マルケヴィッチの幻想交響曲 | geezenstacの森

geezenstacの森

音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

マルケヴィッチ

幻想交響曲

 

ベルリオーズ/幻想交響曲Op.14a
1.第1楽章 14:11
2.第2楽章 06;05
3.第3楽章 15:57
4.第4楽章 04:44
5.第5楽章 11:02

 

指揮/イーゴリ・マルケヴィッチ
演奏/ラムルー管弦楽団
録音 1961/01  サル・ド・ラ・ミュテュアルテ,パリ
P:ハンス・リッター
E:ギュンター・ヘルマンス

 

タイムライフ TLI1007(原盤DGG104416)

マトリックス 138712,136011

 

 

 

 

  この一枚もタイムライフ社の「ホーム・クラシカル・コレクション」の中の一枚です。曲目を見てもどこがホーム・クラシカルなんだという曲目になっています。一作曲家一枚というこだわりがあるのかもしれませんが、モーツァルトは交響曲第38番、ベートーヴェンは第6番、ブラームスも第3番、シベリウスなんて交響曲ではなく交響詩の「タピオラ」、そこにフランクのニ短調交響曲といういかにもグラモフォンの言いなりの選曲になっています。購入した小生はこういう曲目の方がおいしいんですけどね。(^_^;)

 

 ステレオ初期の録音ですが、ここで聴かれる幻想は鋭角でシャープというイメージとは違い、オーケストラのせいもあると思いますが基本的にはノーブルで気品のある演奏となっています。しかしながら、ある意味、第1楽章からしていろいろ驚かされる演奏です。まず、かかなりテンポを揺らします。この緩急の変化はストコフスキー以上です。ドラマチックな演奏という点では抜きん出ています。まさにこの曲のタイトルに相応しいファンタジックな演奏となっています。

 

 第2楽章ものっけから弦を強調する演出をみせます。また、テンポも非常にゆっくりしたワルツで始まり次第にテンポを上げていきます。

 

第3楽章のコントラバスの扱いも非常に個性的です。でもさすがフランスのオーケストラです。ベルリンフィルのようにこてこてになってません。これは弓をもつ握り方が違うからなんでしょうね。タイミングを書いておきましたが15分台というのは決して遅い方ではないのですが聴いた感じでは非常にスローなテンポに感じます。これもテンポを揺らしているからなんですが、開始早々特に遅く感じます。でも、オーボエがいい味を出してます。
 

 このマルケヴィッチの解釈でちょっと不思議なのが、第4楽章の最後です。ここは二分音符がこれでもかこれでもかと連続するところで、楽譜上は最後の音もその前の音も同じ二分音符ですが、たいていの演奏では最後の音はフェルマータにして、前の音よりも長く伸ばします。ところが、マルケヴィッチは逆に最後の音を八分音符ぐらいに短く切ってしまうのです。スパッと切って余韻を残したかったのか、それとも何か他の意図があったのかはわかりませんが、意表をついています。こんなところもこの演奏の面白いところです。他の指揮者の演奏では絶対味わえません。ストコフスキーもここまでやってません。

 

 続く第5楽章もその延長上にあります。ここでも緩急自在のテンポですすみます。バステューバの音はいささか軽めですがこの響きがまた鐘の音とマッチしているのです。この鐘の音、非常にかん高く響きます。その後に続く弦のユニゾンも普段聴き慣れた音色とはいささか違います。まさに、ユニークの連続、次に何が起こるのかワクワクドキドキで聴き惚れてしまいます。最後はクライマックスに向かって突き進んでいきますが、この悠々自適のテンポはまさに快感です。この第5楽章の11分台はめちゃ遅いです。手持ちの中ではブーレーズが11分20秒で一番遅いのですがそれに次ぎます。けっして、ブーレーズのように分析的な演奏ではありませんが、この遅さで人間の生理に訴える快演はマルケヴィッチの独壇場です。