第94回市民会館名曲シリーズ
〈和欧混交Ⅳ/矢代秋雄とフランス音楽〉
曲目/
▊ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
▊ 矢代秋雄:ピアノ協奏曲*
アンコール 大澤壽人(ひさと):富士山
▊ ラヴェル:古風なメヌエット
▊ ドビュッシー:夜想曲より第1曲「雲」,第2曲「祭」
▊ ラヴェル:バレエ『ダフニスとクロエ』第2組曲
- ロベルト・フォレス・ベセス(指揮)
- 田所光之マルセル(ピアノ)*
- 山本友重(コンサートマスター/名フィル特別客演コンサートマスター)
謎のまま、いつもの2階の正面に陣取りました。紹介された作曲者はシュニトケでした。この作品をチェリストの加藤泰徳氏が編曲したバージョンで第1楽章と第2楽章が披露されました。まあ、こちとら初体験ですが、シュニトケの名前を最初に知ったのはクレーメルがベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲の演奏で彼のカデンツァを演奏したときです。まあ現代音楽の作曲家ですからサウンドは推して知るべしです。作品は本来はガッサウ用の作品ですが、ここでは弦楽四重奏用に編曲されていました。なを、この曲は3月の音楽プラザのサロンコンサートでも披露されるそうです。
今回のオーケストラの配置はこんなふうになっていました。これは後半のプログラムのものです。ピアノは見切れていますがね右上手に置かれています。
曲目ごとの演奏者は以下のリストです。
今月の名フィルは定期公演もロベルト・フォレス・ベセスでした。まだ40代の指揮者で、音楽監督・首席指揮者を務めたオーヴェルニュ国立管弦楽団とともに仏アパルテ・レーベルへ多くのレコーディングを残しています。ラ・フォル・ジュネルでは常連のように登場していますし、Aparteからは、吉野直子をソリストに立てたハープ協奏曲集がリリースされています。ロドリーゴ《アランフェス協奏曲》ハープ版、カステルヌオーヴォ=テデスコ《小協奏曲》、ドビュッシー《神聖な舞曲と世俗的舞曲》、トゥリーナ《主題と変奏》などが収録されていました。プログラム前半はドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」で始まりましたが、ちょつと練習不足が感じられました。その前週の17、18日に世界初演の曲目があり次の週にこのプログラムですからスケジュールがタイトだったのでしょうか。リストを確認すると前半のプログラムはホルンの主席の安土さんが出ていません。ちよっと音程の安定感に欠けていました。
今回のコンサート、やけに学生の客が多いなぁと感じていたら、それもそのはず、ピアノの田所光之マルセル氏は名古屋の菊里高校の出身ではありませんか。母校の応援の学生が大挙して来館していたということでしょう。ほぼ満席でした。曲目は矢代昭雄のピアノ協奏曲でこちらも小生は初めて聴く作品でした。作曲中「ピアニストは2本の手を持っているのではなく10本の指を持っているのだ」という先達の言葉を意識したとの矢代の言葉通り、全曲を通してピアノパートには高度な名人芸が要求される作品で、和音よりも単音の響きの重なりが東洋的な旋律の上を交錯していく作品で、このピアニストの将来性に期待が持てそうな演奏でした。アンコールも邦人の大澤壽人の「富士山」という作品でなんともコンテンポラリーな響きに包まれた演奏会になりました。
名フィルがこの曲を演奏するのは、50年前この曲を初演した中村紘子さんと共演した以来という演奏会でした。下は初演をした中村紘子のピアノ、森正指揮のNHK交響楽団の演奏です。
写真は、指揮者と菊里高校の憧れの先輩であるコンサートマスターの山本友重さん
後半はプログラムのフランス音楽ということでドビュッシーとラヴェルの曲目が並びました。指揮のフォレス・ベセスは指揮棒を使わずに指揮するタイプのようで、細やかな表情付でオーケストラをドライブしていました。後半のプログラムはホルン主席の安土さんの登場でぐっとオーケストラが引き締まり、安定した響きで上質なフレンチサウンドがホールを埋め尽くしました。
終演後は、会場のあちこちからブラボーの歓声が上がり、演奏会の完成度の高さがうかがい知れました。