予 知 夢
著者:東野圭吾
出版:文春文庫
深夜、16歳の少女の部屋に男が侵入し、気がついた母親が猟銃を発砲した。とりおさえられた男は、17年前に少女と結ばれる夢を見たと主張。その証拠は、男が小学四年生の時に書いた作文。果たして偶然か、妄想か…。常識ではありえない事件を、天才物理学者・湯川が解明する、人気連作ミステリー第二弾。・・・データベース・・・
ようやくガリレオシリーズにたどり着きました。リアルタイムでテレビドラマは見ていないし、シリーズの映画も見ていないので新鮮な気持ちで読むことができました。まあ、行き当たりばったりで作品を読んでいますからこれがシリーズ2作目だとは知りませんでした。ただ、連作短編の雑誌掲載ものですから読みやすいっちゃあ読みやすいです。
東野圭吾ガリレオシリーズ2作目(2000年6月単行本、2003年8月文庫本)。天才物理学者、湯川学と友人の刑事、草薙俊平を主人公とした短編5編の科学ミステリー小説第2弾ということです。もともとはオール読物に掲載された作品のようです。章立てです。
第1章 夢想る ゆめみる
第2章 霊視る みえる
第3章 騒霊ぐ さわぐ
第四章 絞殺る しめる
第4章 予知る しる
タイトルからしてちょっとオカルトチックです。ただ、このタイトル通りにドラマ化されていますから登場人物の設定こそ違いますがストーリー自体は原作通りということなのでしょう。
<第1章 夢想る>
16歳の女子高生が27歳の男にストーカーされ、彼女の寝ている2階の部屋に忍び込まれたところを母親が気づき猟銃を発砲、男は窓から逃げ車で逃走します。そして、途中ひき逃げ事故を起こし逮捕される。ところが男は信じられない供述をする。小学4年の時に作文に彼女と結婚する夢を見たというものでまだ生まれていない彼女の名前が書かれていた。何でもないストーカー事件かと思われたことが湯川の推理で予知夢に関係する全く違った事件と解明される。まあ、母親がいきなり猟銃をぶっ放すというのが異常な設定といえば設定です。まあ、その綻びを湯川がどう料理するかがこのストーリーのキモです。
<第2章 霊視る>
高円寺のマンションに一人住まいのホステスが殺害されます。犯人は彼女に言い寄っていたスポーツライターで、マンション住人の目撃証言によりすぐに逮捕され、痴情のもつれによる衝動的殺人に見えます。ここに至る目撃証言がちょっと変わっているところがこの事件のキモなんでしょう。その男の友人が留守中の男のマンションでホステスの幽霊を見たことから目撃証人に繋がっていきます。その友人はそのホステスと付き合っていたのです。表面上は痴情のもつれそのものに見えたが、幽霊への湯川の鋭い推理が根底から事件の本質を覆えします。そのきっかけがオーディオ装置のガリ音だというのですからびっくりします。といってもガリ音なんて今の人ではわからんでしょうなぁ。小生のオーディオは女っ気がない部屋ですからいまだにガリ音は出ませんけどねぇ。
<第3章 騒霊ぐ>
草薙が姉の強引な引きで姉の友達の妹の相談に乗ることになります。その妹の夫が失踪したこというのです。警察はただ失踪しただけでは動いてくれませんからねぇ。その失踪した男は健康機器メーカーのエンジニアで5日前に八王子の営業訪問先を最後に行方不明になっていました。そしてその後府中在住の一人住まいの老人宅に寄っただろうという推測が立ちましたがその老人は数日前に死亡していました。ところがその家には怪しい男女4人が居座っていて、俗にいうポルターガイスト現象が起こっていたのです。湯川がその不思議な現象を解明する。そして行方不明の男は…。地下の構造物が変化するとこういう現象が起きるのですなぁ。それにしても、草薙が調べた時にはコンクリートの材料が発見できなかったというのはちょっと解せません。
<第4章 絞殺る>
中小企業経営者の男がホテルの部屋の中で、絞殺死体で発見されます。男の会社は経営に行き詰まっていたが、前日に金を貸していた人間から多額の金が返済されることになっていることを家族や従業員に話していました。その返済の話がもつれたのか、化した人物の姿は見えません。捜査線上に妻の保険金殺人の疑いが生じるのですが妻のアリバイは完璧でした。ただ、その供述には後出しの痕跡が見え隠れします。状況からすれば密室殺人なのですが、現場を検証した湯川は男が経営する工場も検証、悲しい事件を解明していきます。
<第5章 予知る>
広告代理店に勤務する独身の女性が自宅マンションの部屋で首吊り自殺した。その部屋のカーテンが開いていて向かいのマンションに住む3人の人間がそれを見ていました。一人はその女性の不倫相手の男性、そしてその妻と男性の後輩(同じ大学ヨット部の3年後輩で同じ会社)。不倫相手の男性が自殺した女性から窓越しにお互いを見ながら携帯電話で結婚を迫られている途中での出来事だったのです。ドラマの設定としては恰好なシュチエーションです。自殺に不審な点はないのですが、男性の隣の部屋に住む10歳位の少女がやはり自殺を目撃したという。しかし自殺を見たのは2日前ということでした。予知少女出現となると草薙と湯川が動きます。そして予知の謎を解くことは自殺事件を違った事件に解明することになります。ここではパイプハンガーの仕掛けがいかにもガリレオ好みの小道具です。が、最後の少女の新しい予知の言葉がこのストーリーの本当の怖沙を予言しています。
すでにテレビドラマからは10年位上の歳月が流れています。面白かったのでどんどん読み進めたいと思います。ちょっと調べると
『探偵ガリレオ』
『予知夢』
『容疑者Xの献身』
『ガリレオの苦悩』
『聖女の救済』
『真夏の方程式』
『虚像の道化師』
『禁断の魔術』
『沈黙のパレード』
『透明な螺旋』
とあるんですなぁ。さしづめ、次は原点ともいうべき『探偵ガリレオ』でも読んでみますか。