第95回市民会館名曲シリーズ
〈和欧混交Ⅴ/外山雄三、山本直純とシベリウス〉
ロビーコンサート
シベリウス/弦楽三重奏のための組曲 イ長調 JS186 小川響子Vn,小泉理子Va,佐藤有沙Vc
珍しい曲でYouTubeには音源がありませんでした。4曲からなる小品ですから、ロビーコンサートでは全曲演奏されました。しかし、さすがナクソスですねぇ。しっかりとこういう曲までカバーしています。下をクリックして聴いてみてください、
名曲シリーズのコンサートと言っても今回はちょっと内容が凝っていました。昨年亡くなられた外山雄三氏は1981-1987年まで名フィルの常任式車検音楽総監督を勤めていました。名フィルが、外山雄三氏の交響曲『名古屋』を演奏するのは、なんと15年ぶりです! 前回は、角田鋼亮さんの指揮で、2010年1月17日(日)開催〈名古屋開府400年祭 オープニング記念コンサート〉でした。この曲はその常任だった1984年に地元の中京テレビの委嘱作として作曲されています。4楽章からなる交響曲で第1楽章は「笙」や「篳篥」の響きなど熱田神宮をイメージさせ、第2楽章ではチャイコフスキーの「悲愴」交響曲を連想させるメランコリックな旋律ねはたまたは、第4楽章では木曽三川に由来する民謡を題材にしたモチーフを使って「ラプソディ」の間奏部分をイメージさせる作りになつていました。またこの当時氏は名フィルと中京テレビでオーケストラ番組を持っていましたから、この番組で演奏することを目的としていたのでしょう。その作者自身の指揮する演奏が残っています。その第4楽章です。
23曲目は山本直純氏の作曲になる「児童合唱と管弦楽のための組曲『えんそく』」でした。
これも珍しい曲で、NHKの嘱託で「子どもの日の特集番組」のために1964年に作曲されたそうです。遠足に出かけた子どもたちが、山の鳥たちに出会い、お弁当の鰹節ごはんや炒り卵にわくわくして、おみやげは「足のまめ」という冒険物語になっています。今回は名古屋児童合唱団の約60名のことせもがステージ奥のひな壇に陣取り、立ったり座ったり、身振り手振りで遠足の楽しさを表現していました。ちようど春休みということもあり、今回は会場に児童の姿が多かったのも印象的でした。下は2017年の井上道義氏の演奏の模様です。
後半はオーソドックスなシベリウスの交響曲第1番が演奏されました。一時期小生はシベリウスの交響曲の中では一番気に入っていた曲で色々な指揮者の演奏を集めたものでした。シベリウスの交響曲は様式として4楽章の形で残されているのはこの1万と2番ぐらいです。その2番も第3楽章と第4楽章はアタッカで繋がっていますから、きっちりとした様式はこの1番だけです。
指揮者の川瀬健太郎はシベリウスが好きということでこの第1番を取り上げたようです。第1楽章からシベリウスの持つ透明感と澄み切ったようなひんやりとした音色がステージを包みます。冒頭のティンパニのトレモロの上でクラリネットが寂しげな序奏主題を奏でるところは演奏者にお任せでしたが、弦がトレモロで始まる主部に入るとアレグロに切り替わり、ぐっとテンポが上がってきびきびとした演奏で爆発します。シベリウスの音楽は、楽譜通りに演奏すると休止で音楽が物切れになる演奏が多いのですが、今回はそういう部分は全く感じられずずっと音楽が流れていました。
今回のプログラムはコンマスの独奏が随所に現れる選曲でしたが、音楽の流れを邪魔せずに心地よい響きがホールを包んでいました。第4楽章最後も静かに終わる曲なので、きっちり演奏が終わってから拍手が始まるという十分に音楽を楽しめる演奏になっていました。最近の名フィルはいい演奏が続いています。
このコンサートで首席ヴィオラ奏者の叶澤尚子さんは、今日が名フィル楽員としてのラスト公演でした! ということで終演後はステージで花束の贈呈もありました。下の写真は舞台裏でヴィオラ・セクション全員と、笑顔で記念撮影のものです! 12年間、お疲れさまでした。
さて、2027年にはアジア競技大会が愛知県で開催されますが、以前常任を務めていた福村芳一氏は今はアジア圏で頑張っていますから、ぜひとも客演で一度登場してもらいたいものですなぁ。