オペラ2
オークションで処分したレコード 18
1970年代後半にはオペラの全曲盤が各社から大量に廉価盤で投入されました。時代は1300円が主流でしたが如何せん廉価盤です。歌詞対訳がついていないというオペラとしては片手落ちでの発売でした。しかし、中にはちょいと高くても、歌詞対訳をつけるというメーカーも出ました。それがこの東芝EMIの「ドイツ・ロマンティック・オペラ・シリーズ」でした。初出は1972年でその時はPTSクリアーサウンド盤で発売されています。レギュラー盤は4,000円でしたから1,000円安くなっただけですけど、大学生協なんかで買うと2割引でしたからかなり安く買えたわけです。
マタチッチの「メリー・ウィドウ」もそんなセットでした。 これは完璧な演奏です。まず、主役のシュワルツコップとゲッダがすばらしい。脇役陣も魅力的な歌唱です。でも、なによりびっくりするのはマタチッチの指揮です。ブルックナーなどの大曲を指揮するイメージの強いマタチッチがここでは艶っぽく、退廃的なムードを醸しながらも気品を失わない何とも魅惑的な指揮ぶりです。また、これにこたえるフィルハーモニア管弦楽団の音が何ともすばらしい。カラヤンのバラの騎士でもそうですが、ここでのフィルハーモニア管弦楽団はウィーン・フィルよりもウィーンの雰囲気がします。
これに対して、ロンドン・デッカのシリーズは歌詞対訳が付いていませんでした。でも、演奏は一流でしたし何よりもソニック・ステージといわれるぐらいに音がよく舞台を彷彿させる録音はイメージを掻き立ててくれました。ただ、これはまだステレオの試験段階の録音でオロフが録音を担当していました。1954年の録音ですが、デル・モナコは後年の変な癖もなく、圧倒的に輝かしいオテロを聴かせます。テバルディの瑞々しさも格別だし、過小評価されがちのプロッティも素晴らしく脇役もカッシオのピエロ・デ・パルマをはじめ充実しています。オペラ指揮者のエレーデの指揮も申し分ありません。オケがちょっと弱いのが難点でしょうか。そうそう、アルベルト・エレーデは1977年の最初の海外旅行でウィーン国立歌劇場で最初に本格的なオペラを聴いた最初の指揮者でした。その時の演目は「トスカ」と「椿姫」を楽しんでいます。
戦後のイタリア・オペラ界のゴールデン・コンビ、テバルディ/デル・モナコと、著名なドラマティック・ソプラノのインゲ・ボルクを配しての歴史的名盤。清楚で可憐なテバルディのリューもさることながら、ヒロイックで情熱的なデル・モナコのカラフも聴きもの。今やパヴァロッティの十八番ともなった〈誰も寝てはならぬ〉、フル・オーケストラの大音響を突き抜けるモナコの強靱で迫真的な歌唱は、パヴァロッティとはまた違った趣があります。 これも1955年とオテロの翌年の録音です。
このシリーズではカールショーではなくオロフ時代のエレーデと組んだイタリア・オペラが大挙して復活しています。こちらは1956年録音でエットーレ・バスティアニーニ(バリトン/フィガロ)、ジュリエッタ・シミオナート(メゾ・ソプラノ/ロジーナ)などが参加しています。こちらは指揮はエレーデながらオーケストラはフィレンツェ五月音楽祭管弦楽団&合唱団となっています。
このシリーズにはデッカに残したカラヤン/ウィーンフィルのオペラも廉価盤に投入されていました。のちにカラヤンはベルリンフィルと再録していますからその対抗としてキングはこのシリーズに投入したとしか思えません。手元にあるのは1978年に発売された「ロンドン・オペラ名盤1300シリーズ」の1組みです。この時は、第1期として、10組のオペラが発売されました。第1回が1978年12月21日発売で、そのトップにラインナップされていました。1962年の録音でデッカでのウィーンフィルとの最晩年の録音です。20世紀を代表するプリマ、レオンティン・プライスとモナコと並ぶイタリア・オペラ黄金時代のテノール、ステーファノという夢の顔合わせによる名盤です。第1幕冒頭のスカルピアのテーマが圧倒的な豪壮さで奏された後、指揮棒を振り下ろすカラヤンの唸り声が収録されているほどです。ウィーン・フィルも濃密かつ有機的なサウンドでカラヤンのその思いに敏感に反応し、プッチーニの微細なオーケストレーションの機微をこれ以上ないほどに生き生きと彩っていきます。
