわらないのであればこの盤を選びます。


