涙のトッカータ | geezenstacの森

geezenstacの森

音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

涙のトッカータ

 この曲は、日本では1973年に発売された「ラストタンゴ・イン・パリ/天使のセレナード」と題されたアルバムに収録されていました。しかし、「涙のトッカータ」が評判になり、「真珠採り」とカップリングされシングル盤として発売されました。そんなこともあり、追加プレスの時は帯も「ラストタンゴ・イン・パリ/涙のトッカータ」に帯も擦り直されています。本家フランスでは同じく1973年に発表された『Forever and ever』というアルバムの中に収録されていました。
 
最初の帯デザイン
 
シングルカットされたもの
 

 追加プレスで帯の差し替え

 ビデオではイントロが流れるとポール自身がピアノの前に座り、時折指揮をとりながら、この美しい旋律を奏でるシーンが有名です。さて“涙のトッカータ(元タイトル"toccata")”ですが、この曲とポール・モーリアとの出会いは1951年にさかのぼります。当時、フランク・プゥルセルの楽団のピアニストが突如抜け、その代役としてポールに白羽の矢が立ちます。プゥルセルは初見で、あるピアノ譜をポールに手渡した。それが“Toccata”でした。それから間もなく、二人の関係は“愛のシャリオ(Chariot)”として結実します(1962年)。実はこの曲、営業政策上から"J.W. Stole"と"Del Roma"の変名でリリースしたものでした。

 その後、ポール・モーリア楽団に若い有能なミュージシャンが加入します。ジェラール・ガンビュスです。こののちポール・モーリアの片腕として活躍する人物です。そして、彼との共同作業で仕上げたのがフランス盤『Forever and ever』でした。

 この時、ポール・ポールは“Toccata”の作曲者であるガストン・ローラン(Gaston Rolland)を訪ねています。何しろ原曲は1950年に測距腐れたものでした。

 自伝には以下のように記述されている。

 そのころ、彼は南仏の引退音楽家のための老人ホームに住んでいました。わたしたちは70年代初頭に、やっとわたしのところで会うことができました。その日、ガストン・ロランはわたしに言いました。《そう、それが『涙のトッカータ』の正しい演奏の仕方だ。私が望むように、正確なオーケストレーションをしなくてはいけませんな!》ガストン・ロランが私の録音したレコードを聴いたとき、彼はわたしに、わたしが不要に思えた部分を省略したことに異議を唱えました。ロランは少し怒っていました。彼は音楽仲間の一人に不満を言いました。その音楽家は彼にこう答えました。《おまえは馬鹿だよな。ポールに録音されたおまえの曲で、おまえはもうどうやって使っていいか分かりゃしないほどの著作権料が手に入るんだぜ》と。

 まあ、この曲はとりわけヒットし、その後、ポール・モーリアは『きらめきのシンフォニー』(1988年)で2度目の録音、そしてポニーキャニオンに移籍して『Now And Then』(1994年)3度目の録音を残しています。

 

ポール・モーリアの最初の録音

 

 そして、こちらはその1950年の原曲です。

 

 

 ポール・モーリア2度目の録音となる88年の演奏です。

 

 

 さらに92年のポニー・キャニオンに移籍してからの録音です。

 

 

 これとは別に自らピアノソロを披露する録音も残しています。

 

 
 こんな曲ですから外国のアーティストはあまり録音していません。唯一録音しているのはカラベリぐらいでしょうか。
 

 
 ここからは国内のスタジオ・ミュージシャンの演奏です。ちょっとゆっくり目のテンポでチェンバロを使いポール・モーリアの雰囲気を出しています。
 

 

 Grand Fantastic Stringsもスタジオ・ミュージシャンの集まりです。典型的なぶんちゃちゃリズムですがただメロディを演奏しているだけの演奏に聞こえてしまいます。

 

 
William Rose Orchestra もいかにも外国のオケのような名前ですが、ちがいます。編成の小ささをアレンジで補っています。取り上げているのはチェンバロバージョンですが、別にピアノバージョンもあります。
 

 
 同じくRainbow Rose 楽団はダンスのリズムで演奏しています。
 

 

 アーティストものでは「12人のヴァイオリニスト」がこの曲を録音しています。

 

 

 次は同じヴァイオリンものでも葉加瀬太郎による演奏です。リズムセクションのドラムスを押さえていますからまあまあ聴けます。ただ、ヴァイオリンの音色が単調でコーダの部分はオーケストラに溶け込んでしまっています。

 

 

 このほかにもネットではアマチュアのさまざまな演奏がアップされていますが、お暇なら検索して楽しんでみてください。