ショルティの「アイーダ」は1958年から始まったヴァーグナーの「ニーベルングの指環」の全曲録音をウィーンフィルとスタジオ録音するという壮大なプロジェクトを進めているときです。この時代英デッカは米RCAと提携していて、お互い持ち駒を相手にバーターして録音を融通していました。ということで、このアルバムは当時はデッカからの発売ではなくRCAから発売されています。当時、デッカにはすでにカラヤン/ウィーンフィルで1959年に「アイーダ」を録音していました。そんなことでRCAの企画盤ということで録音を進めたのでしょう。そして、これがショルティのRCAデビュー盤になりました。ただ、当時このレコードは日本ではそれほど話題にならなかったと記憶しています。ところで、ショルティは米国グラミー賞を歴代最多の31個も受賞し、ギネス記録を持っていますが、その快挙の最初を飾ったのがこのローマ歌劇場管との「アイーダ」のレコーディングでした。1962年の「Best Opera Recording」を受賞しています。
各社からこぞってオペラの廉価盤が発売されていましたが、コロムビアからは無い駒の中からオイロディスク原盤を使って無理やり発売しているイメージがありました。このマタチッチ/ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団の演奏で「魔弾の射手」が発売されています。これは1967年録音になるものでユーゴスラヴィアに生まれ、ウィーンで学んだ巨匠マタチッチは、日本の聴衆にもカリスマ的な人気を誇り、1985年に死去の後も根強い人気を持っています。歌手はいきいきと歌い、オケはやや堅いが気骨あるサポートをしています。むやみに「意味」を求める現代の演奏と違い、音楽が明快です。録音はまずまずで、広めの空間再現で、歌声がピックアップされています。
こちらもマゼールがオイロディスクに録音した「カルメン」です。1970年ステレオ録音。当時のマゼールならではの、多面的な面白さが魅力のカルメン。エーザー版を使用した最初期のレコーディングでもあり、従来の大仰さとは縁を切った軽快な進行を基調としつつ、さらに作品そのものに肉薄しようという姿勢はいかにもマゼール。随所に聴かれるシャープな閃きが、このオペラにつきまといがちな「異国情緒満点の観光オペラ」といったお手軽ムードをバッサリと切り捨て、主要登場人物たちのハードな緊張関係をあらわにしてしまった感があり、そのリアリスティックなアプローチが実に新鮮です。コレッリのドン・ホセ、妖艶な役作りと生来の可憐な声質が独特の魅力を発散するモッフォのユニークなカルメンです。偉大なヴェルディ・バリトンならではのベルカントな雄々しさが素晴らしいカプッチッリのエスカミーリョ、どこまでも清楚なドナートのミカエラと、非常にヴァラエティ豊かな配役になっています。リアルタイムで、このジャケットで発売されたときの新鮮なイメージを思い出しました。
こちらは、ヘリオドールレーベルで発売されたグラモフォンの国内盤です。1000円盤時代の産物で、この価格で歌詞対訳がついていたのが特徴です。歌手はレナート・カペッキ(フィガロ)、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(アルマヴィーヴァ伯爵)、マリア・シュターダー(伯爵夫人)などです。この『フィガロの結婚』は健康が厳しかった1960年9月にベルリンのイエス・キリスト教会で演奏・録音されています。ガンで早逝しなければカラヤンのライバルとして活躍したでしょうに残念です。
1969年にシュターツカペレ・ベルリンを起用し収録された定評あるスウィトナーのモーツァルト録音のひとつです。この「コジ・ファン・トゥッテ」は、当時としては先駆的にイタリオ語歌唱で収録されました。それまで東ドイツではイタリア語のオペラはドイツ語訳詞で歌われることが多い状況でしたが(他レーベルの録音も含め)、1960年代後半からは徐々に原語による歌唱も増えて行きました。この録音では原語が用いられ、スウィトナーにとってセッション録音で唯一のドイツ語以外のオペラとなった貴重な音源です。フィオルディリージ役のチェレスティーナ・カサピエトラは当時ヘルベルト・ケーゲル夫人であり、ベルリン国立歌劇場のプリマ・ドンナとして、以降海外公演においても活躍しました。他の歌手陣でもペーター・シュライアーやテオ・アダム他の有名歌手を配置するなど、当時の東独ETERNAの力の入れ様がうかがえます。
こちらはロンドンの録音でベーム/ウィーンフィルによる演奏です。1955年5月の録音です。1956年のモーツァルト生誕二百年に向けて制作されたデッカの4大オペラ録音のひとつ。これだけ《コジ》を指揮する人は現れないでしょう。ウィーン・レドゥーテンザールにおける録音です。このオペラに一家言持つベーム1回目の正規録音で、いにしえのウィーンの香り漂う演奏。序曲の柔らかい第1音からロココの世界に誘われます。この音源は2017年末の時点で公開から50年以上が経過し、2017年まで著作隣接権保護期間を50年と定めていた日本では、パブリックドメインとなっています。
