ストコフスキー 3
オークションで処分したレコードたち 14
ストコフスキーの続きです。
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団、ロンドン交響楽団、ニュー・フィルハーモニア管弦楽団を演奏した作品が集められています。ラフマニノフ「前奏曲 ハ短調、作品3の第2鐘」、ショパン「マズルカ イ短調 作品17の第4」、ドヴォルザーク「スラヴ舞曲 ホ短調、作品72の第2」他が主⑥されていて、いわゆる
「運命」は2回目、「未完成」は4回目の録音。1969年9月に録音されたもので、二曲ともストコフスキー、最後の録音です。大学時代にFMで初めて聴いた演奏です。喝取苦衷で皆で演奏者宛てをしたのですが、小生はこういうユニークな演奏をする指揮者は多分ストコフスキー田だろうと推測して当てました。それほど特徴的です。
1970年6月の録音です。メシアンの゜キリストの昇天」とアイヴスの管弦楽組曲第2番を収録しています。キリストの昇天はこれ以前に1947年にニューヨークフィルとも録音していました。彼は現代物も常に積極的に取り上げていましたし、どうしたら聞き手に音楽を伝えられるだろうかと腐心した人で、ここではスコアの通りにきちんと演奏するというアプローチで極上の音楽が流れています。
本来はチャイコフスキーの大序曲「1812年」がメインなんでしょうが、小生はこのアルバムで演奏されているストラヴィンスキーの「田園曲」が一番のお気に入りでした。もともとは室内楽作品なんですが、ここではストコフスキーは弦楽合奏を主体としたアレンジにオーボエのひなびた音をメインに据えたアレンジで演奏されています。多分今でもこの作品をオーケストラ用にアレンジした演奏はこの4レコードだけでしょう。これでストラヴィンスキーの新しい魅力を発見しました。こういう作品を見つけ出してくるところがストコフスキーの魅力でもあります。
コロムビアのダイヤモンドシリーズは1000円盤の走りでしたが、色々なレーベルを抱えていて時々びっくりするような演奏を投入していました。このレコードはシリーズ29枚目に投入されています。ストコフスキーの演奏が投入されたので狂喜しました。また、名曲路線の中で初めてショスタコーヴィチの交響曲が投入されたのにも驚きました。
日本コロムビアのダイヤモンド1000シリーズはこの1100番前後からかなりレパートリーが広がっていきました。まあ、名曲集も100枚ほど出せば自然とそうなってくるでしょう。当時抱えていたオイロディスクやポーランドの「ムザ」、バルカントーン、コンサートホールのもととなった「ミュゼエクスポート」など様々な音源からソースをかき集めて発売していました。ただ、このダイヤモンド1000は文字通りの名曲集とあってコアな音源は、「パルナス1000」とか「ヒストリカル1000」とかのシリーズに組み込まれていっています。エヴェレスト音源のストコフスキー物としてはこれは3枚目のリリースでした。演奏している「ニューヨーク・スタジアム交響楽団」は契約の関係で変名を使っていますが、実態はニューヨーク・フィルでした。
ストコフスキーの1300円シリーズはヴァンガード原盤も投入されています。もともとは1967年にバッハ・ギルトというレーベルで発売されていたものです。そんなことでタイトルも「バロック・コンサート」ということになっています。チェンバロを盟主イゴール・キプニスが担当していました。コレルリ、ヴィヴァルディ、バッハの作品を演奏しています。
これもヴァンガードへの録音でした。演奏はいずれもヒズ・オーケストラということですが弦楽主体のオーケストラでした。現代音楽の紹介にも積極的だったストコフスキーの、本領発揮の名演で、フランス語による語りとセリフ入りです。ここではダリウス・ミヨー夫人の語りも特筆されます。「兵士の物語」は組曲盤も録音しています。
ニュー・フィルハーモニア管弦楽団の演奏による、`73年録音盤です。第7番はライヴも含めると、大量の録音が存在しますが、その中で最高なのが、このニューフィルのデッカ録音だと思います。要所要所のルフトパウゼ、最後までじっくりしたテンポ、期待を裏切らないホルンのかまし、どれをとっても最高です。
音の魔術師と言われたストコフスキーの面目躍如たる名演です。こういう色彩感のある曲では描写的な音楽を面白く聴かせる事にかけては右に出るもののない手腕を発揮するストコフスキーが、オーケストラ作品の醍醐味をたっぷりと味わわせてくれます。ただ、この演奏もファーストチョイスではありません。例によってストコ節全開の演奏です。歌わせ方に念の入ったわざとらしさが有り、楽譜は改ざんして無理矢理オブリガートを付けたりと、楽しませることに徹した確信犯的な演奏です。
ストコフスキーのチャイコフスキーのバレエものは十八番のようなところがありました。何度もモノラル時代から録音しています。
このチャイコフスキーの交響曲第5番も彼の代表盤でしょう。ただ、この演奏を最初に聞いてはいけません。まさに「ストコ節」と言ってよく、冗長と感じるフレーズの繰り返しは大胆にカットしています。しかし、すべての繰り返しをカットしているわけではないので、効果を考えたときに選択しているのでしょう。最終楽章は「オーケストラの少女」のような大胆なカットはありませんが、曲想に合わせてテンポは目まぐるしく変わり、その尽くが堂に入っています。
このアルバムは1970年6月22日、23日にロンドンのキングスウェイ・ホールでの録音ですが、同じプログラムでコンサートも開催されていて6月18日にロンドンのロイヤル・フェスティバルホールで収録されたライブ録音も残されています。またセッション録音のドビュッシーの「海」は、ストコフスキー唯一の録音とされていましたが、アメリカSO.とのライヴもありフルトヴェングラーほど話題にはなりませんがマニアの間ではライブの掘り起こしが多いのもストコフスキーの特徴です。
ストコフスキーがチェコ・フィルを振って入れた正規録音は、この他に自身の編曲によるバッハ作品集のみです。彼の多くの録音の中でもチェコ・フィル特有の色彩が活きた貴重な記録。しかもライヴ録音というのがこの録音の特徴です。ストコフスキーは1882年4月18日生まれなので、録音当時90歳です。エルガーのエニグマ変奏曲の中でも最近はニムロッドが単独でよくアンコールピースに使われます。
「禿山の一夜」は有名なストコフスキー自身による編曲版。痛快無比な「火の鳥」をはじめ、ストコフスキーの面目躍如のフェイズ4の録音です。ロンドン響とのデッカ盤はストコ節全開の演奏で、キャピトルへのベルリンフィルとの録音はストコフスキーらしいデフォルメは後退してきこえ、反対に演奏自体が持つ勢いとエネルギー、スピード感がよく出ています。
多分時代が良かったんでしょうなぁ。