『レコード芸術ONLINE』クラウドファンディングは成功したのか? | geezenstacの森

geezenstacの森

音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

『レコード芸術ONLINE』クラウドファンディングは成功したのか?

 

 

 昨年7月に休刊した「レコード芸術」が、オンライン版として復活させるためにクラウドファンディング(以下、CF)をやり、この5月24日に終了しています。それによると、目標金額の1500万円を超えて、1700万円(支援者:約840人)が集まったそうですが、840人のうち一部の方は1年間の購読プランを選択していないので、実際のオンライン版の購読者は800人程度となったようです。レコード芸術が昨年休刊した時は約3000人からの復活の嘆願書が出たと記憶していますが、結果、低めの目標金額は達成していても、800人の読者しかいない雑誌は終わってると思います。漏れ聞こえてくる情報では年齢層は確認できませんが、若者の参加が少なければ先細りの様相は目に見えています。

 

 そもそもオンラインのコンテンツの組み立てが旧態依然で核となる新譜月評も雑誌時の複数批評でなく単独の執筆者の批評のみという2000年以前の方式に逆戻りです。オンラインの構成は音楽之友社のHPによると以下のようなものです。

 

◎中核となる新譜月評(有料記事)
「レコード芸術ONLINE」の中核となるクラシック音楽の録音・録画された演奏を対象とした批評です。CD・レコード/ストリーミング、国内盤/海外盤を問わず、原則として、製品として作られたものから、毎月総計約100点を編集部が選定し、ジャンル別に総勢約20名の執筆者が、「推薦」「準推薦」「無印」の3種類の基準のもと批評します(ダブル批評ではありません)。推薦盤のタイトルリストは、「今月のレコ芸推薦盤」として無料公開いたします。
◎新譜一覧表(有料記事)
「新譜月評」で取り上げたタイトルは新譜一覧表(データ資料館)にデータを蓄積し、アーカイヴ化します。
◎アーカイヴ連載(有料記事)
創刊から70余年の月刊誌『レコード芸術』が蓄積した潤沢なアーカイヴから、いま読んでも新鮮な記事を発掘、再掲載していきます。読者アンケートなどでリクエストも募る予定です。
◎ONLINEメディアならではの新連載(有料記事)
ONLINEメディアとして求められる「時代への即応性」を意識した連載をスタートさせます。読者アンケートなどの結果も加味しフレキシブルに内容を更新していく予定です。
◎多彩なテーマで毎月更新する特集(有料記事)
毎月テーマを決めた特集を組み、徐々に規模の拡充を図ります(一部の記事は無料公開)
◎レコ芸執筆陣による「講座」の実施(有料記事)
レコ芸人気執筆陣を講師とした対面による講座を実施します。また、講座はオンラインでも実況中継し、オンライン参加者も質疑応答に参加できます。後日、講座の内容は記事として公開いたします(初年度はクラファンのリターンとして開催。2年目以降、一般会員も参加可能になります)。
◎先取り最新盤レビュー(無料記事)
新譜発売日に合わせて掲載する、評論家による速報的なレビュー記事です。
◎アーティスト・インタビュー(無料記事)
注目のアーティストにインタビュー取材を行います。

 

 クラウドファンディングの最終目標は

◇最低目標金額:1,500万円
◇最終目標金額:2,000万円(ストレッチゴール)

ということでしたから目標半ばといったところでしょうか。そして、最低目標額はクリアしたが最終目標額に満たない場合は、コンテンツを新譜月評、先取り最新盤レビュー、アーティスト・インタビュー、アーカイヴ連載に限定してスタートという設計になっていましたから上記の計画は100%の履行は無理ということになります。まあ、100%クラウドファンディングの資金だけで運営するということはないのでしょうが1ヶ月の実質運営費は100万プラスαでスタートしなければなりません。この予算で執筆者への原稿料、デザイン費、撮影費、その他の雑費を賄うわけですから厳しいという状況に変わりはないでしょう。そして、1年でCFの予算は使い果たしてしまいます。2年目以降はどうなるのでしょう。月回避の収入は800人X1200円ですから最低96万円です。編集部員二人とすると人件費で飛んでいってしまいます。前途は多難です。

 

 まあ、小生は毎年新年号に付録としてついていた「レコード・イヤーブック」さえあれは十分なんですけどねぇ。これこそ、CFで資金を募り今までのように冊子形式で配布してほしいものです。