東京ステーションギャラリー
東京駅の中の美術館
出版:東京美術
美術館の魅力を1冊に凝縮し多角的に紹介した「まるごと美術館ガイド」シリーズの第3弾!重要文化財「東京駅」のなかで特異な存在感をもつ美術館の見どころをまるごと収めた充実のガイドブックです。創建時の面影を残す重厚な空間が伝える100年の時の流れ、そして100点を超えるコレクションを網羅しています。コレクションは、独自の視点で発掘された近代美術、自由な表現が魅力の現代アート、駅や鉄道と関連の深いテーマを扱った作品を柱としており、その全貌を紹介するのは本書が初めてです。東京観光で見逃せないアートスポットとして、世界的にも珍しいエキナカ美術館の魅力が詰め込まれています。
今回の東京行きを決めたのはこの本と出会ったことも大きく影響しています。東京駅の中に美術館があることは全く知りませんでした。この本、特に表紙には編集者や著者の記載はありません。ただ、奥付けには監修・著・編集として、東京ステーションギャラリー、富田章、田中晴子、柚花文、成相肇、半澤紀恵、羽島綾と言う名前が記載されています。もともと、本書は東京ステーションギャラリーにおいて開催の「鉄道絵画発→ピカソ行 コレクションのドア、ひらきます」展(2017年12 月16日ー2018年2月12日)の公式図録兼用書籍として刊行されたという経緯があります。
本書の構成です。
目次
はじめに
東京ステーションギャラリーを歩く
PART 1??東京駅丸の内駅舎の歴史をひもとく
東京駅100 年のあゆみ
探検!発見!東京ステーションギャラリーの見どころ
常設展示で学ぶ東京駅の歴史
[鼎談]1 活用されている文化財、東京駅
PART 2??鉄道絵画発→ピカソ行 コレクションのドア、ひらきます
始発駅| 鉄道絵画
2駅目| 都市と郊外
3駅目| 人
4駅目| 抽象
終点| ピカソ
[鼎談]2 独自性の強い展覧会とコレクションが魅力
企画展の記録 1988 年?2017 年
インフォメーション
[寄稿]
積層した歴史をデザインする 田原幸夫
21 世紀の東京のシンボル 藤森照信
駅のなか、世界のまんなか 原田マハ
東京ステーションギャラリーが開館したのは、1988年、国鉄民営化の翌年のことです。丸の内駅舎の1部を改装した。展示室は2階にあるのに昇降機がなく、展示街の旅に作品を担いで、階段を上り下りしなければならない状況でした。コレクションもなく、スタッフも充分な人数がいない中、それでも多くの方々の協力を得ながら、2006年に東京駅復元工事のために休館するまでの18年間に105本の展覧会を開催し、延べ約235万人の来館者を迎えたそうです。
2012年10月10月にリニューアルオープンしたこの新しい東京ステーションギャラリー、どちらかと言うと、現代芸術主体の展覧会で、古風な建物の壁面とは対照的な存在でもあります。
美術館活動の柱として、「近代美術の再発見」「現代アートへの誘い」「鉄道・建築・デザインとの出会い」を掲げ、国内外を問わず、近代美術を中心に、鉄道、建築、現代アート、デザインまで幅広いテーマで展覧会が開催されています。
今回の丸の内駅舎の工事は、失われた建物を全く同じ姿に作り直す『復元』ではなく、既存の建物を土台にしながら戦争によって失われた3階部分を復元、創建当時の姿に戻そうというプロジェクトでした。この先100年間使い続けられる建物を目指して、創建当時のまま残る1-2階を中心とした建物を保存、補強しながら、地下を新設して免震装置を作りました。今回の工事では原型(オリジナル)を基本として創建当時の姿に戻したのだから復元ではない。そういった関係者一同の思いを込めて、『復原』とあえて表記しています。
1914(大正3)年、建築家の辰野金吾により設計された東京駅は、過去の100年を受け継ぎながら、これからの100年を目指す東京駅駅舎の「復原」工事には関係者のそんな思いが込められていたんですね。そして、東京ステーションギャラリーもその思いを引き継いでいるといえます。
この本は東京ステーションギャラリーを紹介しながら、東京駅の原光寺の模様までも詳細に記載しています。そういう意味では貴重な本なのでしょう。小生もここに描かれる2階の回廊ギャラリーで、旧東京駅の骨組みの1部が展示されているのを初めて知りました。そんなことにも興味があって、ここの東京ステーションギャラリーにいちど行ってみたいと思ったものです。今回の訪問ではちょうど宮脇綾子の展示会が開催されていました。現代絵画とは違うちょっと異色な存在の作家ですが、多くの女性の心に響いたのか、連日大盛況だったようです。そんなことで明日の記事では今月16日まで開催されている、この宮脇綾子の展示会の模様を取り上げてみたいと考えています。