トゥルトゥリエ
ドヴォルザーク/チェロ協奏曲
曲目/ドヴォルザーク
チェロ協奏曲ロ短調Op.104
1st Movement: Allegro 15:02
2nd Movement: Adagio Ma Non Troppo 11:15
3rd Movement: Finale (Allegro Moderato - Andante - Allegro Vivo) 12:35
チェロ/ポール・トゥルトゥリエ
指揮/マルコム・サージェント
演奏/フィルハーモニア管弦楽団
録音/1956
東芝EMI AFRC-529
マトリックスNo. A-2YEA.810、B-2YEA.811
不思議なレコードです。録音は1956年で初出時はモノラル録音しか発売されていません。それが1970年代になって急にステレオ録音で再発されています。日本盤もこの流れに乗って1972年に「セラフィム名曲1000シリーズ」で登場しています。この時はイギリス盤と同じ仕様でこれ一曲のみで発売されています。当時はすでにフルニエ/セル盤を所有していたのでこのセラフィム盤は見送りました。まあその当時はこの録音がステレオの録音とはまだ知りませんでした。当初モノラル録音と思われたものが、1971年になって英国ではSXLP 30018という番号でコンサート・クラシックシリーズの一枚として発売されたものですが、イギリスではジャケットの表面にはステレオとは全く表記されいません。わずかに裏ジャケットの右上部にステレオと表記されているだけです。先に紹介したクレンペラーのモーツァルトの40番と一緒ですな。あれもコンサート・クラシック・シリーズに投入された時初めてステレオで発売されています。まあ、イギリスでは1970年ごろまではモノラルが主流でステレオの再生装置は普及していませんでしたから、日本のように1960年台初めからステレオで発売という手段は考えられなかったのでしょう。
まあ、こんなこともあり、日本でもステレオ盤が発売されても旧録音の再発ということでほとんど無視されていました。ところで手元にあるのはフェーマス・レコードクラブから発売されたものですが、レコードのマトリックス番号を見てびっくりしました。他のレコードはこのシリーズ用に新しくカッティングマスターを作成してシリーズに合わせた原盤を作成しているのですが、この一枚はイギリスのマトリックス番号と同じです。ということはイギリスマスターを使用してプレスされているということなのでしょうかねぇ。
要するに、このレコードは初期にはステレオ盤が存在しなかったということで、1000円盤で初めて投入されたということなのでしょうか。ドヴォルザークのチェロ協奏曲に名盤は数多く存在します。その中にステレオ最初期の1956年サージェントと入れた、トルトゥリエの盤も内容的には名盤の仲間入りできるのではないでしょうか。最初聴いた時には、フルニエ/セルとの録音とレコードを掛け間違えたような錯覚を覚えたほど印象が似ています。ここではサージェントが珍しくフィルハーモニア管弦楽団を振ってサポトーしていますが、この時代のフィルハーモニアは重心の低いドイツ的な響きを醸し出していましたからそう感じたのかもしれません。ただフルニエ/セルの録音は1962年ですから初出の時代にはまだ存在していません。トルトゥリエは音の出方が甘いような印象を持たれる方も多いと思いますが、ここではしっかりと芯のある生命力溢れる音を出しています。トゥルトゥリエは1977年にプレヴィン/ロンドンso.と再録音していますが、ややテンポが遅く初回録音には遠く及ばない録音であるような気がします。それにしてもEMIの録音は年代による差があまりありません。進歩がないのか、確固たるポリシーがあるのかわかりませんが、古い録音がこうして甦っても遜色無いのは素晴らしいともいえます。
サージェント/フィルハーモニアとのこの録音、ナクソス・ミュージック・ライブラリーに登録されているのはモノラル録音の方です。そして、ワーナーのカタログにはプレヴィンとの録音は紹介されていますが、このサージェントとの録音は見当たりません。ネットに登録されているのもほぼモノラル録音です。上の音源はかなりレアなものになります。