愛知県美術館
2024年度 第2期コレクション展
先に取り上げた「アブソリュート・チェアーズ展」と同時に開催されていた常設の愛知県美術館のコレクション展です。県美の名品、裏話はほぼ通常展示品でしたが、今まで細切れで展示されていたものが一つにまとまって展示されていたのに加え、はあまり見たことがないものが多く、大変興味深い内容になっていました。
展示室2 県美の名品、裏話
ここは県美の誇るピカソやクリムトなど、通常展示の外国人作家の作品群が並べられています。しかし、いつもと同じような紹介ではなく、X線で撮った塗りつぶされた絵とか、県美に来るまでの作品の経緯など(これはナチスの話が多いようです)の蘊蓄が多いのも特徴です。
ピカソ 「青い肩掛けの女」
ここでの目玉はピカソの青の時代の作品でしょう。この絵を調べた結果、2023年に絵と全然違うスケッチが発見されました。その頃はテレビでも取り上げられちょっとした騒ぎになったことを覚えています。実はピカソが活躍し始めた頃は貧乏絵描きが大量に発生して、それぞれが描いたキャンバスを安く買い取ってその上に絵を描くということがよく行われていたようです。そんなことで、下の絵がピカソ本人の描いたものかもわかっていなというのが本当のところでしょうか。ピカソの作品はどこで見ても、おれはここにいるといった自己主張が強くかんじられます。この作品も目立った色合いではないのですが、ぬめっとした生首が飛びだしているようで目立ちますなぁ。
2021年はフェルメールの「窓辺で手紙を読む女」の後ろの壁にキューピッドが描かれていたことが判明し話題になりましたが、これとはチョツト訳が違うようですな。
修復前
修復後
人生は戦いなり(黄金の騎士)
キャプション:
クリムト回顧展として開催された第18回ウィーン分離派展の出品作。分離派の会長として芸術の刷新に立ち上がり、大学講堂の装飾壁画を巡るスキャンダルでは、無理解な世論の批判の矢面に立たされていたクリムトは、世紀転換期のウィーンの新しい芸術の旗手として、この作品の題名どおり闘っていた。ただ戦闘の舞台が地上ではなく、のち隠棲したクリムトが描き出す官能美の世界が繰り広げられる楽園に設定されていることは、クリムトの心境に重大な変化が起きつつあったことを示している。論争の渦中に萎えかけた自信を奮い立たせて表明された、クリムト最後の芸術姿勢のマニフェストといえる作品である。造形的には金などの工芸的要素が大胆に導入され、絵画・彫刻などの純粋美術と応用美術との境界の撤廃が試みられており、生活全般に芸術を取り入れようとしたウィーン工房に参加したクリムトの姿勢とも重なり合っている。
絵画と共に付けられているキャプションはなかなか蘊蓄があります。
木村定三コレクション
瀬戸の加藤一族からでて、主として洋画で有名になった加藤さんの、テラコッタ(素焼き)作品の展示です。子供のような素朴さと純粋な遊びの楽しさをテラコッタという手段で示しつつ、大人の磨かれてきた美意識でキメルという作品が並んでいます。
全般的に、前回書いたアブソリュート・チェアーズ展よりもこのコレクション展のほうが面白かったですなぁ。特に面白いと思ったのが実は展示室2の「明治から昭和初期の洋画」で 明治最初の頃の洋画技術輸入初期段階の絵、有名画家のヨーロッパ渡航前の絵などがあり、黎明期の日本の洋画の邦画を観る楽しさがありました。