泥絵で見る大名屋敷
監修・執筆 平野 聖
執筆 浅野信子
出版:(株)学習研究社
泥絵ー泥絵の具を使い遠近法によって描かれた肉筆画。幕末に江戸みやげとして評判を呼んだ泥絵を収録。渡辺紳一郎コレクションを中心に初めて本格的に紹介。今甦る幕末の大名屋敷。---データベース---
浮世絵とほぼ同時代に作成された「泥絵」と言われる絵画。泥絵の具と西洋の遠近法を使って描かれたため、多くの人に受け入れられることなく世から消えてしまいましたが、本となってよみがえりました。描かれているのは主に大名屋敷で、版画でなく手書きの一点ものです。青く広い空の下、堂々と立つ大名屋敷。絵と、参考として掲載されている写真、地図などから、江戸の町並みを楽しく想像できます。
目次
泥絵編
西の丸大手前
日本橋
大手前姫路藩酒井家上屋敷
霞ケ関広島藩浅野家上屋敷・福岡藩黒田家上屋敷
霞ケ関登城広島藩浅野家上屋敷・福岡藩黒田家上屋敷 ほか
概説編
埋もれていた泥絵
江戸の大名屋敷
「泥絵」という言葉をはじめて、本書で知りました。泥絵と言う名称は、美術全集ではほとんど見ることがありません。全くと言っていい位です。泥へのと呼ばれるのが安い絵の具で書いた絵画ということですが、それ以上に明確な特徴があります。それは西洋から入ってきた遠近法による絵であると言うことです。そのような絵は、浮世絵メガネと呼ばれていて、肉質の家や同伴が木版画にもありますが、それは同じ幕末と言う範囲に限っても、それぞれそれぞれの範疇に遠近法による絵もあると言う程度です。これに対して銅得は100%遠近法を意識したと言うことです。
「泥絵具(どろえのぐ)」という舞台装置の背景などを描くような安い絵の具で描いた絵画だそうです。
この本は、そうした、江戸時代の幕末においても当時の江戸の大名屋敷を描いた「泥絵」に対して、体系だった初めての本です。
渡辺紳一郎さんというコレクターが、パリを中心としたヨーロッパで購入されわが国に持ちかえってこられたものです。浮世絵と違ってすべて肉筆です。
こ
の本に掲載されている泥には共通の特徴があります。すべて肉質で版画ではないのです。空の青建物の灰色と白門に塗られる、赤、木々の緑、道の茶色、水の青などの主張は、柄を除いて、ほとんど共通しています。作者の名のないものがほとんどですが、中には楽観があるものもあります。内容も建物には力を注いでいますが、風景人物は顔もなく、累計化され人間であると言うことがわかる程度です。
これらの泥は渡辺信一郎コレクションの中に上方泥絵として分類されているもの有るそうで、人として上方の風景を描いています。それら上方泥絵は人物をしっかりと描いているので、明らかに江戸の泥絵は違っているようです。今度は上方の泥絵も見てみたいものです。
今は見ることの出来ない江戸の町並みや、大名屋敷の跡と、東京の現在の街との照合をはじめ、いろいろと勉強させていただくことが多い良書でした。歴史好き、美術愛好家にオススメします。