レコード芸術 1973年2月号 3 | geezenstacの森

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レコード芸術

1973年2月号

3

 

 

 レコード芸術1973年2月号の推薦盤の一覧です。広告で取り上げられているものが推薦番になっているのがよく分かります。この時の交響曲の月表はまだ村田武雄氏ですが、巻頭言のなかで、前月の1月号での新譜の視聴が193枚であったことを述べています。もちろんこの数字は交響曲だけでなくあらゆるジャンルを含んだ数字ですが、その中でも交響曲は36枚あったということです。これらの数字はレコード各社の広告を見ていても納得のできるものです。1枚平均45分として200枚なら150時間ぶっ通しで聴いても6日かかる量です。つまりは、広告を賑わせても一般リスナーの耳に届くのはほんの一部でしかないでしょうなぁ。

 

 キングはショルティのマーラー交響曲第8番「千人の交響曲」をプッシュしていましたからまずは成功ですが、ビクターのロジェストヴェンスキーのシベリウスは扱いとしてはそれほど大きくありませんでした。多分マーケティングの失敗でしょうな。もう今ではすっかり忘れ去られている一枚でしょう。ビンとがずれているということでは東芝EMIは最悪でしょう。マゼールのボレロはニュー・フィルハーモニアOを振った一枚なのですが、全くこのレコードには触れていません。そしてマリナーのシンプルシンフォニーも帯広告にも取り上げられていません。カラヤンやカザルス、ブッシュというところを取り上げた広告展開で新譜を売ろうという誌面構成ではありません。これでは売れるものも売れないでしょうなぁ。まあ、ブッシュの2枚は推薦になっていますが所詮SPからの復刻のモノラルです。いわゆるGRシリーズというものです。しょぅせいもこの頃は少しはモノラル録音に許ぅみはありましたが入口はコロムビアのHRシリーズの1000円板でした。ところが東芝のGRシリーズは最初から1700円で購入意欲の湧く価格帯ではありませんでした。今でもこのGRシリーズは一枚も所有していません。この後ウエストミンスターを手に入れた東芝は廉価盤ではなくミッドプライスの1500円盤で出しましたからウェストミンスターというレーベルにも興味はなくしました。

 

 

 トップページはカラヤンのロマンティックです。この年の1月20日発売を告知していますが、まだジャケットデザインも決まっていなかったのでしょう。

 

 

 

 この年バレンボイムは当時の婦人ジャックリーヌ・デュプレと来日しています。ただし、バレンボイムは指揮者としてドヴォルザークのチェロ協奏曲を式する予定でしたがコンサートは中止になっています。デュプレの症状はかなり進んでいたのでしょうなぁ。

 

 

 GRシリーズのブッシュの告知です。

 

 そして、こちらはGRシリーズのカザルスです。

 

 

 この時代にボスコフスキーの「こうもり」が発売されていたんですなぁ。このレコードはのちに廉価盤で再発されて、小生はそちらを入手しました。

 

 

 

 そして、下はこの月のその他の新譜です。ヤノフスキがEMIにこんな録音をしていたとは知りませんでした。そして、巌本真理四重奏団やオッコ・カム/日本フィルでこの時期こういう録音が発売されていたのもこの広告を見るまで全く知りませんでした。

良いレコードがいつぱいあるのに何を売りたいか焦点が絞りきれていませんなぁ。

 

 村田氏はこの頃は廉価盤もしっかり月評で取り上げています。これらは前年の12月にまとめて発売されたものなのでしょう。RCAとテイチクのパイレコードがまとめて取り上げられています。この時の発売の中ではRCAではドラティのシベリウスの交響曲第2番を購入しています。各社の1000円盤の中でシベリウスが初めて発売されたものだったからです。その他のアルバムは1枚各1曲と他社に比べてCPが良くないのでパスしました。また、パイのシリーズについてはテープヒスを抑えるためにかなり音を加工していることが述べられていて魅力的ではあったのですが、触手は動きませんでした。

 

 

 そんなテイチクからはバロックに的を絞ったものがこの後発売されています。また、この2月からいよいよドイツ・ハルモニア・ムンディのレコードが発売になることが告知されています。

 

 

 RCAのトップページはデラー・コンソートをトップに持ってきています。確かに、レコ芸の記事の中でもこのでラー・コンソートは取れ上げられていますから良いタイミングでの打出しでしょう。ただ、推薦盤にはなっていません。

 

 

 自分の中ではこのルービンシュタインやホロヴッツは過去の人でしたから興味はありませんでした。また、RCAも「栄光の遺産」シリーズを出していましたが全く記憶に残っていません。まあ、こちらも東芝のGRシリーズを意識した1700円盤ですから興味はありませんでした。

 

 

 CBSから獲得したむオーマンディ/フィラデルフィアでしたがCBSに膨大な録音を残したコンビでしたからRCAの新譜はどうしてもそれらの焼き直しでした。新機軸といえばディスクリート方式の4chでしたがまともに普及しませんでしたから発売してもパッとしませんでした。

 

 

 RCAはレコ芸の傾向と対策をしっかりとやっているようで、1000円盤の「グランプリ1000シリーズ」をきっちり告知しています。ただ、掲載されているのは有名どころの旧譜ばかりで、1000円盤に初めて投入されたレパートリーについては考えが及ばなかったのでしょう。ドラティのシベリウスは取り上げられていません。小生はこれらの中ではトーマス・ビーチャムの「救世主(メサイヤ)」を購入ています。これだけ派手なメサイヤは現在に至るまで登場していません。

 

 

続きます。