キングの廉価盤オペラは第2シリーズは1枚1500円に値上がりしています。かなり珍しいオペラまで投入されており、明らかに中級以上のクラシックファン向けのラインナップになっていました。下のジョルダーノの「アンドレア・シェニエ」もそんな一組です。これぞヴェリズモ・オペラの醍醐味、真髄ですなあ。歌手陣は最強で、テバルディ&デル=モナコ&バスティアニーニを超えるトリオはありえないでしょう。強靭にしてかつ豊満、朗々たる美声の競演に心からしびれます。オケも雄弁でしっかりしたもの。録音も半世紀以上も前とは思えない優秀なもので、この名演がこうした高水準で残されたことは何という幸せでしょう。
不滅の名録音。主役の3人はそれぞれの役を最も得意としていた。革命の動乱によって消えた2人の若い命と恋が感動的に歌われた美しい演奏。遅めのテンポで粘りのある指揮も魅力。当時のロンドンの一連のイタオペ録音の弦の美しさは特筆。レナータ・テバルディ、マリオ・デル=モナコ・ウント・ジュリエッタ・シミオナート、フランコ・カプアーナとサンタ・チェチーリア音楽院の管弦楽団と合唱団による指揮ジャナンドレア・カヴァツェーニという布陣です。
ショルティはヴェルディの『仮面舞踏会』を2度録音しており(再録音は1982~83年)、これは最初の録音のもの。これまた錚々たるキャストによるレコーディングで、当時のデッカがオペラ録音にかけた情熱がひしひしと伝わってきます。ショルティらしい烈しいダイナミズムによってヴェルディの音楽のエッセンスを描き出そうとしています。歌手では、リカルドのベルゴンツィが、当時彼が得意とした当たり役だっただけに完璧な名唱を聴かせています。
1961年のソニックステージによる録音の一つです。演奏はニーノ・サンツォーニョ指揮、ローマ・聖チェチーリア音楽院管弦楽団&合唱団て゜、各歌手がどれだけ気持ちよく歌うかを競っているかのような録音。したがって、オペラとしての劇的な表現よりも声の魅力が強調された、楽しい「リゴレット」となっている。サザーランドの高音の素晴らしさは、ほとんど奇跡です。
〈見よ、恐ろしき炎よ〉での「ハイ・C」に驚嘆!“黄金のトランペット”と讃えられたデル・モナコならではの名唱です。美しく高貴なテバルディのレオノーラ、最高の当たり役とされたシミオナートのアズチェーナと、戦後のイタリア・オペラ界を代表する3大歌手による歴史的な名盤。このオペラは特に美しい歌の連続で、最もイタリア・オペラらしいオペラといわれます。半世紀近い前の録音ながら、今もって鮮明です。959年2月 ジュネーヴ大劇場での収録で、ジュネーヴ大劇場管弦楽団、フィレンツェ五月音楽祭合唱団、指揮はアルベルト・エレーデです。
50年代最高のスター達6人がそれぞれの最高の持ち役を演じたこれは録音史上に輝く存在です。1955年7月ステレオ録音で今後これ程トータルバランスに優れた録音はほぼ生まれ得ないでしょう。兎に角誰を誉めても片手落ちになる。指揮にもう少し魅力があれば言うこと無し。フランチェスコ・モリナーリ・プラデルリ指揮
ローマ聖チェチーリア音楽院管弦楽団&合唱団
レナータ・テバルディ(S)
ジュリエッタ・シミオナート(Ms)
ガブリエルラ・カルトゥラン(Ms)
マリオ・デル・モナコ(T)
ショルティはヴェルディの『仮面舞踏会』を2度録音しており(再録音は1982~83年)、これは最初の録音のもの。これまた錚々たるキャストによるレコーディングで、当時のデッカがオペラ録音にかけた情熱がひしひしと伝わってきます。ショルティらしい烈しいダイナミズムによってヴェルディの音楽のエッセンスを描き出そうとしています。歌手では、リカルドのベルゴンツィが、当時彼が得意とした当たり役だっただけに完璧な名唱を聴かせています。
カヴァツェアーニのポンキェルリ「ジョコンダ「」です。素晴らしいオペラで、デッカが抱える4録音すべてが甲乙付け難いような名演。これは有名なローマ事件の際、カラスの代役としてノルマを歌う程の実力を持ちながら、30前に突然引退したチェルケッティの唯一の全曲盤。役も歌もシミオナート共々最高の名演です。
ギューデン、クメント、ケート等ウィーンの名歌手を揃えた贅沢なカラヤン指揮による《こうもり》。ウィーン・フィルの演奏も特筆ものです。「ガラ・パフォーマンス」はテバルディ、ニルソン、ビヨルリンクといった豪華歌手陣がポピュラー・ソング等を披露したもので、「こうもり」とは別にロンドンとローマで録音され、LP発売時にカップリングされたのもです。
