奇跡のフォント | geezenstacの森

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奇跡のフォント

教科書が読めない子どもを知って―UDデジタル教科書体 開発物語

著者:高田裕美
出版:
 
 
 読み書き障害でも読みやすいフォントが生まれるまでのノンフィクション!  UDデジタル教科書体の完成から3年が経った頃、私は仕事の関係で、障害のある子どもの教育や就労を支援している会社を訪れました。  そこでは発達障害、学習障害、ダウン症といったさまざまな困難を抱える子どもたちを支援する学習教室を運営していたのですが、あるベテランの女性スタッフの方が、こんな話をしてくれました。 「うちの教室に、ディスレクシアの小学生の男の子がいるんです。その子は普通の本や教科書では文字がうまく読めなくて、『どうせおれには無理だから』って、いつも途中で読むのを諦めていたんです」 「それで、あるときUDデジタル教科書体のことを知って、試しに教材のフォントを変えてみたんです。そしたら教材を見た瞬間、その子が『これなら読める! おれ、バカじゃなかったんだ!』って。暗かった顔がぱあっと明るくなって、その顔を見たとき、私、思わず涙がこみあげてきてしまって。その場にいたスタッフ皆、今まで男の子が悔しい思いをしてきたのを知っていたから。みんなで男の子の周りに集まって、泣いてしまいました」 (「はじめに」より抜粋) ―足掛け8年。教育現場で大活躍しているフォントを作った書体デザイナーの情熱の物語。 多様性の時代における教育・ビジネスのヒントになる感動の一冊!---データベース---
 
 Windowsを使っている人はフォントに対する関心はMacを使っている人より低いのではないでしょうか。マックにはアプリで「font book」というものを簡単にアクセスできます。このフォントの日本語対応のものだけで、155書体登録されています。英語のものも含めると465書体で、中にはスタートレック用のSTG、バロック時代のヴィヴアルディ・フォントも含まれています。昔はフォントだけのソフトを買ってインストールしたものです。普通の文章を作成するときはこれらのフォントを駆使していますが、このアメプロではフォントは固定で、わずかに太字や斜体文字が使用できる程度なので不満はあります。もう出すことはやめましたが、年賀状などは古印体や江戸勘亭流、隷書体などを駆使して作成していました。ただほとんどが1990-2000年ごろにインストールしたフォントで最近のトレンドであるUDフォントが搭載されていないので寂しく思っているところはあります。その点Windowsは10の時代に既に標準フォントでUDフォントを採用していて、羨ましいと思った次第です。
 
 今ではマック8割、Windows2割の頻度でパソコンを使っていますが、Windowsで使うフォントの大部分はUDフォントを使用しています。ところでUDはユニヴァーサル・デザインの略なんですがUDフォントを理解している人はどれほどいるんでしょうかねぇ。
 
 ということで、この本に辿り着きました。ここではUDデジタル教科書体の誕生秘話という体裁をとっていますが、そのスタートはビットマップフォントの話からスタートしています。日本にワードプロセッサーが登場したのは1977年でしたが当時は630万もしていました。日本語はかな、カタカナ、漢字とあり、さらに漢字だけでJIs第1水準漢字だけで2,965文字、第2水準ではさらに3,390字が追加されます。要するに実用的に使う感じは6,000以上あるということです。これらは全て手書きでデザインされているのですから大したものです。ワープロ専用機はメーカーごとにこのビットマップフォントを採用していましたからフォント作成にはそれだけのニーズがあったということです。
 
 さて、この本の中心となる「UDデジタル教科書体」は一般的な教科書体とは違います。小生は文章を書くのに教科書体は使ったことがありません。何せ線が細いしはね、とかとめ、を意識した書体なので教科書ではお馴染みなのかもしれませんが読みにくかったら意味がありません。そして、個人的には読みにくいと思ったこの教科書体のおかげで、知識はあるのに本が読めなくてロービジョン(弱視)やディスレクシア(発達性読み書き障害)の子供がクラス平均で2-3人いるという実態をこの本で知りこれはゆゆしく問題だと認識した次第です。下は、この本で紹介されている一般的な教科書体とUDデジタル教科書体、さらにはゴシック体の比較の表です。多分一番この違いを身近に感じたのは「平成」から「令和」への切り替わりの時だったのではないでしょうか。令の字なんかフォントによって形状まで違っていたのですから。
 
 
 

 小生は本が大好きで、物心ついたときから息をするように活字を吸い込んでいましたた。けれど手助けがなければ呼吸ができない人もいるのです。ロービジョン(弱視)のためフォントによっては文字がはっきりしない。ディスレクシア(発達性読み書き障害)で文字が動く、重なって見えるなどの障害があります。視覚過敏で明朝体のはねやはらいが突き刺さるように感じらる人もいます。ここでは長年、フォントの世界に関わった著者がある日気づいた、取り残された人々に対する優しい視線が、このUDデジタル教科書体の登場に結びついていきます。

 

 この本の誕生秘話を文字ベースで読みたい人は下のリンクが最適です。

https://woman-type.jp/wt/feature/30821/

 

 

 ただ、この本の欠点は文字サイズが小さいということが挙げられます。小生は高校時代、図書視聴覚部というクラブで部活をしていましたが、この時代に図書館の館報というものを活版印刷で発行していたのですが、当時は8ポイントが標準の大きさでした。今考えるととても小さなサイズです。この本はが学生時代使っていたのは8ポというサイズでした。この本は四六版ですが1ページ12行ということで10ポイントで印刷されていますが、シニア世代にはちよっと小さくて読みにくいのが難点です。もちろんこの本で使われている書体はUDデジタル教科書体ですけどね。

 

 

 

 Macには標準でヒラギノしよ大河搭載されていますが、幅広い分野でMacが使われるようになるためにはこのUDデジタル書体を含めたUDフォントを搭載することが1番の訴求ポイントになると思いますがねぇ。クリエーター御用達でAIもいいけど教育市場に食い込むためには、アップル日本法人はそういう視点も持つ必要があると思います。何よりもフォントが使いやすいMacなのですから・・・