ブルックナー・イヤーを振り返って 2 | geezenstacの森

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ブルックナー・イヤーを振り返って 2

 

 ブルックナーの作品解釈へのパイロットとしての一文が前田昭雄氏の特集に置かれていました。どうも時期を同じくして奥さんの和子さんを亡くされたようです。そんなことで、サブ・タイトルが「逝きし妻への挽歌」となっているのでしょう。

 

 

 この号には土田英三郎しのブルックナーの宗教音楽家としての出発点から辿る作品の変遷を辿る一文も掲載されています。

 

 

 ブルックナーの響きはオルガンの音の広がりをオーケストラに置き換えているようなところがあります。それはブルックナーサウンドとしての弦楽器のトレモロによる原始雲の響きや、フォルテにおける金管の響きにもその様が現れています。先に、ウーヴェ・ムント氏の解釈によるどの版によってもブルックナーの響に変わりがないという発言がありましたが、いろいろな版を聴き込むことによって、少しづつその意味が最近分かってきたように思います。

 

 現在よく演奏されるのは1878/80年稿を元にしたハース版あるいはノヴァーク版の第2稿ですが、ここで取り上げているデ

ニス・ラッセル・デイヴィスが録音したのは1874年作曲のノヴァーク版第1稿です。これは普段聴きなじんでいる第2稿と内容が大きく異なっているのが分かります。特に第3楽章は全く別物と言っていいほどに違っていて興味深いですが、第1楽章にしても聴き慣れた主題も今聴くものとかなり違っています。つまりは全曲に亘って作曲家の試行錯誤の痕跡が残っていてギクシャク感がないわけではないが、これもブルックナーがたどった足跡というべきもので、初稿ならではのフレッシュな魅力も持っていいといえます。まあ一度聴いてみてください。まあ、小生としてはSFで言うところのパラレルワールドのブルックナーが作曲した「交響曲第4番a'」という別の作品の感覚で聴くようにしています。この音源はYouTubeにはなぜかアップされていませんでしたから久しぶりにアップしてみました。また、手元にあるCDは初出時のデザインです。