これもカラヤン/ウィーンフィルの名盤です。1970年録音の巨匠カラヤン指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団。そして歌手陣が、ボリスのニコライ・ギャウロフを筆頭に、マリナがガリーナ・ヴィジネフスカヤ、ピーメンがマルッティ・タルヴェラ等々。加えて、合唱に天使の歌声・ウィーン少年合唱団まで駆り出した豪華絢爛たる布陣です。楽譜は盟友リムスキー=コルサコフ編曲版(1908年版)ですが、最初に聞くならこちらの方が華麗で面白いでしょう。
1971年レコード・アカデミー賞を受賞した1969年録音のショルティ&ウィーン・フィルの《魔笛》はショルティにとって初のモーツァルトのオペラ全曲録音となったものです。プライの伸びやかで明るいパパゲーノ、現在においても少しも色褪せない圧倒的なテクニックを披露するドイテコムの夜の女王……。《魔笛》の録音を語る上で外せない名盤でしょう。
この歌劇《魔笛》はベームにとって2度目の録音(第1回録音はDECCAレーベルにウィーン・フィルと録音。1955年)。若きヴンダーリヒのタミーノをはじめ、フィッシャー=ディースカウのパパゲーノなど、素晴らしい布陣による《魔笛》です。ベルリン・フィルの格調高く豊かな響きが作品全体を包み込み、唯一無二の名演を確固たるものにしています。
以上が小生のオペラのコレクションでした。ただし、処分してないものもまだありますのでこれが全てではありませんけどね。
さてさて、またまた宗教音楽です。フィリップスはこうしてみると宗教音楽に力を入れていたようでヨッフムは60年第二かなり録音を残しています。まあ、グラモフォンにはリヒターがいたし、カラヤンも結構録音していますから出番はなかったのでしょう。メンゲルベルク以来の伝統のあるコンセルトヘボウはベイヌムからヨッフムに引き継がれ、1961年から1972年まで、コンセルトヘボウのマタイの指揮者となっていました。ヨッフムはバッハの4つの宗教作品をすべて録音しています。
意外ですが、エラートは早くからバッハの作品を廉価盤に投入していました。この「クリスマス・オラトリオ」は3枚組で3,000円でした。エラートの発売権がRVCに映ってから直ぐに発売されています。フリッツ・ウェルナー ~ プフォルツハイム室内Orc. & H. シュッツ合唱団をバックに、アグネス・ギーベル (Sop) / クラウディア・ヘルマン (Alt) / ヘルムート・クレブス (Ten) / ベリー・マクダニエル (Bar) 他がソロを務めていました。
こちらも上記と同じ演奏で、声楽陣はエディト・ゼーリヒ(S)、クラウディア・ヘルマン(A)、ゲオルク・イェルデン(T)、ヤーコブ・シュテンプフリ(Bs)という布陣でした。
こちらもW.ゲネンヴァイン指揮プフォルツハイム室内o./南ドイツ・マドリガルcho. H.アーウィン(s)E.リスケン(a)G.イェルデン(t)
ハイドンの天地創造はアマデオ原盤の人組でモーゲンス・ウェルディケ指揮のウィーン交響楽団の演奏です。ただ、このセットはモノラルで購入してガッカリした記憶があります。
RCAのグランプリ1000シリーズに追加されたビーチャムの名盤「メサイア」です。何といっても最高にご機嫌なのが有名な「ハレルヤコーラス」です。このレコードはグーセンスの編曲で録音されていますから派手です。のっけからシンバルが「ドシャーン!!」トランペットがイントロを盛大に盛り上げます。合唱の規模がこれまた「これでもか大合唱団」です。ホルンやトロンボーン、トランペットが咆哮し、さらに圧巻なのがコーダの「駄目押しポコ・アッチェランド」。最後の和音はシンバルのドシャーンに、ティンパニとトライアングルの乱打のおまけつき。宗教音楽につきもののカビ臭さなんて微塵もありません。大オーケストラで演奏するならこれぐらいのアレンジの方が現代ウケするのではないでしょうか。
ロンドン、デッカのミュンヒンガーの「天地創造」です。『天地創造』は描写的な要素を交えたドラマティックな流れを持った作品であり、オーケストラには多彩な表現が求められます。世界最高レヴェルの実力の持ち主として有名な存在。ここでもその表現力は見事なもので、オーケストラの自発性をゆったり活かすミュンヒンガーの統率のもと、鳥や動物達の描写も表情豊かに描かれています。ただ、この録音は今ではすっかり忘れ去られているようです、録音は1967年5月です。