第92回市民会館名曲シリーズ
〈和欧混交Ⅱ/望月京とベートーヴェン〉
プログラム
★望月京によるプレトーク(18:30~)
▊ ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番ニ短調 作品30*
▊ 望月京:ニライ-ベートーヴェンの交響曲第2番と第6番の間奏曲-
▊ ベートーヴェン:交響曲第2番ニ長調 作品36
ピアノ/サー・スティーヴン・ハフ
指揮/ニル・ヴェンディッティ
小川響子(名フィル コンサートマスター)
5日は名フィルの市民会館名曲シリーズのコンサートでした。最近の名曲コンサートではロビーコンサートが開催されています。今回はそれにプラスして今回は作曲家の望月京(みさと)さんのプレトークまで用意されていました。もう、入場時間から大賑わいです。
そんな彼のヴィオラとコントラバスの作品の第2、第3楽章が演奏されました。それが終わると今度は舞台で望月京さんの自作のプレトークが始まりました。
さて、今回指揮をするイタリア系トルコ人のニル・ヴェンディッティは、世界の重要なオーケストラやアンサンブルと急速に関係を築いている気鋭指揮者。近年ではパリ国立歌劇場管、ドイツ・カンマーフィル、ドレスデン・フィル、カスティーリャ・イ・レオン響、チューリッヒ・トーンハレ管、シュトゥットガルト室内管、アイルランド国立歌劇場管などに出演。トスカーナ管では2020年より2022年までの首席客演指揮者を務めた。古典派を軸としロマン派以降にもレパートリーを広げており、とりわけファジル・サイ(交響曲第5番をブレーメン・ムジークフェストで初演)、ファビアン・ワクスマン、レポ・スメラ、キャロライン・ショウの作品に注力するほか、多角的な体験を通じた新しい聴衆の獲得にも熱心に取り組む。オペラの分野は、モーツァルトの『コジ・ファン・トゥッテ』からピーター・マックスウェル=デイヴィスの『灯台』まで、優れた指揮を続けています。今回は初来日ですが、来週は広島交響楽団、そして来年は7月にオーケストラ・アンサンブル・金沢を指揮することが決まっています。
プログラム前半は,サー・スティーヴン・ハフを独奏とするのラフマニノフのピアノ協奏曲第3番です。日本ではそれほど知名度が高いとは言えませんが、イギリス・オーストラリアを代表する巨匠です。このラフマニノフに関してもすでにリットン/ダラス響と全集をリリスしていますし、大所の作曲家のめぼしい作品も録音しています。ただ、リリースの多くがハイペリオン・レーベルなので認知度は今一つでしょう。
個人的にはラフマニノフは2番よりもこの第3番の方が好みです。まあねこれは最初に接したのがポップスアーティストのフィランテとタイシャ―だったせいもあるのでしょうが第1楽章の導入からして物々しさが無くすんなりと曲の中に入っていけます。
冒頭は指揮者との呼吸がやや合わなかった部分はありましたが、たぶん途中からはハフのテンポに指揮者が合わせる形で進んでいき、なかなかスケールの大きなラフマニノフを聴くことができました。ハフの演奏は安定感があり、適度なロマンス感を漂わせながら彼の世界観を表現していました。
終焉とともに割れんばかりの拍手で何度もステージに呼び出され、アンコールも演奏されました。最初にスピーチがありましたが、場所が3階席だったのでホフマン、、、ルービンシュタイン、、、チャイコフスキー、、、という単語だけわかりました。多分想像するに、今回演奏されたピアノ協奏曲第3番はラフマニノフがホフマンに献呈しています。そのホフマンはルービンシュタインの唯一の弟子で、ホフマンがルービンシュタインの「ヘ長のメロディ」を弾いた録音が残っています。
ということで、曲はアントン・ルビンシテインの「2つのメロディー 作品3より第1番「ヘ調のメロディー」が演奏されました。
サー・スティーヴンのアルバム、に収録されている曲です。
さて、舞台転換が終わり、後半のプログラムです。最初に望月京の「ニライ-ベートーヴェンの交響曲第2番と第6番の間奏曲-」が演奏されました。この曲、マリス・ヤンソンスが2012年にミュンヘンでのベートーヴェンチクルスを開催した折に6人の作曲家に委嘱した作品の一つでプログラムの交響曲第2番と第6番の間に演奏されたものです。
今回の編成表
タイトルの「ニライ」とは沖縄の言葉で「根の国」、「根の方」といった意味を持つ言葉のようで、交響曲第2番の終楽章の2度の音程をモチーフに曲が組み立てられているようです。とはいっても現代音楽ですから不協和音の連続です。ここではマリス・ヤンソンスが初演した時の音源を張り付けておきます。まあ、聴いてみてください。
さて、プログラム最後はヴェンディッティの本領発揮のベートーヴェンの交響曲第2番です。前の曲が間奏曲という位置づけ上、作曲者とともにカーテンコールの末舞台袖に下がると、ただちにチューニングが行われ曲につながります。其れもあってか、ヴェンディッティは指揮台に上がると間髪を入れずに指揮棒を振り下ろします。以前からよくいわれていることですが、この曲は出版の関係で2番になっただけで実質的には交響曲第1番です。最近の傾向というか、ピリオド奏法の延長で早めのテンポで畳みかけるように音楽が進みます。ティンパニも高めのマレットで鋭い打音で演奏されます。しかし、音楽は生き生きとしていて、片足を上げながら踊るような指揮ぶりで音楽を進めます。小柄というせいもあるのでしょうが身振り手振りの表情は大きく見ていても楽しい指揮ぶりです。
基本的にノンヴィヴラートで音楽に透明感があります。プログラムにはわざわざコンマスの名前が記載されています。指揮者が女性ということで小川さんがこのプログラムのコンマスということかもしれませんが、まとまった響きで音楽が輝いていました。チェロでちらほら盛大にヴィヴラートを掛けている奏者がいましたが全体の響きの中では影響はありませんでした。指揮者はそのあたりはあまり意識していなかったのでしょうかねぇ。アンサンブルのまとまりはみごとで、これが最近の名フィルの実力なんでしょう。指揮者は終演後コンマスに抱きついていましたが多分これはコンマスに感謝していたのでしょう。
アンコールは用意してなかったのか、コンマスと相談して終楽章のコーダの部分のみを再演しました。次回登場まだにどれだけ進歩しているか楽しみです。
まだYouTubeには彼女の音源がありませんので最後にハフのラフマニノフを含むシャンドスの音源を貼り付けます。
こんな動画がありました。スイスのオルテン・フィルを振ったメンデルスゾーンです。2013年設立のオケですからこんなもんでしょう。名フィルとは比べ物になりません。ここではメガネを掛けていますから最近はコンタクトに変えたのでしょう。






