レコード芸術
1974年7月号
3
レコ芸の裏表紙です。この月はキングはショルティの「大地の歌」を一押しでした。昨年まで、レコ芸の交響曲の月評を担当していた村田武雄氏に広告の批評を依頼しています。
それに応えて、レコ芸もこの曲の録音セッションの様子をグラビアで特集しています。
そして、下は大木正興氏のこの録音に対する批評です。氏は推薦を見送っています。声楽陣に対する評価が低いようですね。録音表はデッカですから高評価です。東芝はこの月、ここで取り上げられている国内録音の作品は広告も出稿していません。コロムビアもこの秋山和慶のヴォーン・ウィリアムズを録音しています。しかし、大木氏はしっかり月評で取り上げています。ただ、こんな録音がこの時発売されていたとは全く記憶がありません。この時代にヴォーン・ウィリアムズの国内録音があったのは驚きです。
この月のグラモフォンの広告は充実したピアニストの特集です。当時のピアニストの布陣はなかなか壮観です。
この後エッシェンバッハは指揮者に転向していきますし、ギレリスは85年に急設しましたからついにベートーヴェンのソナタ全集は完成しませんでした。ポリーニがピアニスト陣を引っ張ってはいましたが録音は単発で大きなまとまりはありませんでした。
アルヒーフは当時は高かったし、レパートリーはエラートのバロックものよりさらにマニアックなものが多かったので全く手が出ませんでした。
レコード番号を見てもわかるようにそのほとんどが輸入盤に国内ライナーを付けた形での発売であったと記憶しています。ポリドールはこの時期「クラーヴェス」レーベルも発売しています。ペーター・ルーカス・グラーフのフルートが欲しかったんでしょうかねぇ。カラヤンの「ニーベルンクの指輪」はショルティ、ペームについでの全集でしたが、必ずしもカラヤンの目論見通りには行かなかったようで、限定発売で追加プレスはしないという販売方法のようでした。
この時期、シューベルトのピアノ作品の特集があったのは意外です。個人的にシューベルトに目覚めたのは「のた゜め」以降ですからねぇ。それまではシューベルトは「鱒」と「死と乙女」しか室内楽作品は所有していませんでした。そして、業界的にもシューベルトのピアノ・ソナタのレコードはそれほど発売されていませんでした。グラモフォンがケンプの演奏で全集を出した時はそれほど注目されなかったように思います。この当時はシューベルトの作品はまだ整理されていなくでピアノソナタ第何番という表記にはなっていません。何しろ交響曲でもその番号がコロコロ変わっていましたからねぇ。ここでは時代的に絹布を筆頭に、エッシェンバッハ、ポリーニをはじめ、リサイタルにシューベルトのソナタをボツボツ取り上げはじめたというようなことが書かれています。当時の時代を感じさせる記事です。
この記事ではシューベルトの完成されたソナタは11曲ということが書かれています。これもこの時代のことで、今ではwikiで確認すると21曲にのぼることが確認されています。この時代の雰囲気を感じてみてください。
70年代初期のピアニストのシューベルト解釈について同じピアニストの高橋アキが一文を寄せています。
そして、最後は作曲家の視点で、最新のレコードと共にシューベルトの演奏についての一考察を寄せています。
続きます。