ドゥダメル ハービー・ハンコックのガーシュイン | geezenstacの森

geezenstacの森

音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

ドゥダメルxハービー・ハンコックの

ガーシュイン

 

曲名/
1.キューバ序曲 / Cuban Overture 

2.パリのアメリカ人 / An American in Paris 

3.ラプソディ・イン・ブルー / Rhapsody in Blue

指揮 /グスターボ・ドゥダメル

ピアノ/ハービー・ハンコック
演奏 /ロサンジェルス・フィルハーモニック
収録 /2011 年9 月27 日  ウォルト・ディズニー・コンサート・ホール

 

 

 これまでにも、小澤征爾とベルリンフィルのマーカス・ロバーツ・トリオのガーシュイン、キース・ジャレットやチック・コリアのモーツァルト、ジョン・ルイスのバッはなど、このブログではクロスオーバーに取り上げていますが、今回初めてハービー・ハンコックです。ハービー・ハンコックはテクノ時代に「ロック・イット」などのヒットを放っていますが、その彼がガーシュインを演奏したというのでチェックしました。ドゥダメル/ロス・フィルとの共演というのもいいですねぇ。

 

 

  ハービー・ハンコックは、1998年 第41回グラミー賞を受賞したアルバム「ガーシュウィンの世界」を世に送り出している経緯があります。ちなみにガーシュウィンはストラヴィンスキーやラベルに教えを請いにいったところ、逆に「こちらが教えてほしい」と言われたという。クラシック・ジャズを越えた天才ですな。ハンコックは彼の世界を、ハンコックなりのガーシュウィンの世界を繰り広げてくれています。ちなみにハンコックは11歳でシカゴ交響楽団と共演し、天才少年と言われながらジャズに転向した経緯があります。

 これは2011年9月27日、ウォールト・ディズニー・コンサートホールで、ドゥダメル率いるロサンジェルス・フィルハーモニックとの共演が話題になったものです。特に最後の「ラプソディ・イン・ブルー」はジャズメンとクラシックオーケストラのジョイントがよく知られるところだが、このふたりの共演は夢のような組み合わせです。まあ、正規の録音では実現は難しいでしょうね。

 

 ドゥダメルは200年にドイツのバンベルクで開催された第1回グスタフ・マーラー国際指揮者コンクールで、弱冠23歳で優勝し、一躍脚光を浴びる存在になっています。2008年にアメリカの名門オーケストラ、ロサンジェルス・フィルハーモニックのシェフになり15年以上も努めています。最近は2026年からニューヨーク・フィルに転出と決まっていますからこの組み合わせももう少しですな。個人的にはメータの二の舞にならんことを祈ります。


 ドゥダメルもハンコックもクラシックの枠を越え、自分のスタイルを持っています。ラテン・アメリカ的乗りはカーシュインにはもってこいでしょう。このプログラムでは最初にガーシュインの「キューバ序曲」です。「キューバ序曲」は、当初は「ルンバ」と呼ばれていたようにルンバのリズムを持つ演奏会用序曲として作曲されています。3部構成で、冒頭からラテン音楽のリズムによる音楽が登場し、すぐにボンゴやマラカス、ギロなどの打楽器群が加わる楽しい曲です。ぼうとうからオーケストラもノリノリでソロのリフはジャズっぽく、いい味を出しています。

 

 それにつづいて「パリのアメリカ人」が演奏されています。こちらもドゥダメル以下楽しそうな演奏で引き込まれてしまいます。

 


 後半はいよいよハービー・ハンコックが登場して「ラプソディー・イン・ブルー」です。冒頭から彼がハンコックのピアノを聴く姿には尊敬の念が現れ、ハンコックも弾きながら楽しくてしょうがないという表情をしています。この「ラプソディ・イン・ブルー」のソロ・パートを奏ではじめた彼の右手首を見ると、その手首には、赤と白のリストバンドがはめられており、よく見ると、そのリストバンドには、「HOPE FOR JAPAN」、「5.11 Herbie Hancock…」と書かれているのが確認できます。このリストバンドは、2011年の5月11日、福岡で開催されたハービー・ハンコック・コンサートで使用されたリストバンドなんですなぁ。そのリストバンドをこのコンサートのためには身に付けていたのです。彼のその心意気というか優しさが、「ラプソディ・イン・ブルー」という軽快かつ荘厳な雰囲気を併せ持つ楽曲に見事に溶け込んで、果ては会場を喝采の渦へと巻き込んでいます。

 

 

 記憶にあるのは、3.11東日本大震災が発生し、いち早く行動に移したのは、やはりロサンゼルス居住のJAZZミュージシャンたちで下。彼らは、東日本大震災救済のために、新録音での『JAZZ FOR JAPAN』というアルバムを制作しています。ハービー・ハンコックはこのアルバムの録音に参加はしていないものの、彼の代表作である「処女航海」を提供しています。

 

 

 ここでの演奏は、面白いです。思うままに遅くしたり走ったりのテンポ設定で、好きなだけ間を空けます。途中で止まりそうに怠けたり、突然スキップした り、茶目っ気たっぷりというのでしょうか。叙情的なところで大胆にスローダウンしてうんと静かにやるきれいさはあったりするものの、これはもう、ガーシュウィンというカンバスの上で安心して楽しいお絵描きをしてるのであって、理屈抜きで一緒に楽しむのが最善です。指揮者のドゥダメルもピアノ独奏の部分で 「なんか気になるぞ」というようにだんだん彼の方に体を傾けて来て覗き込んだり、「ほう、そうやる?」と驚いた顔をしてみせたりニヤけたりで、その打ち解けた姿はご機嫌なときのジャズマンのようです。