東海学園交響楽団OB会 特別演奏会 | geezenstacの森

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東海学園交響楽団OB会

特別演奏会

 

 

ヴァイオリン/近藤薫

指揮/角田鋼亮

演奏/東海学園交響楽団OB会を中心とした特別編成オーケストラ

 

 台風10号が逸れてくれたおかげで安心して会場に足を運ぶことができました。前回3階席の響きがとても良かったので今回も3階席での鑑賞としました。

 

前半のプログラムのオーケストラ配置

 

 中央にピアノが置かれていますが、前半のプログラムのヴィヴァルディの「四季〜夏」では角田鋼亮氏が通奏低音部をこのピアノで即興で演奏していました。この角田鋼亮しはこの東海学園の14回卒業生ということで今回このOB会の指揮を撮っています。そして、ヴァイオリンの近藤薫氏も角田氏と同じ東海学園の14回生で、現在は東京フィルのコンサートマスターを務めています。小生は長野チェンバーオーケストラ(現在はフューチャー・オーケストラ・クラシックス)のコンサートマスターの時から知っていますので今回生で聞けたのは僥倖です。ということで、ヴィヴァルディ以下の3曲は近藤薫氏のヴァイオリンソロを聴くことができました。

 

 

 ヴィヴァルディの「夏」は今年ほど曲らつけられているソネットにふさわしいと思ったことはありません。ギラギラと照りつける太陽が第1楽章から感じられました。何しろ弦楽だけで60名以上がステージに乗っている重厚な響きはその夏の重苦しさを増長させて迫ってきました。角田氏のピアノの響きは自由闊達で即興で「春」の旋律やマーラーの第五のパッセージも織り込んだ楽しいものでした。

 

 ピアソラのブエノスアイレスの四季から「冬」は南半球ですから「冬」は「夏」なんでしょうかね。もともとの楽器編成はピアソラ五重奏団のバンドネオン、ヴァイオリン、ギター、ピアノ、コントラバスですが、バンドネオンのために作曲された曲ですが、ここではヴァイオリンソロを含む弦楽合奏で演奏されました。下の音源がその弦楽合奏のものですが、実際の60名を超える合奏は迫力がありました。この曲からは角田氏が指揮台に上り指揮にあたります。

 

 

 前半の最後はカーニスの「Air」という曲です。この曲は1995年にヴァイオリニストのジョシュア・ベルのために作曲されたものです。このジョシュア・ベルは2011年からマリナーが育てた「アカデミー室内管弦楽団」の音楽監督をしています。YouTubeにはそんな彼の演奏するこの曲がアップされています。無調の作品が多いカーニスですがここではバーバーの「弦楽のためのアダージョ」のような静謐さと情熱を併せ持ったような作品になっています。小生もそうですが、初めて聴く作品でもあり、最後はソロヴァイオリンがゆったりとした上行旋律を描いて消え入るように終わりますからじっくりと曲の余韻を楽しむことができました。

 

 

 後半はメインのマーラーの「交響曲第5番」です。今回の演奏では2002年版のマーラー協会新校訂版が使われているのが特徴です。この版は2002年9月にサイモン・ラトル/ベルリンフィルの主席指揮者就任記念演奏会で演奏されています。その版で今回演奏されたということになります。

 

 

 第1楽章のテンポは早めでした。トランペットのソロから開始されますが、オーケストラのソロは誰も上手く、プロのオーケストラ顔負けの演奏でした。現役で演奏できるということはプロやセミプロも含めての演奏レベルは高いことが伺えます。角田鋼亮氏の指揮はジェスチューが大きく演奏する方は演奏しやすいでしょう。金管が活躍するのでどうもそちらに耳が行ってしまいますが、第1ヴァイオリンだけで9プルトもあるという弦の厚みは芳醇な響きをもたらしています。

 

 ただ、もともとこマーラーの作品は規模が大きくなるにつれ精神分裂的な性格が頭をもたげてきて、特に第3楽章は楽譜に忠実な演奏だったのでしょうがやや交通整理ができていないのか散漫な響きになっていたのが気にかかりました。まあ、レコードやCDで聴く演奏はそれなりの整形が行われているのでそういう側面はあまり気がつきにくいのですが、一発勝負のライブでは良くも悪くもそういう側面まで出てしまいます。そんなことでやや第3楽章は散漫だったかなと感じました。

 

 

 個人的にもこの作品を生で聴くのは初めてだったということもありますが、面白い発見もありました。上は第4楽章の冒頭のスコアです。冒頭はステージで確認すると上手のヴィオラ、チェロ、コントラバスのみのアンサンブルで開始されます。これは視覚を伴わないと確認できない発見でした。マーラーの時代はすでに第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、コントラバスという配置で演奏されていたということなんでしょうか。とにかくこの有名なアダージェットは右側から静かに開始され、やがて左に配置されたヴァイオリン群に音が広がっていきます。そして、通常は左サイドに配されるハープは今回はチェロの後ろに置かれています。これも斬新でこの演奏に花を添えていました。3階席から確認するとこの音の広がりはこの楽章の音楽の美しさはこういう音のうねりのもとに成り立っていたんだということを再認識させられました。

 

 今回の演奏ては第1楽章と第2楽章は間髪を入れずに演奏され、第3楽章浜をとって、そして第4楽章と第5楽章はまたアタッカで繋がっているように間髪を入れずに演奏されました。指揮者の角田鋼亮氏は全体を3つのパートと捉えてこういう演奏を展開したのかもしれませんが、これは非常に効果的な構成だったように思われます。まあ、オーケストラの演奏レベルが高いので70分を超える演奏を楽しく聴かせてもらいました。