第93回市民会館名曲シリーズ
〈和欧混交Ⅲ/細川俊夫とマーラー〉
曲目/
▊ フンパーディンク:歌劇『ヘンゼルとグレーテル』前奏曲
▊ 細川俊夫:サクソフォン協奏曲
▊ アンコール 黒田節
▊ マーラー:交響曲第1番ニ長調『巨人』
指揮/八嶋恵利奈
サクソフォン/大石将紀
特別客演コンサートマスター/山本友重
また猛暑が戻ってきましたが、9月6日は予定通り名フィルの「第93回市民会館名曲シリーズ 〈和欧混交Ⅲ/細川俊夫とマーラー〉」に出かけてきました。今回は初物づくしということでかなり注目のコンサートでした。何しろ指揮の八嶋恵利奈さんは本邦デビューコンサートということです。コンクールで名を上げるというタイプではなくカペルマイスターとしての叩き上げで、ドイツでは既にかなり知られています。そういう意味では今注目の沖澤のどかさんのいい意味での対抗馬的な存在でしょう。体型としてもいい勝負です。今回はデビュー公演ですが、既に2018年11月、ズービン・メータのアシスタントとしてバイエルン放送交響楽団の日本公演に同行していました。
最近はずっと開演前にロビーコンサートが開催されています。今回は「マルティヌー:二重奏曲第1番『3つのマドリガーレ』H.313より第1, 3楽章」という珍しい曲で、出演は、山洞柚里Vn+叶澤尚子Vaによる弦楽デュオでした。
恒例の2階の正面から鑑賞です。こういう機会でないとなかなか鑑賞する機会はない曲でしょうなぁ。
こんな感じの曲です。
さて、今回のコンサートです。ステージは正面中央と左隅にハープが置かれています。変な配列だなぁと思っていましたがこれは2曲目のための布石でした。後でわかりますが、曲間で最小手数で2.3分で1オケ2オケに分けれるように仕組まれた配置でした。
コンサート最初の1曲目は「フンパーディンク /「ヘンゼルとグレーテル」前奏曲」でした。まあ、腕らなし的な演奏でしょう。バレエ公園でも出かけない限りあまり聞く機会のない曲です。指揮者の八嶋恵利奈さんは極相に反してきびきびとした式で両腕を振り回し全身を使ってオーケストラに指示を出していました。ちょうどYouTubeにシカゴ市民管弦楽団を演奏したマーラーの交響曲第6番の演奏がアップされていましたので貼り付けておきす。
前半の目玉は「細川俊夫:サクソフォン協奏曲」でしょう。これも今回日本初演の曲目で、初登場の指揮者が初物を振るということで興味津々です。そしてこれがステージの配置です。オーケストラは見事に左右に2分割されています。2台のハープは中央で向き合うような形で配置されています。
1998〜99年に作曲された同曲はサクソフォン奏者のヨハネス・エルンストによる委嘱作品で、1999年にドイツのベルリンにてエルンストの独奏、高関健 指揮によるベルリン・ドイツ交響楽団によって世界初演されています。しかし、日本ではまだ演奏されていなかつたんですなぁ。世界では既にあちこちで演奏されているようで、下はその演奏で、ぶたいじょぅにはバリトンとテナーサックスだけが置かれていますが、今回のステージでは奏者の大石将紀氏はここにアルトサックスも加えていました。まあコンテンポラリーな作品ですから一度聴いただけではなんとも評価できないのですが、こうしてYouTubeで再確認するとなかなか面白い曲だということがわかります。
アンコールは何と民謡の「黒田節」が演奏されました。最初はどんな前衛曲なのかと構えていましたが、一節吹いたところで「黒田節」とわかると皆聴き入るようにジャズ化された「黒田節」に酔いしれていました。
休憩後は、いよいよメインのマーラーです。八嶋恵利奈さんは上の6番の演奏でもわかるように、小さい体を目一杯使ってダイナミックでありながらきびきびとした所作でオーケストラに指示を出していきます。
そんなことでテニオハがきっちりしているので曲の交通整理がしっかりしていてメロディライがくっきりしているので聞きやすい演奏です。そして、第3楽章あたりは葬送行進曲のソロあたりでオーボエがかなりのボリュームで旋律を吹き始めたりして聴かせどころを強調している様も見て取れました。さすがオペラ劇場のシェフをしているだけあります。ただ、第4楽章は指示が的確が故にマーラーの精神分裂的な曲構成で冗長な部分というものも浮き彫りにしていたきらいがあります。
それでも圧倒的な迫力でのマーラーは今年の演奏会の中でも聞き物の一つであったことは確かです。
当然ながら終演後は「ブラボー」の声援があちこちから上がっていました。オーケストラ指揮者としてはムーティやヤニック・ネゼ=セガンに付いて研鑽していますからこれからの伸びしろが期待できます。最後に2022年のドイツNDR放送フィルハーモニー管弦楽団とのドヴォルザーク/交響曲第7番の演奏を貼り付けておきます。