ベニスに死す/オリジナル・サウンドトラック盤 | geezenstacの森

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ベニスに死す/オリジナル・サウンドトラック盤

 

曲目/

1.マーラー:交響曲第5番~アダージェット   9:32

2.ベートーヴェン:エリーゼのために   4:03

3.ムソルグスキー:子もり歌   2:24

4.マーラー:交響曲第3番第4楽章より*   11:24

5.ジル:新しい歌   2:53

 

ピアノ/クラウディア・ジジ 2

コントラルト/ルクレチア・ウェスト 4

指揮/フランコ・マンニーニ

演奏/ローマ聖チェチーリア音楽院管弦楽団

 

録音/1971

キング KICP399(原盤BEAT)

 

 

 映画「ベニスに死す」と言えば、ご存知マーラーですが、さすが、レコード時代のサントラという事で、30分弱の収録しかありません。また、今のようにロンドン交響楽団が演奏するとかもなく、オーケストラこそは名前を聴いたことがありますが、指揮者は無名です。だ、映画に思い入れがある人には、有名指揮者の他のマーラーのCDと聴き比べてみても、このサントラ盤の演奏が聴き劣りすることはありません。多分映像とリンクしているからでしょう。

 

   まず1曲目…メインテーマの「アダージェット」…目を閉じるとグスタフ(主人公)が登場する、あの印象的なシーンが鮮明に浮かんで来ます!クラシック音楽は、聴き比べると良くわかるのですが演奏者や指揮者が違ければ、まったく違うテイストになりますからねぇ。さすがは審美眼に定評のあるルキーノ・ヴィスコンティ監督が選んだ良く出来た演奏だなぁ…と思いました。しいて難を言えば、曲数が少ない(6曲)…まぁこれはサントラだから仕方ないですかね。この映画が公開された当時は、トーマス・マンの原作を知らず、本来は作家の設定が映画では作曲家に変更されていて、それこそマーラーその人の自伝の映画化と勘違いしていました。1971年といえばまだ、マーラーなんて、交響曲第1番の「巨人」を聴きかじっていた頃で、ほぼ未知の作曲家でしたからねぇ。

 

 

 マーラーは、指揮者としての活動が忙しく、夏休みに湖畔の別荘にこもり 作曲をしていたそうです。「交響曲第5番」は1901年夏にスケッチされ、翌年1902年の夏に完成しました。完成するまでの一年の間に、マーラーは20歳年下のアルマと出会い結婚しています!監督のルキノ・ヴィスコンティはこういうイメージをこの映画で取り入れていたのでしょう。で、作家から作曲家へ置き換えに成功しています。ただ、この映画のせいで当時はマーラーはホモだったと思い込んでいました。(^^;;

 

 2曲目は美少年タジオが、『エリーゼのために』の冒頭を繰り返しピアノで演奏していました。シーンが切り替わり、売春宿でのシーンでは娼婦が演奏している設定でしたね。また、3曲目の海辺で女性が歌を歌うシーンで流れた 曲は、ムソルグスキーの「子守唄」です。すっかり人が減ってしまったビーチで、一人の女性がこの歌を歌っています。

この曲は、19世紀ロシアの作曲家モデスト・ムソルグスキーが1875年に完成させた歌曲集『死の歌と踊り』の第1曲の『子守歌』です。ムソルグスキーの友人で詩人のゴレニシチェフ・クトゥーゾフの詩がつかわれていて、病の幼児のところにやってきた「死」が子守歌を歌い、母親の抵抗むなしく幼児の命を奪っていくという内容が描かれています。ここではグスタフの死を暗示するように使われていました。

 

 アッシェンバッハがビーチで筆を走らせるシーンで流れた 曲は、マーラーの交響曲第3番の第4楽章です。アッシェンバッハがビーチで遊ぶタジオを眺め、筆を走らせるシーンからホテルで夕焼けを眺めるシーン、そして再びビーチでタジオを追うシーンで流れています。このシーンでは第4楽章が使われています。この楽章には、ドイツの哲学者ニーチェの著作『ツァラトゥストラかく語りき』の第4部の詩を歌詞としたアルト独唱が導入されています。それにしても、ここでアッシェンバッハを演じたダーク・ボガードは印象的でした。ボガードは長い間マネージャーのアンソニー・フォーウッドと同居し、一度も結婚しなかったため、ゲイであると噂されていたということでははまり役でした。

 

 ラスト近くでは民謡楽団がアルマンド・ジルの「カンティ・ヌーヴォ(新しい歌)を演奏しています。この曲は、このサントラ版じゃないと聴けないです。…と言うわけで、まずまずの出来かなぁと思いました。

 

 

 

 この映画でマーラーの交響曲第5番の第4楽章のアダージェットがいきなりクローズアップされました。主演はアッシェンバッハを演じるダーク・ボガートでしたが、それを喰ってしまったのが美少年でした。映画に登場したこの美少年、ビョルン・アンデルセンはその後数奇な運命を余儀なくされます。詳しくはリンクをクリックしてくださいな。

 

 
 この映画では麻辣の5番だけがやけにクローズアップされましたが、実際には第3番の第4楽章も使われていました。

 

 

 そして、このサントラのフルアルバムです。