愛知県立芸術大学管弦楽団
第35回定期演奏会
指揮/秋山和慶
演奏/愛知県立芸術大学管弦楽団
このコンサートは11月27日が「愛知県民の日」ということでその一環として連携事業として開催されました。
愛知県文化振興事業団では、時代を担う子どもたちに舞台芸術の魅力や劇場の楽しさに直接ふれてもらう取組みとして、「劇場と子ども7万人プロジェクト」を2015年度からスタートさせています。これまでに市町村や教育委員会などと連携し、愛知県芸術劇場との共催、独自に観賞事業などに取組む市町村とパートナー宣言を締結しプロジェクトを推進。現在では、名古屋市をはじめ16市町村とパートナー締結しています。そこで、今年は小学1年生以上高校3年生以下が招待されています。
今回のコンサート、今年度から愛知県立芸術大学の客員教授となった秋山和慶氏で今年は指揮生活60周年の記念の年となっています。
最近は定着してきていますが、プロのオーケストラは入場すると自席で立ってコンマスの登場を待ちます。そして、コンマスが登場し揃ったところで全員が礼をし、着席します。このマナーがようやくアマチュアオーケストラにも定着してきました。これだとこちらの方も拍手で迎える気持ちも納得のいくものがあります。
さて、前半はプーランクの組曲「牝鹿」と、R.コルサコフの「スペイン奇想曲」です。お粗末な話ですが、同じフランスの作曲家として昔、クープランのつもりで間違えてこのプーランクの「牝鹿」のレコードを購入してしまい。なんて難解な音楽だろうと戸惑ったことがあります。その演奏はプレートル指揮のパリ音楽院管弦楽団の演奏でしたが、こんなものでした。この録音はこの曲の代表的な録音という意味ではかえってよかったのかなと思えますが、今回の秋山氏の指揮も指揮台に上ると間髪お入れないタイミングで指揮棒を振り下ろしました。そして、的確な指示でぐいぐいと音楽を作っていきます。個人的にはこの曲が学生の才気煥発な反応もあり一番纏まっていた様な気がします。
2曲目はオケとしても何度も取り上げている安心感みたいなものが感じられ余裕の演奏といった雰囲気がありました。ただ、音楽的には置きにいっているような印象もあり、才気煥発な演奏というイメージからはやや遠かったかなぁ。という印象でした。下は広島交響楽団を指揮した時の演奏ですが、似たような印象です。そつのない演奏ですが音楽の楽しさがあまり伝わっていないような気がします。
それに比べてこちらの演奏はどうでしょう。いかにも音楽わ楽しんでいるという空気が伝わってきます。
休憩後はベルリオーズの幻想交響曲です。スペインの音楽では情熱や熱狂というものが一つのキーワードになりますが、ベルリオーズの幻想交響曲はそれよりも計算された知的なクールさが求められます。そういう意味では、やはり秋山氏にはぴったりの曲ではないでしょうか。このコンサートでは一つ特徴があり、指揮者は上手から登場です。下の写真は終演後のものですが、ここでも右手に秋山氏は立っています。ベルリオーズ「幻想交響曲」では、秋山さんは、斎藤メソッドの鏡とも言える的確な棒振りできっちりと指示を出していきます。今回の演奏では舞台上にチューブラーベルがありませんでした。大太鼓が2つありますが、左の太鼓を叩いていた彼女が一旦左袖に引っ込み、回り込んで右側の舞台奥に設置された鐘を鳴らしていました。ただ、最後の一発はミスして掠れていましたけどね。さらに、第3楽章では牧歌の旋律はコーラングレ(イングリッシュホルン)と舞台裏のオーボエによって演奏されるのですが、これがまたいい効果を生み出していて、まるで天国からの響きのように聴こえていました。最後までエネルギッシュな指揮ぶりで、全く年齢を感じさせません。賑やかな第5楽章でも、騒騒しい感じがしないのは、響きのバランスが整っているからだろうと思いながら聴いていました。オーケストラはホルンがやや音を外すアクシデントはありましたが、最後まで聴かせる演奏でこれはやはり、指揮者の力量でしょう。いい演奏を聴くことができました。今回はアンコールはありませんでした。これが本来の演奏会でしょう。