朝比奈隆/大阪フィル 最初の「運命」 | geezenstacの森

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朝比奈隆/大阪フィル 最初の「運命」

 

 曲目/

1.ベートーベン 交響曲第5番 ハ短調Op.67

第一楽章/1st. mov.  7:01

第二楽章/2nd. mov .9:52

第三楽章/3rd. mov.  10:40

第四楽章/4th. mov.  5:10

指揮/朝比奈隆

演奏/大阪フィルハーモニー交響楽団

録音:1972年1月16日,17日  箕面市民会館

 

2.グリーグ/ピアノ協奏曲イ短調Op.16

第一楽章/1st. mov.  12:40

第二楽章/2nd. mov. 6:38

第三楽章/3rd. mov.  10:23

 

ピアノ/村上明美

指揮/山田一雄

演奏/新日本フィルハーモニー交響楽団
 

コロムビア GES-3560 原盤学研

 

 

 朝比奈隆はのちに学研から最初のベートーヴェンの交響曲全集を録音することになるのですが、そのきっかけとなる最初の録音の「運命」です。全集ではいろいろ準備をしたようですが、この前翅ュゥの一年前の単独の録音はいわば試し録りみたいなもの脱たのでしょうか。当時はまだ主流だった第1楽章の提示部の繰り返しはこの録音ではされていません。今は処分してありませんが、当時手元にあったオーマンディ/フィラデルフィアの「運命」もリピートがありませんでしたからこれが当然のように当時は思っていました。ただ、のちに購入した1968年録音の岩城宏之/NHK交響楽団の「運命」はちゃんとリピートしています。

 

 しかし、この録音はいろいろな意味で考えさせられるものがあります。やはり、欧米の一流のオーケストラに比べると格段のレベル差があるということです。1972年ごろの多分ベートーヴェンのスタンダードな解釈はこんなものだったろうと推測します。第1楽章の冒頭はブルーノ・ワルター並みのゆったりとしたテンポでの開始で、カラヤンのような突進型の解釈とは違います。たっぷりフェルマータで伸ばして魔を作ります。今では多分こんな演奏は誰もしないでしょう。

 

 また、運命の動機のような激しいティンパニの打ち込みが一番「運命」らしさを演出しています。面白いことに岩城宏之も同様なスタイルをとっています。ただね幾分カラヤンのスタイルを取り入れてはいますけどね。朝比奈隆の演奏はその点泥臭さを持っていて大阪に朝比奈ありという主張を持っているところは感じられます。ただ、なんといってもオーケストラのレベルはイマイチで特に金管はシャープさに欠け音がもたついているところが多々あります。多分この程度の演奏なら今は大学のオーケストラの方がもう少しマシな演奏をするでしょう。

 

 もう一つ言えることは音を置きにいっていることで、肝心の音楽が死んでしまっています。確かに音は鳴っているのですが、それが音楽にまで昇華されていないことが挙げられます。学研の録音チームは目の付け所はいいのですが、音のバランスはまだまだです。ティンパニの音が浮いてぼこぼこと響いていますし、金管はいいのですが、木管はやや奥に引っ込んでいます。

 

 

 さて、このアルバムはB面にタイトルのシンフォニーへのお誘いと書いてある割にはグリーグのピアノ協奏曲がカップリングされています。新日本フィルハーモニーが結成されたのが1972年ですからそれ以降の録音であることは確かなのですが、どうにも録音データが調べられませんでした。この録音は実はCD化されたことがあるのですが、あまり特徴のある演奏ではないのか誰もこの録音について取り上げている人はいません。全体に弦のセクションが薄く、金管のホルンの独奏が弱く音が安定していないところが目立ちます。日本フィルとの分裂で、発足当時は日フィルに残ったのが2/3、残りの1/3がこの新日フィルという構成でしたから、体制を整えるまでにはかなり時間を要したのではないでしょうか。記録としての意味以上には特色が感じせれませんでした。